第48話 スライム、某不動産情報サービスのCMキャラを連想する
「儂らが住んでいたのは、こんな荒野ではなく、ここから南にある豊かな森でした」
長老の話は続く。
「森には特別な力場がありましてな、それを使って異世界へと繋がるゲートを開けるのです。儂らはそれを使ってちょくちょくよその世界に遊びに行っておったんじゃが――」
異世界に行くときも、スモスモ族のかくれんぼ能力は大いに役立っているのだろう。だから偽陽界にも詳しいわけだ。ひょっとしたら日本にも遊びに来ていて、それを目撃した人がスモスモ族をモデルに不動産情報サービスのCMキャラクターを作ったりしたかもしれないとキッポンはふと思った。
「――しかし、一年前のこと。それに目をつけた魔神王の軍勢が攻め込んで来おりましてな。儂らは隠れるのは得意じゃが、正面切っての戦いには向きませぬ。おめおめと逃げ出して、ここに新たに村を作り、隠れ住んでおるというわけですじゃ」
なるほど、スモスモ族もまた魔神王の被害者だったというわけだ。
種族的に攻撃に向かないため、反撃のための同盟者を探していたところに現れたのがキッポンたちだった、ということなのだろうが――
「でも、それっておかしくない? あんなに隠れるのが上手いんだから、狙撃するなり毒を盛るなり、やりようはいくらでもあると思うんだけど?」
キッポンも抱いた疑問を口にしたのはリーフだった。
彼女は狩人だけあって、正面から正々堂々などという発想が毛頭ないのだ。強大な敵に対しては、毒でも罠でも何でも使うのが流儀である。
「ふぉふぉふぉ、さすがはエルフのお嬢さんじゃの。おっしゃるとおり、儂らもそういう戦いなら得手じゃ。簡単に負けるつもりもない」
灰白色の毛に埋もれたつぶらな瞳がぎらりと光る。
その眼光はもふもふ可愛いマスコットじみたものなどでは決してなく、獲物を狙う猛禽のもの。この偽陽界がどんな場所かは知らないが、ただ隠れるだけで生き抜けるほど甘い世界ではないだろう。弱肉強食の生存競争の中で戦っていけるだけの力は持っていて当然なのだ。
「じゃが、魔神王の配下に厄介な者がおってのう。儂らの隠形が通じんのじゃ」
「へえ、そんな厄介なのがいるんだ。俺でも見破れなかったのに、どうやったの?」
「魔神軍第四将と言っておったか、糸繰のセンベイヤーという者がおっての。そやつが糸の結界を張っておるのじゃ。目にも見えぬ細い糸を森中に張り巡らしておって、それに触れた者を余さず感知するのじゃ」
「なるほど、触覚センサーってわけかあ」
長老の説明を聞き、キッポンはうんうんと頷いた。
なるほど、それならいかにスモスモ族のかくれんぼでも通用しないはずだ。
「むう、聞くだに厄介だな。奇襲に対しては無類の対策と言えるだろう」
「罠もセットだろうしね」
「森ごと焼き払う……というわけにもいかないでしょうし」
ネイディ、リーフ、キュティが眉間にシワを寄せて考え込む。
少し考えたくらいで対策が思いつくのなら、スモスモ族だって苦労していないだろう。
しかし、
「うーん、それなら俺が無力化できそうかなあ。いくつかアイデアがあるけど、聞いてもらっていい?」
「えっ!?」
能天気に言うキッポンに、一同は素っ頓狂な声を上げた。




