第31話 スライム、レーダーモードをお披露目する
(いやあ、なんかヤバそうな雰囲気だったからスーパーボールモードで一気に突入したけど、ドンピシャだったなあ。ま、とりあえずレーダーモードで様子を見よう)
キッポンはぷるぷるしながら、周辺の状況を確認する。
といっても、視覚だけに頼っているわけではない。
音、匂い、大気の流れ、床の振動、人間には知覚不能な電磁波――などなどを総動員して情報を集めている。こんなことが可能なのは、スライムの細胞が未分化で、全身の細胞を感覚器として利用できるからだ。
つまり、いまのキッポンは総重量1トンの超小型探知機の塊なのだ。
キッポンの脳裏(脳はないが)には、コロッセレギア城全体の3D透視図が、あちこちで動き回る人々も含めて完全に描き出されていた。
(ふむ、逃げ出している人は使用人かな。こっちに向かっている人は侵入者を倒そうという兵士や騎士。もう一箇所兵士が集まってるところがあるけど、王様の護衛って感じかな)
と、こんな具合に状況を的確に把握する。
「おんし、何者じゃ? しゃべれるスライムなど見たことがないぞ」
「あ、ドーモ、キッポンです」
「キッポン? 妙な響きの名じゃな」
「本当の名前は違うらしいんだけど、記憶喪失なんだよね」
「フハハハハ! これは面白いことを言う! 吾輩は鋼翼のドライヴァル! 魔神軍の第二将じゃ!」
おや、案外普通にしゃべれるな。
細かいことは気にしない豪傑キャラって感じだ。
このまま戦うと周りに被害が出そうだし、話し合いで解決できるといいなあ。
「えっと、ドライヴァルさんは何をされてるんです? ぶっちゃけ、帰ってほしいんですけど」
王都での食べ歩きが楽しみだったのだ。
こんなやつが暴れていたらそれどころではなくなってしまう。
「吾輩は聖剣を貰い受けに来たのだ。それで、おんしはそれを邪魔をしに来たのか?」
オレンジ色の双眸がぎらりと光り、殺気がみなぎる。
うーん、やっぱり話し合いじゃ解決しそうにないな。
「うん、友だちの宝物らしくてね。それに、聖剣がないと魔神王ってのは倒せないんだろ?」
「ほう、そこまで知っておるか」
「まあね。たぶんあんたのお友だちの、ノミカユインってのが教えてくれたよ」
「ほほう。それで、ノミカユインはどうした?」
「捕まえて尋問しようとしたら消し炭になっちゃった」
ドライヴァルの表情が歪む。
それの意味するところは――
「フハハハハ! ノミカユインを倒したか! 愚物であったが並の者では相手にもならなかったはず! おんし、面白いぞッ!」
――愉悦。
アドレナリンがバキバキにキマっているのだろう、瞳孔が拡散し、大口を開けて笑っている。
「よかろう、おんしも黙って言いなりになるタマではあるまい。それにおんしは吾輩のお友だちの仇らしい。全力をもって、無念を晴らしてやらねばのう!」
「うわー、絶対友だちなんて思ってないでしょ」
「なあに、方便よッ!」
ドライヴァルの鉤爪が一閃し、空中を走る斬撃が、キッポンの身体を石の床ごと引き裂いた。




