第45話 スライム、毛玉に出会う
行き先は道のあちらかこちらか。
二択だが、悩んだところで正解はわからない。
リーフが矢を立てて、倒れた方向に向かって歩いた。
「どこまで行っても代わり映えのせん景色だな」
「キッポン、何か見えない?」
「うーん、同じような景色ばっかりだなあ。木の一本も見えないや」
キッポンは触手の一本を高く伸ばし、偵察しながら進んでいるが、変わったものは何も目に入らない。
「『蔵書庫』の情報を調べてみても、このような土地の記述は見つかりませんね。探し方が悪いのかもしれませんが……」
キッポンの背に揺られながら分厚い魔導書を開いているのはキュティだ。
特殊な魔術がかかっていて、王国で手に入る書物の情報のほとんどを納めているそうだ。容量の大きい電子書籍端末みたいだな、とキッポンは思った。
「灰色の太陽、どこまでも続く灰色の砂漠。同じ地上とは到底思えん」
「せめて虫でも植物でも見つかれば気候の見当ぐらいは付きそうなんだけど……」
「あるいは魔術的に創られた空間なのかもしれません」
「ううん、魔術で創られた世界じゃないよ」
「へえ、そういうのもわかるんだ」
「わかるっていうか、知ってる」
「物知りだね~……って」
「「「「誰っ!?」」」」
四人の会話にいつの間にかひとり紛れ込んでいた。
一行は慌てて武器を構えて辺りを見回すが、声の主はどこにも見当たらない。
「おいらはスモスモ族のモナンだよ。君たちは誰?」
再び声がするが、やはり姿は見当たらない。
それどころか、どこから声が発せられているのか、キッポンにさえわからなかった。
「妾はシネイディア・ク・コロッセ! コロッセ王国の第三王子であるッ! 他の者たちは妾の供回りであるッ!」
こういうとき、度胸が据わっているのはやはりネイディだった。
堂々たる名乗りが灰色の荒野に響き渡る。
「王子……? 王子ってことは、魔神王の子供なの?」
「否ッ! 魔神王は妾が誅すべき敵であるッ!」
「ちょっ、ネイディいきなり何言ってんの!? こいつも魔神王の手下かもしれないじゃない!? 襲ってきたらどうするの!?」
「それはそれで好都合ッ! こやつを討って、この場所について尋問すればよいッ!」
「えぇー……」
あまりにも脳筋すぎる言葉に、リーフは思わず言葉を失う。
一応、筋が通ってないこともないのがまた厄介だ。
手がかりもなしに荒野を彷徨い続けるよりかはマシかもしれない。
仕方なく、弓を持つ手に力を込める。
しかし、
「じゃあ、魔神王は君たちの敵?」
返ってきた言葉は、予想外に敵意を感じないものだった。
「敵の敵は味方……。オイラも魔神王の敵だよ。姿を見せるけど、攻撃しないでね」
そう言うと、何もなかったはずの場所に突然何かが姿を現す。
「毛玉……?」
「大毛玉……?」
「枕に良さそうですね……」
「違うよ、毛玉でも枕でもないよ。おいらはスモスモ族のモナンだよ!」
現れたのは、人の腰ほどの高さがある緑色のふさふさの大毛玉だった。




