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ココロの謎解き、ご用意します。  作者: ミラ
第三章 橋を架ける謎解き宝探し

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 謎解きでゲットした宝の地図が示す場所に向かった。

 行き先は瀬戸大橋が真横から見えるという「穴場稲荷」だ。

 青一色の空の下で、海のすぐ側、もう垂直なのではないかと思うほど急な、石の階段の参道を上っていく。

 穴場というだけあって、私たちの他に人が全くいない。私の後ろから上る航ちゃんは、私がひっくり返らないかひやひやしている。

「なっちゃん、無理しなくていいから! もう帰ってもいいから!」

「ここまで来て上らないとかありえないから!」

 今、私はまた、航ちゃんに恐ろしい想いをさせているのかもしれない。

 でもごめん、航ちゃん。

 私、止まれない。この階段の先に何があるのか、知りたい。

 凪っていう静かな名前の私だけど、私は動いてないといけない体なんだ。

 だから、航ちゃんにはこれからもきっと、ずっと恐ろしい想いをさせてしまうと思う。でも私は、航ちゃんに我慢ばかりはさせたくない。

 だから、考えた。

 問題を解決する方法は、一つではないから。

「うわー! でか! 橋でかいねー!」

「すごい景色だね、これは」

 階段を上っていくと、瀬戸大橋を真横から見ることができた。にこにこ岩よりももっと巨大な橋は、小さな人間がいっぱい集まって力を合わせて作った。

 この大きな橋には、人の知恵と力が最大限詰まっている。人間が作ったものだからこそある壮大さから、漲るものをもらった気がする。

「瀬戸大橋、強くてかっこいいね!」

「うん、自分より大きなものを作るってすごいよね」

 航ちゃんは仕事で道を作る。自分より大きな道をずっと作っているから、「チームは大事だ」といつも言ってる。

 青い空と橋を横目に参道を上ると、整列していなくて、あっちこっちと好きな方向を向いているバラバラの鳥居が現れた。へんてこだけれど、面白い。どっちに行っても良いと言われているみたいだ。

 紅い鳥居に青い空、銀色の橋。

 全部が鮮やかで美しくてかっこいい。ここだ。ここが気に入った。

「航ちゃん、鳥居があるところって神様が見ている場所ってことなんだよ」

「そうなの?」

「心くんに聞いたの。心くん、神社が好きなんだって」

 航ちゃんが下から鳥居を眺めている。私は鳥居を一つくぐって、彼を振り返った。

「航ちゃん、神様、これから約束を言うから聞いていてね!」

 きょとんとした航ちゃんの顔は、ちょっと可笑しい。

 遠く遠く空の上まで届くように、大きな声で言った。

「私は今から、林間学校で熊に会わないように、神社の神様にお祈りをする!」

 私はスプレーを持つポーズをして見せる。

「神頼みだけだと頼りないから、熊スプレーも持つ!」

 それからたたたっと走って、次の鳥居をくぐる。

「次! 先生に熊鈴をつけていいか相談する! みんなで歌を歌いながら歩こうって提案もする!」

 また次の鳥居へ進む。

「なっちゃん……」

 航ちゃんが私を見る目に、涙を溜めている。

 ごめんね航ちゃん、泣かせてごめん。

 でもね、航ちゃん、私、航ちゃんが大好きだよ。

 私は最後の鳥居をくぐって、空に向かって声を上げた。届け、届いて、神様に、航ちゃんに、お母さんに。

「私は! 航ちゃんより元気に、長生きするー!」

 どうしてか、私の目からぽろっと涙がこぼれてしまったけれど、航ちゃんに向かっていっぱい笑った。

「私は! 航ちゃんを泣かさない!」

 航ちゃんの目から、ぼろぼろ大きな玉みたいな涙が落ちる。

 あーあ、泣かさないって言ったのに、泣かせた。でも航ちゃん、聞いて。

「問題を解決する方法は一つじゃないんだよ、航ちゃん! 私が色んな方法を考えるから! だから、林間学校に行かせて航ちゃん!」

 涙が次から次にこぼれてしまうのだけれど、歯を見せて元気溌剌の私を見せて笑う。航ちゃんに安心して欲しい。

「ごめん、ごめんね、なっちゃん。僕が弱くて、恥ずかしい想いをさせて」

 大きな体を震わせて泣き続ける航ちゃんの元に、私は走り下りた。

「いいよ、ちょっとだけ航ちゃんの気持ち、さっきわかったから」

 私は航ちゃんにハンカチを渡して、私の涙は腕で拭いた。

 心くんの最後の謎「どうして僕がこの場所を紹介したでしょうか」の答え、私にはわかる。航ちゃんの後ろに、青い空と、人の勇気が詰まった瀬戸大橋がある。

 あの橋は小さな私に「がんばれ、橋を渡れ」って応援してくれるからだ。

「でもね、航ちゃん。私はいっぱいいろんなところへ行きたいから、航ちゃんはずっとついてこれないよ」

 ぐずぐず鼻をならす航ちゃんは、うんうんと頷く。

「航ちゃんは仕事で道路を作ってるんでしょ? そんなの一人でできないからチームでつくるでしょ? あれと一緒だよね」

 瀬戸大橋を指さすと、航ちゃんは顔をあげて、あの美しい橋を見つめる。

「航ちゃん、いつもチームは大事って言ってるよ」

 航ちゃんのぶ厚くて硬い手を私はきゅっと握った。航ちゃんのいっぱい泣いた目と私の目が繋がる。

「学校の先生は、私を守るチームだよ! 信じようよ!」

 うっと、声を押し込めながら、航ちゃんはまた泣く。もうぼろぼろだ。でも、航ちゃんは私の手を握り返してくれる。

「そうだね、昨日、心くんにも言われたんだよ……」

「心くんが? なんて言ったの?」

「心くんはもともと学校の先生だったらしいんだ。信頼できる学校かどうかは電話がかかってくるかどうかで、よくわかるんだって」

 そういえば昨日そんな話が少し聞こえていた。

「電話、よくかかってくるよね」

「うん、僕はそんなの当たり前だと思っていたんだ。でも違うんだって。だって、僕みたいなモンペとは関わり合いたくないでしょ。だからこっちからかける時だけ対応するのが、最低限の対応なんだって」

 それはたしかにそうな気がする。

 話が通じない嫌な相手と電話なんて極力したくない。

「でもなっちゃんの学校は、担任の先生も、校長先生まで電話をかけてきてくれたって話したら心くん驚いてたよ。手厚い学校の証拠だって。信頼できる学校だと思いますって教えてくれた」

 ぱっと目の前が明るくなった気がする。心くんナイス! と胸の中で叫ぶ。

 青い海を跨ぐ、人の力を集めて作った雄大な橋を見て、航ちゃんが目を潤ませて頷く。

「学校は全力で対応してくれてる。だったら今度は僕が、勇気を出さないとね」

「うん、一緒にがんばろうよ、航ちゃん!」

 二人で手を繋いで、橋を見てからにっと笑い合った。


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