第22話 姫騎士、棺桶から現れる
「な、何アレ……」
「に、逃げた方がいいんじゃないか……?」
「キッポン様がディンの力を取り戻したのじゃ……。ご先祖様、わしらは一体どうすれば……」
「これは興味深い。ともあれ強大な力を持つのは間違いありません。上手く機嫌を取って、これからも我らが村の番犬として利用――もとい、守護神として祀っていきましょう」
朝日を浴びて、きらきらと輝く半透明の小山――キッポン(マザー)を目にしたエルフの面々の反応は様々だった。
リーフは脳が理解を拒み、シシャッダは青い顔で膝を震わせ、長老は先祖の霊に祈り、ケンジーヤはこの僥倖を活かす手段を考えた。
「こんにちは! 昨日はお祭り騒ぎでしたね!」
「……っ!?」
そこにキッポン(1トン)が現れ、四人はぎょっとした。
小さなキッポンとマザーとの間で視線が高速で往復する。
「でかくてすいませんねえ。まあ、悪さはしないんで勘弁してください。あ、土木工事とか、天候を操作したいとかあったらリクエストしてやってください。マザーのやつ……あ、あいつの名前なんですけどね、なんやかんややることなくて暇みたいなんで、適当に相手してやると喜ぶと思います」
「は、はあ……」
わけがわからない。
目の前の存在がキッポン=ディンだとすれば、あの超弩級のスライムはその親神とでも言うのだろうか。
しかし、思考が追いつく前にキッポンがさらに話しかけてくる。
「ところで俺、こちらの言葉が上手くなったと思いません?」
「へっ!? はっ、はい!」
「えへへ、よかったよかった。マザーのやつ、めちゃくちゃ賢くなったらしくって。それで、俺も言語関連だけはアップデートしてもらったんすよ。言葉が通じないってやっぱり不便じゃないですか」
「は、はあ。それは何よりです……」
言葉は確かに通じているが、何を言っているのかはさっぱりわからない。
しかし、それについて疑問を発する勇気を持つ者は、この場にはひとりもいなかった。
「それでさ、バッファロータウロスがなんか変なものを運んでたんだけど、これが何だかわかるかな? マザーのやつ、知ってるはずなのにもったいぶって教えてくれなくてさあ」
キッポンの体内からずるりと吐き出されたのは、棺桶ほどの大きさの長方形の物体――否、見た目は明らかに棺桶そのものだった。黒光りする鋼鉄製で、金銀で精緻な装飾が施され、宝石まであしらわれている。
「誰か偉い人の棺桶? なんでそんなものをバッファロータウロスが?」
リーフが首をひねった、そのときだった。
「ぷはーっ! やっと開いたぞ! 副騎士団長め、妾をこんなところに閉じ込めおって……。妾も最後まで戦うと言うたのに……。……はっ!? 貴様らは何者だッ!?」
棺桶の蓋が跳ね上がり、金髪も豊かな女騎士が姿を現した。




