第17話 スライム、防衛準備を整える
(さすがにあの数は正面からじゃ防ぎきれそうにないなあ。あれこれ準備しなくっちゃ。タワーディフェンスみたいでわくわくしてきたぞ!)
キッポンは目玉への変身を解くと、また細長い体になってずるりと木の根元まで降りた。
そこには真っ青な顔でぶるぶると震えているエルフたちが立っている。
(みんなミノタウロスの群れに怯えているんだな。大丈夫、俺が守ってあげるから!)
キッポンは人間の上半身を形作ると、爽やかな笑顔とともに親指を立てた。
まだあまり難しいことは話せないから、「大丈夫、任せておけ」という気持ちをジェスチャーで示したのだ。
エルフたちはなんかびくっとしていたが、たぶん武者震いだろう。
それから即座に作戦準備に移る。
目測では、明日の朝にもミノタウロスの群れが村を襲うだろう。
それまでに迎撃の準備を済ませなければいけないのだ。
時間に余裕がない。
手始めに、村を囲んでいる塀を強化する。
体内で合成した瞬間接着剤的な粘液を塀に吐きかけ、ガチガチに固めていく。
ゴブリンから吸収した大量のカルシウムも活用し、コンクリートよりも頑強に仕上げることが出来た。
作業中、エルフたちがキャーキャーと叫び声を上げていたが、「こんな程度で防ぎ切れるのか」と不安なためだろう。もっと頑強な防衛体制を整えなければ。
(全力で体当りされたらさすがに壊されちゃいそうだもんな。突進力を弱める工夫をしなくっちゃ)
黒板の図解によれば、ミノタウロスの体重は半トン以上はあるらしい。まだ文字は読めなかったが、エルフ10人の絵と並べて書いてあったので理解しやすかった。
キッポンは身体を枝分かれさせ、無数の触手を形成。先端をドリル状にして、金属成分を集めて硬化させる。その見た目は、まるで無数の頭を持つ異形の大蛇だった。
(よしっ、掘りまくるぞ!)
そのドリルでミノタウロスの襲撃が予想される側の壁の外を一気に掘削。木々をなぎ倒しながら、ふかふかに耕していく。
表面を一通り耕し終えたら、今度はドリルを一本にまとめ、地下深くの水脈まで一気に掘り抜く。身体をホース状に変形させ、地下水を組み上げて大量の水を撒き散らした。
泥沼を作り、突進の足を止めるための罠にしたのだ。
(よーし、この調子でじゃんじゃんいくぞ。うふふ、サンドボックスゲームみたいで楽しいなあ)
と、キッポンがうきうき気分で次々と防衛体勢を整えていく一方、
「も、森が一瞬で沼に変わっちゃった……」
「村を守る壁も白い粘液で覆われてしまったぞ……」
「あ、あの邪神はこの世を地獄に作り変えようとしておるのか……」
リーフたちは、慣れ親しんだ景色が瞬く間に姿を変えていく様子を、ガタガタと震えながら見つめることしか出来なかった。




