第27話 強敵よ永遠に……ノミカユイン、散る
(ふっ、決まったぜ! これで「キッポンさんカッコいい!」「さすがはキッポン様!」「さすキポ!」「さすキポ!」モード突入かな。いや~、主人公ムーブしちゃったなあ)
「あれ、俺また何かやっちゃいました?」
またしても言いたかっただけのセリフと共に八頭身スタイルで振り返ると、半ば白目を剥いたリーフとネイディが泡を吹いていた。
「いっけね。毒をもらってたんだっけ」
キッポンはぷるんと半球形に戻ると、体内で素早く解毒剤を合成。リーフとネイディの口に向けてぴゅぴゅっと発射した。たかってきたノミを吸収するついでに、含まれていた毒を解析していたのだ。このへんは超雑食の悪食だけあって、無意識のうちに自動で行っている。
「う、うーん、口の中がねばねばする……」
「だが甘酸っぱくて爽やかな味だなッ! もう一杯ッ!!」
「干し果実から絞った果糖を配合してみました」
味にまで配慮した特製解毒剤により、リーフとネイディが即座に復活した。
「あっ、殺虫剤も撒いとくか。ノミ対策に」
ついでのように体内で調合した殺虫成分を含む分泌液を一帯に噴霧し、
「それで、こいつどうする?」
と、街道沿いの木に吊るした繭状の何かを指さした。
頭だけを出し、粘着液でぐるぐる巻きにしたノミカユインだ。
なお、暴れられないよう手足はしれっと捕食済みである。
「うむ、よくぞ生かして捕らえてくれた。こやつには聞かねばならないことがたくさんあるが、まずは復活した魔神と、魔神軍なるものの戦力と目的を探らねばな」
「魔神ってのは、王国に伝わってるんじゃないの?」
封印がなんだとか言っていたのを思い出したキッポンが尋ねると、ネイディがかぶりを振った。
「確かに伝わっているが、何しろ遥か昔のことだからな。妾もお伽噺レベルでしか聞いておらん。王城の書庫には史料もあるだろうが、それよりも将を名乗るこやつを尋問した方が早くて確実だろう」
と、ネイディは長剣を拾うと、先端に炎を灯した。
「ねえねえ、それって魔剣ってやつ? 超気になるんだけど」
「ああ、魔剣だ。灼熱剣プロミネンスという。後で見せてやるから今は我慢しろ」
「はーい」
キッポンを雑にあしらうネイディに、リーフは「この人、お母さんみたいだな」と心の中でツッコミを入れる。
それはともかく、燃える切っ先を突きつけられたノミカユインが意識を取り戻した。
「あちっ、あちちちちちっ! くそっ、どうなってやがるんだ!?」
「余計なことを喋るな。こちらの質問にだけ答えろ。触覚を炙るぞ」
「ひいっ、や、やめてくれっ! 話すっ! 何でも話すからっ!」
顔の前で切っ先を揺らすと、ノミカユインは情けない悲鳴を上げた。
(あまり矜持とかないタイプっぽいなあ。ま、序盤の敵キャラにはありがちか。偉そうなだけの小物キャラだ)
ネイディが尋問を始めたのをぼんやり眺めながら、キッポンは「そろそろフラグ立たないかな。スキル取得くらいはあってもいい頃合いだと思うんだけど」なんてことを考えていた。
そのときだった。
「ぐぎゃぁぁぁアアアア!! 魔神王様、お許しをぉぉぉおおお!!」
ノミカユインの身体が突然激しい炎に包まれ、あっという間に灰も残さず燃え尽きてしまったのだ。




