第24話 エルフ少女、スライムと姫騎士と旅に出る
「本当にあたしが行かなきゃいけないんですかあ……」
「お主が世話役じゃからな。キッポン様に失礼がないよう、くれぐれも気をつけるのじゃぞ」
「そんなあ……」
翌日、リーフはエルフ村を旅立つことになった。
「かたじけないッ! 王都までの道中よろしく頼むぞッ!」
「はあい……」
コロッセ王国の重鎮ネイディを、王都まで送るためである。
独立独歩の気風を持つエルフだが、只人とはそれなりの交流もある。さすがに第三王子なんていう重要人物を放置するわけにはいかなかった。
それに何より――
「いやあ、地上の旅、楽しみだなあ。王都っていいところなの?」
キッポンがそれを望んだからである。
そのせいで、リーフも同行を命じられることになってしまった。
「うむッ! もちろんよいところだぞッ! 魔物の襲撃はなく、平和で活気に満ちた場所だッ!」
「へえ、じゃあ美味しいものもたくさんあるかな?」
「もちろんだッ! 妾はお忍びで食べ歩きをするのが趣味でなッ! 中央広場にある目ぼしい屋台なら一通り嗜んでいるッ! 中でもおすすめはモコモコラムの腸詰めをぱりぱりに焼いたパンに挟んだ料理でな――」
「『繝帙ャ繝医ラ繝?げ』みたいだなあ。あ、地球の……俺のいた世界の料理なんだけど」
「焼いた犬? いやいや、王都では犬など食わぬぞ」
「やっぱり固有名詞は通じないかあ」
そして、ネイディはキッポンとやけに馴染んでいる。
只人というのはみんなこんなに適応力が高いのだろうか。世界中のあちこちで殖えているらしいのも納得できるな、と思った。
と、乗り気ではなかったリーフだが、森を出て小一時間もするといつもの調子が戻ってきた。もともと好奇心旺盛な若いエルフなのだ。街道沿いの何の変哲もない草原の景色すらも物珍しく、森にはない植物や昆虫に目を輝かせていた。
そして、初日は野営である。
エルフ村からもっとも近い人間の街はフォレストサイドだったが、そこはバッファロータウロスに滅ぼされてしまったので立ち寄っても仕方がない。
一応、ネイディには確認したのだが、「生き残った民が苦しんでいたとしても、妾ひとりでは何も出来ぬ。口惜しいが疾く王都に戻り、支援を引き連れるのが上策だろう。それに、取りに行かねばならぬものもある」と急に真面目な返事があったので目を丸くしてしまった。さすがは王族と言ったところだろうか。
そんなわけで王都への近道となる間道を進んだため、宿を取れる場所がないのだ。
狩人で野営にも慣れているリーフが率先し、日が沈み切る前に野営の準備を始めようとしていた。
「じゃ、あたしは焚き木を集めてくるから、キッポン様とネイディは休んでて」
「いや、妾も手伝おう。野営ならば軍務で慣れておる」
「へえー、意外。只人のことはあまり知らないけど、王族って偉そうにふんぞり返るの仕事だと思ってたけど」
「ははは、妾が少し変わっているのは認めよう。だが、他国はいざ知らず、コロッセ王家はそんな怠け者ではないぞ」
標準的な人間を知らないが、この姫騎士様はきっと変わり者なのだろう。
そして、そんなに嫌いじゃない、そうリーフが思ったときだった。
ずどーーーーーん!!
突如として大地が爆発した。
「なっ、何っ!?」
「敵襲かッ!?」
リーフが慌てて弓に矢をつがえ、ネイディが長剣を抜く。
「くくくく……働き者の王女様。いや、聖剣の戦乙女よ。探したぜえ」
もうもうと立ち込める土煙の向こうから、不気味な声が聞こえてきた。




