第47話 スライム、身バレの危機をスルーされる
「村長に会わせるよ」
と連れてこられたのは村の中央、白い毛に覆われた丸い建物だった。
キッポンは白カビの生えた大福を連想したが、さすがに失礼だと思って口にはしなかった。気ままに好き放題やっているように見えるキッポンだが、これでも一応前世は日本人だったのだ。最低限の礼儀はわきまえているつもりである。あくまで自認だが。
「あんた方が陽界から来たという人間たちですか」
出迎えたのは、灰色がかった体毛に覆われたスモスモ族である。
なお、背後には道々でついてきたスモスモ族がいる。そちらは概ね緑系の色をしており、年を取ると白髪になるのは人間と変わらないようだった。
「うむッ! おそらく……ではあるがな。赤く燃える太陽がある世界だが、我々は我々の世界に名前などつけていなかったからなッ!」
「それはそうでしょうなあ。我々とて、陽界の存在を知らなければ、この世界に偽陽界などと名付けることはなかったでしょう」
「ぎようかい? 魔界じゃないの?」
疑問に思ったキッポンが口を挟んだ。
「ふぉふぉふぉ、魔神王が来た世界だから魔界ということですかの。陽界の方々はあまりご存じないないようじゃが、じつは世界というのは数え切れぬほど存在するもの。陽界の方々は、自分の知らない世界を魔界と一括りにしておるだけなのですよ」
「へえ~」
「そちらのキッポンさんも、数多ある別世界からいらしたのでしょう?」
「っ!?」
キッポンは自分が異世界人であることを言い当てられ、びっくりした。
いよいよ自分が地球から来た日本人であることを明かさなければならない時が来たのか……と覚悟をしたが、リーフもネイディもキュティもまるで関心を示していない。
(えっ、なんで!? ここは俺の正体が明らかになる衝撃の展開じゃないの!?)
なんて勝手にうろたえているが、三人とも元からキッポンをこの世の存在と思っていない。むしろ下手に藪をつついて蛇が出たらかなわないと、意図的に話を別の方向に持っていく。
「ええと、長老様。あなたたちスモスモ族は私たちの世界――陽界を含め、さまざまな世界のことをご存知のようですが、ひょっとしてそうした世界を自由に行き来することができるのでしょうか?」
「ふぉふぉふぉ、あなたは学者か魔導師でしたかの? さすがに聡い。おっしゃるとおり、儂らは世界を行き来する手段を持っておりました」
ろくろく自己紹介もしていないのに言い当てられて驚くが、おそらくモナンが声を掛ける前から監視をしていたのだろう。マスコットみたいな見た目だが、なかなか油断ならない種族だとキュティは姿勢を改める。
そして、今はそんなことよりも、
「『持っていた』ということは、今は持っていないということですか?」
「ふぉふぉふぉ、そのとおりですな。いよいよ聡い。そして、それこそが儂らスモスモ族と魔神王との確執なのです」




