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転生スライムの勘違い努力無双~進化もレベルアップもしないけど、生命の常識くらいは軽く超越していきます~  作者: 瘴気領域


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第55話 魔神王、大地に伏す

「何あれ!? でかっ!?」


 リーフは驚愕の声を上げた。

 いよいよ魔神王を討伐しようとしたその時である。

 天幕に座していた女が突如として巨大化し、見上げるだけで首を痛めるほどの威容に変貌したからだ。


「むうッ、いくらなんでもデカすぎるッ! 一旦退けッ!」


 さすがのネイディも分が悪いと見て、退却を命じた。

 慌てて後退する一行の頭上に、嘲笑が降りかかる。


「フハハハハハハハッ! 我は魔神王! 貴様ら矮小なる種族を支配してやるべく訪れた者なり! 不敬なる下等生物どもに身の程を知らせてくれよう!」


 それは声というよりもはや轟雷。

 魔神王が一言発するだけで大気が震える。


「何が下等生物だッ! 驕るなッ、邪悪なる者よッ!」

「ライトニングストーム!!」


 ネイディの剣が業火を発し、キュティの魔杖が雷の嵐を呼ぶ。


「あたしたちも撃つよ!」

「おおーーーーっ!!」


 リーフの矢が風を切り、スモスモ族の吹き矢が雨となる。

 だが、


「クーククククク……ワハハハハハハ! なるほど、これが巨大ということかッ! 痒い痒い、何をしているのかもわからんぞッ! 所詮、貴様らは劣等種。女神の遺物がなくては我に引っかき傷のひとつも残せん矮小な雑魚どもよッ!」

「くっ、やはり魔神王には聖剣を持って挑まなければならなかったのか……ッ!」


 魔神王にはいかなる痛痒も与えられていなかった。

 あまりの戦力差に、一行の顔に絶望の色が宿り、いつも強気を崩さないネイディさえ膝をつきそうな有様である。

 ただ一人……いや、一体を除いては。


「うっひゃー、でっけー!」


 生で見る大巨人にキッポンは大興奮している。

 かつてキッポンはお台場に展示されていた某巨大ロボットの実物大の像を見に行ったことがある。そのときもたいそう感心したものだが、それでも21.7メートルだ。その倍近い巨人ともなれば、感動もひとしおである。


「クククッ、あまりの威容に恐れすら抱けなくなったか。やはり下等生物、脆い精神をしておるわ」

「あー、いや、別にそういうわけでもなくって」


 キッポンが怯えていないのは、ひとえにマザーのせいである。

 何しろマザーの体重は3000トン。その一部であったキッポンからすると、三分の一程度しかない魔神王は驚きの対象にこそなれど、恐怖の対象にはならないのだ。例えて言うなら、日本のカブトムシしか知らなかった小学生が、初めてヘラクレスオオカブトを見たときのような気分である。


「強がるなよ劣等種! 貴様など踏み潰してくれよう。斬撃の通じぬ貴様だが、平らに潰されてはどうかな?」

「あー、さすがにそれはまずいなあ」


 魔神王の足裏が、キッポンに降り下ろされる。

 キッポンは大蛇形態に変身すると、魔神王の足首に巻き付いた。


「フンッ! 余計なあがきを!」


 魔神王はキッポンを振り落とそうとするが、キッポンはそのままするする上って魔神王の顔面に到達。鼻の穴へとにゅるりと侵入した。


「ぬおおおおおっ!? やめろっ!? 何をするっ!? 頭が、痛いっ、いたっ、あが、あががががが……が……」


 魔神王は白目をむき、顔面の穴という穴から血を垂れ流し、そして地響きとともに大地に倒れ伏した。


 余談だが、魔神王がその魔力を巨大化などに使わず、普通に大魔術でもぶっ放していればキッポンはどうにでもなったのだが、今更言っても詮のないことだろう。

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