第51話 スライム、荒野に吠える
(うおおおおっ!? 電気はマズイっ!)
キッポンは即座にドリルを形成。
地面を掘って地中へ緊急避難する。
(あちちちち……。1割くらいやられちゃったなあ。バラバラにされててかえって助かったよ)
地中で合体し、被害状況を確認する。
先程の電撃攻撃によって、体の一部が焼かれていた。
いつかキュティの魔法を見たときに直感したことだが、やはりこの身体に電撃攻撃は鬼門のようだ。
(ひとまず凌げたけど、地中に大電流を流されたらイチコロだな。早く次の手を打たないと。それにしても、なんであいつは窒息させたのに無事だったんだろう?)
にゅるりと触手を地上へ伸ばし、青年の様子を窺う。
その顔にはキッポンの体の一部が張り付いたままで、鼻も口もしっかり塞いである。人間であれば、とっくに窒息しているはずだ。
(んー、ってことはもしかして人間じゃない……? って、それは今更か。人型だから人間と同じような生き物だと思ったのが間違いだったな)
キッポンは思考を修正する。
(えーっと、まず呼吸がそもそも不要な可能性。ゴーレムとかロボットだな。SFっぽい世界観じゃないし、あるとしたらゴーレムかなあ。それから頭に見えてるのはダミーで、腹とかに別の顔があるパターン。昆虫なら手足に気道がある可能性もあるなあ……)
主に前世のラノベやゲームの知識を総動員した結果、
(よしっ! 呼吸のことは忘れよう! まずは糸を無力することから始めよっと)
そう決めると、キッポンはドリルをフル稼働して地中を疾走。
木々の根を掘り起こし、次々に倒してく。
『むっ、何をしている!? まさか森ごと破壊するつもりか!?』
地上からはセンベイヤーのうろたえる声が聞こえてくるが、
(いやいや、森を破壊するつもりなんてないよ。水浸しにもしないし、毒も撒かないし、火も付けないから後で植え直せばオッケー!)
キッポンは気にせず破壊活動を継続する。
この過程で木の根っこを容赦なく引きちぎり、穴も開けまくっているのだが、キッポンは植え直せば大丈夫だろうと思っている。ちなみに前世ではサボテンを含むあらゆる観葉植物を枯らした実績を誇っていた。なんならエアプランツだって干物にする。
「おりゃおりゃおりゃおりゃおりゃーーーーっ!!」
半径数百メートルほどの木をなぎ倒し、大地を割って地上に飛び出す。
周辺に糸は張られていない。思惑通り、引っ掛けるための木がなくなったことでクリアリングが成功したのだ。
『な、なんてめちゃくちゃな……』
「まだまだまだまだーーーーっ!!」
『ッ!?』
続けてキッポンは、石や倒木をめちゃくちゃに投げつけまくる。
『こらっ! やめろっ! 糸使い相手に物量作戦はないだろっ!? 対抗するにしてももっと知恵を絞ってだな! やめっ、やめろっ! 飽和攻撃は美しくないッッ!!』
センベイヤーは糸を操りそれを受け止め、切り裂き、必死で防戦するが、体の周りにどんどん石や木の残骸が積み上がっていき――
『ぐえっ』
やがて、ぷちっと潰れた。
「勝ったどーーーー!!」
キッポンの勝利の雄叫びが、荒野と化した森の一角に響き渡った。




