第46話 スライム、希望を信じ続ける
「うわっ、こんな近くにいたのかあ。レーダーモードでもぜんぜん気づかなかった」
「おいらたちはかくれんぼが得意だからね! 本気で隠れたら誰にも見つけられないよ!」
驚くキッポンに、モナンが応える。
スモスモ族はそのふさふさの毛に魔力をまとい、あらゆる種類の光や電磁波を恣意的に屈折できる。体表に触れた空気も毛の間に閉じ込めるため無臭。音波も吸収し、足裏の毛がクッションとなるため足音もしない。完璧なステルス性能を誇る種族だった。
「それで、みんなはどこから来たの? もしかして、陽界から?」
「ようかい?」
「明るい太陽のある世界!」
どうやらキッポンたちがいた世界のことを指しているらしい。
「そうだ、妾たちはそこから来た。だが、こちらに来たのは手違いでな。帰る手段を探しているのだ」
「帰るためなら、魔神王とも戦える?」
「無論だッ! むしろ、魔神王を倒すためにこの世界に来たとも言えるッ!」
物は言い様である。
実際はただの事故だが、魔神王を倒す手段を得る過程でこの世界に来たというのは嘘ではない。
「それなら、オイラたちが魔神王と戦ってるって言ったら、味方になってくれる?」
「仔細は確かめねばならんが、スモスモ族が魔神王の敵であるなら助力できることもあろう。まずは詳しい話を聞かせてくれッ!」
「うーん、わかった。オイラじゃあんまり難しい話はできないから、村に招待するね。こっちに来て」
ぴょこぴょこと歩き始めたモナンを追いかけ、数百メートルほど進んだときだった。
「えっ!?」
一同から驚きの声が上がる。
目の前に、ふさふさの毛で覆われた家々と、そこかしこから一行に視線を向けるスモスモ族の姿が突如として現れたからだ。
「オイラたちの抜け毛を使ってね、すぐそばまで近寄らないと見えないよう村ごとかくれんぼしてるんだ」
モナンが声をかけてきたのは、そのまま進めば村が発見されてしまうからだった。敵意がありそうな相手なら、上手く誘導して村から遠ざける腹づもりだったのである。
(うーん、モナンひとりならともかく、こんな近くに村があったのにぜんぜん気が付かなかったのか。レーダーモードも過信は禁物だなあ。何か対応できる方法を工夫しないと……)
ほとんど光のない洞窟で百年間狩りをしていたキッポンは、探知能力にはかなりの自信があった。しかし、それが通じない相手が現れたことで、ちょっと真面目に対策を考え始めていた。
だが、
(ま、進化かレベルアップで探知系のスキルが得られるかもしれないけどね! 異世界の異世界なんてまたレアなところに来たっぽいし、今度こそフラグが立つよね!)
と、こんな具合に存在しない希望を未だに信じ続けてもいるのであった。




