第43話 聖剣、ゲットだぜ!
霊峰レギアの山腹。
その後は襲撃もなく、平和な道行を楽しんでいた。
標高が上がるにつれて、木々の背が低くなり、風が冷たくなっていく。
「わあ、日陰に白いのが残ってるよ! ね、ね、これって雪だよね? あたし、雪って初めて見た!」
「おお、雪だ。俺も久しぶりに見たなあ。って、リーフは寒くないの?」
「あたし? 風魔術で守ってるから大丈夫」
ネイディとキュティは外套を羽織っているが、リーフは軽装の狩人装束のままだった。体温で温められた空気を風魔法で体の周りに留めているらしい。ちなみに、弓を使うときにも魔術でアシストしていたそうだ。
「魔法って便利だなあ」
ますます魔法を覚えたい気持ちを強めるキッポンだが、この場で教えろとわがままを言うほど空気が読めないわけではない。
聖剣だの魔神だのの騒動が終わったら、正式に教えてもらおうと心に決める。
(それに、魔法を学ぶって言ったら学園編が定番だしね。戦いの最中に学校なんて通ってられないよ)
と、なぜか魔法を学ぶとなったらどこぞの学校に入るものだと思い込んでいる。
「あっ、入学費って高いのかな? スライム用の制服とかある?」
「えっ、はあ……その、小生に聞かれましても……」
「何をわけのわからん話をしているんだ。ほら、聖剣の祠が見えてきたぞ」
意味不明な質問にキュティが困惑していると、ネイディが行く手を指さした。
そこには白い万年雪の中に立つ、黒大理石作りの祠が厳かに建っている。
「聖剣の乙女の裔、ここに至れりッ! 我、いにしえの誓約に従いて、汝をもて魔神を討つことを宣するッ!」
朗々としたネイディの声が、山々に響き渡る。
すると、祠を閉ざしていた黒鉄の扉の表面に、黄金色に輝く文様が浮かび、ずずずずず……と重い音を立てて左右に開いていった。
「おおー、いかにも古代遺跡って感じでカッコいいなあ」
「すごいお宝が眠ってそうな感じ!」
「古代に造られた聖剣の安置所ですから、どちらもそのままですけれども」
キュティは思わず突っ込むが、はしゃぐキッポンとリーフは気にも留めずに祠へ入っていく。
一歩踏み入ると、陽の光のような温かい色合いの光がひとりでに灯って祠の奥を照らし、台座に白銀の刀身を突き立てる大剣が浮かび上がった。
(あれを抜いたら伝説の勇者になれそうだなあ……)
キッポンの好奇心がむくむくと湧いてくる。
しかし、どうもあれは国宝的な代物らしい。
さすがに勝手をするわけにはいかないと、ダメ元で聞いてみる。
「ねえねえ、あれ、俺が抜いてみてもいい? いや、ダメなら別にいいんだけど」
「……? かまわんぞ。さすがにくれてやるわけにはいかんが」
「マジで!? ありがとう!!」
「う、うむ。そんな礼を言われるようなことではないと思うが……」
ネイディにしてみれば「なぜその程度のことを断る必要があるのだ?」という感覚である。愛剣を友人知人に見せることなど当たり前にあるし、戦場に出れば供回りに預けることもある。台座から剣を抜く、という行為にも特別な意味を感じていない。
(へへへ、今度こそイベントの匂いだ。ひょっとして【ジョブ:勇者】に覚醒しちゃったりして。今までレベルアップがなかったのも、ジョブがなかったせいかもしれないね!)
キッポンが聖剣の柄に触手をぬるりと巻き付けた、そのときだった。
この世界で初めて聞く、機械音声的なものが鳴り響く。
【非現界存在の接触を検知しました。緊急保安措置を開始します】
次の瞬間、視界が真っ黒に塗りつぶされた。




