第41話 スライム、秘策を練る
石を掴んだ触手をびゅんびゅんと回転させて加速。
「うりゃっ!」
パァン!
空気が弾ける音とともに、上空に向けて発射。
音速を超えた石がソニックブームの白い靄をまといながら、空を駆け上っていく。
だが、石はみるみる勢いを失い、上空を舞う影にひらりとかわされた。
『ムムッ、投石で我らを落とそうというのか?』
『ハハッ、この魔神軍第七将、天雲のフェザーホークと』
『この魔神軍第八将、遠撃のスナイプフロスクに』
『『狙撃勝負を挑むなど片腹痛い!』』
キッポンの聴覚に、上空で交わされる会話が届く。
レーダーモードでは遠くの音声を拾うこともお手の物なのだ。
「やっぱり投石紐じゃ撃ち落とせないかあ」
「スリングって威力じゃなかったけど……。近間なら獲物が粉々になってんじゃないの?」
キッポンが何気なく見せた新技に、リーフがドン引きしている。
スリングの有効射程は熟練者でも精々100メートルほど。
その10倍以上の距離を、しかもほとんど真上に放ったのだから驚くのも当然である。
ガキィンッ!!
「ひえっ!?」
反撃の行方を見ていたら、鱗の傘がまたしても甲高く鳴いた。
リーフが慌てて首を引っ込める。
「次は小生にお任せいただけませんか。魔術が届かないか、やってみます。合図をしたら、傘に隙間を開けてください」
「おおっ! 魔法! 了解!!」
魔法という言葉に、キッポンの存在しない目が輝く。
せっかく異世界に来たのに、まだ魔法らしい魔法をじっくり見たことがなかったのだ。
(ドライヴァルのは魔法ってより、呪術って感じだったしなあ。領域を展開しちゃう感じの)
キッポンの中で、魔法と呪術は区別されるものらしい。
これも漫画やアニメの影響である。
キュティがぶつぶつと呪文を詠唱し、長杖の尖端に埋め込まれた宝玉がパチパチと紫電を帯びるのを興味津々で見守る。
「いきます! ライトニングバレット!!」
宝玉が閃光を放ち、紫電の光弾が天を駆け昇る。
「おおっ! カッコいい!!」
キッポンは大興奮するが、光弾は目標の半ばまでも届かず掻き消えた。
『ムムッ、今度は魔法を? まるで届いておらんではないか』
『ハハッ、この天雲のフェザークロウが支配する空を侵そうなど』
『この遠撃のスナイプフロスクの複合魔術に射程で競おうなど』
『『片腹痛い!』』
ガキィン!!
二体の魔神将は悠々と天を舞いながら狙撃を繰り返す。
盾を構成していた鱗が幾枚か剥がれ、弾け飛ぶ。
『ムムッ、まだ出力が足らんようだぞ』
『ハハッ、どうやらドライヴァルの鱗を使っているらしいぞ』
『それでは生半では通らんな。術式を練り直さねば』
空間が歪むほどのエネルギー反応が、キッポンのレーダーを震わせる。
(ありゃ、まだ威力が上がるのか。このままじゃ持ちこたえられないぞ。どうしたものかなあ……。あ、そうだ!)
キッぽんの脳裏(脳はないが)に、豆電球がぴこんと灯った。
「キュティって雷魔法が得意なの? 出力とか、細かいコントロールとかの調整ってできる?」
「は、はい、できます。……が、先ほどのが小生の全力です。これ以上は力不足で――」
「いやいや、そうじゃなくって。こういうことってできるかな?」
ごにょごにょごにょっとキッポンが作戦を告げると、キュティの目が丸くなった。
「できますが、本当にそんなことが……?」
「わかんないけど、やってみるしかないでしょ」
そうして、キッポンとキュティは反撃の準備を始めた。




