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転生スライムの勘違い努力無双~進化もレベルアップもしないけど、生命の常識くらいは軽く超越していきます~  作者: 瘴気領域


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第36話 キッポン、騎士になる

「よくぞ魔神の手先を倒し、聖剣を守ってくれた。また余の娘シネイディアの命の恩人でもある。王として、またひとりの親として感謝しよう」


 王城の1階。大宴会場がわあっという歓声で満ちる。

 歓声の中心にいるのは緑色の巨大な半球――キッポンである。


「此度の功績を称え、キッポンに外騎士爵の称号を贈る。受けてくれるか?」

「ハッ! 身に余る光栄にございます!」


 キッポンはノリノリで触手を曲げ、敬礼の真似事などしてみせる。

 前にいるのは豊かな白髭を蓄えた初老の男。

 コロッセ王国の王、イッチゲキ・デ・コロッセである。

 王は金糸銀糸をあしらった外套の裾を払い、腰から長剣を抜く。

 そして、剣の腹でキッポンの肩(だと思ったところ)をぽんぽんと二回叩き、歓声は最高潮を迎えた。


「キッポン!」「キッポン!」「キッポン!」「キッポン!」「キッポン!」「キッポン!」「キッポン!」「キッポン!」「キッポン!」「キッポン!」「キッポン!」「キッポン!」「キッポン!」


 王が剣を収め、王笏(おうしゃく)を掲げると歓声がぴたりと静まる。


「こちらこそ快く受けて下さり光栄だ。エルフの守神(もりがみ)よ、今後とも我が国と友好な関係であってくれることを願う」


 紆余曲折を経た結果、キッポンは「エルフの守り神」ということになっていた。誤解ではあるのだが、リーフはキッポンのことをうまく説明できないし、キッポンはキッポンで「異世界転生なんて信じてもらえないだろうし、丸く収まるならいいかあ」と適当なものである。


「さて、堅苦しいのはここまでじゃ。襲撃の直後で諸事万端とはいかぬが、我が国のもてなしを心ゆくまで楽しんでほしい。――皆の者も、此度は大儀であった! 存分に楽しめ!」


 再び歓声が上がり、大宴会場にテーブルが運び込まれ、それに料理、酒が並んでいく。

 本来、叙勲の儀式は謁見の間で行われるが、キッポンとドライヴァルの戦いでぼろぼろになってしまったのでこちらが会場になったのだ。


(うへへへ、俺が騎士かあ。なんか大出世しちゃったなあ。神様っていうのもこそばゆいけど、異世界だしな。神様くらいごろごろしてるんだろう)


 コロッセにおける外騎士爵とは国外の要人に贈る名誉爵位で、臣従ではなく友好の証として機能する。多分に政治的な意味合いを含むものなのだが――キッポンにそんな意図などわかるはずもなく、無邪気に喜んでいるだけだ。あとこの世界でも神様はごろごろしていない。


(ま、そんなことより料理が楽しみだな。異世界転生ときたら、やっぱり異世界グルメでしょ!)


 キッポンは用意された特別席で、次々と運ばれてくる料理に目を輝かせていた。(目はないが)

 そのテーブルの周りには、貴族や騎士たちが少し遠巻きに人垣を作っている。キッポンに興味はあれど、近づくのは怖い……簡単に言えばそういうことである。


 一方で、ネイディとリーフの周りには大勢の人が集まり、ひっきりなしに話しかけられている。ネイディはこの国の第三王子という重要人物であるし、リーフは見目麗しいエルフの乙女だ。人気になるのも当然だった。


 しかし、そんな待遇差などキッポンは気づいてすらいない。

 次から次にやってくる珍味佳肴をばくばくと味わうのに夢中になっている。土でも石でもモンスターでも何でも喰らうキッポンだが、それは進化やレベルアップのため。本当なら美味いものだけ食べていたいのだ。


 結局、その日は宴席に最後まで居残って、各テーブルに残った料理もキレイに食べ尽くした。

 皿までピカピカになっていたものだから、厨房の洗い物担当はキッポンに大変感謝したそうだが、それはまた別の話である。

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