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絶対に進化できないスライム転生  作者: 瘴気領域


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107/170

第107話 ハンニンヲ オシエロォォォオオオ!!

 ウミダマ様――それは強大なアンデッドである。

 コスタベイの港は湾内にあり常は穏やかだが、新月の晩だけは違う。

 岬の周辺から強烈な引き潮が発生し、数々の命を飲み込んできた。

 その数多の怨念の結晶がウミダマ様なのだ。


 ウミダマ様は新月のたびに海から這い出し、生ける者の命を喰らってきた。

 漁民たちは海に生きるための代償と、恐れながらも受け入れていた。


 そこに旅の聖女が訪れる。

 聖女は手ずから石祠を作り、石像を納めて鎮魂の儀式をおこなった。

 これによりウミダマ様の怪異はおさまり、伝説と自然現象としての引き潮のみを残して封印されたのだ。


 だが。


 ――コノウラミ ハラサデオクベキカ……


 キッポンの狼藉が、この封印を解いてしまった。


 ――ユルセン ゼッタイニ ユルセン……


 石像はウミダマ様の依代であった。

 首が取れるくらいならまあギリ許す。

 というか長年の風化で脆くなってたし、何度か首が落ちて人間に直してもらったこともある。幾年月にもわたった封印は、ウミダマ様の怨念をも風化させ、わりと丸くなっていたのだ。


 しかし。


 ――ナンナンジャ! コノカラダハァァァアアアアア!!


 数百年ぶりに目覚めてみれば、依代がとんでもない異形に変化している。

 なんかこう、言葉に表すことも難しいおぞましさである。


 ゆえに。


 ――ハンニンハ ゼッタイ ブチコロスゥゥゥウウウ!!


 依代を動かし、街に向かったのだ。

 そんな異形が大怨霊を宿してやってきたものだから、街の人々は、


「ひいいいいっ!? なんか来たぁぁぁあああ!?」

「新種のモンスターか!? 逃げろっ、逃げろぉぉぉおおお!」

「ま、まさかウミダマ様!? あんなおぞましい姿だったとは……」


 ――チガァァァァアアアアアアウ!!


「「「ひいっ」」」


 阿鼻叫喚である。

 街を守るべき衛兵も、魔物相手ならば蛮勇を奮う冒険者たちも、その姿を見るなり悲鳴を上げて一目散に逃げていく。

 おかげで人的被害が発生していないのは不幸中の幸いか。


 否。


「うわーん! うわーん! おかあさーん!」


 一人の女児が路上に取り残されていた。

 その泣き声の理由は擦りむいた膝か、母からはぐれた不安か、あるいは迫りくる異形の恐怖か。


 ――ハンニンヲ オシエロォォォオオオ!!


 異形の指が、女児の頭に伸びようとした。

 そのときである。


「待てぇぇぇええええい!」


 緑の触手が女児の身体をさっとさらった。

 そして、現れたのは半透明の緑色不定形。

 すなわち――


「悪霊めっ! このキッポン様が来たからにはもう思い通りにはさせないぞ!」

「ヒイッ!? すらいむガ シャベッタ!?」


 唐突に現れたしゃべる巨大スライム(人面付き)に、ウミダマ様は腰を抜かした。

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