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ココロの謎解き、ご用意します。  作者: ミラ
第三章 橋を架ける謎解き宝探し

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1

 給食の塩ラーメンの匂いが残る昼休み、五年三組の教室で幼馴染の大地だいちとおしゃべりをしていた。

なぎは今週、誕生日だよな。パーティするの?」

「パーティじゃなくて、こうちゃんが岡山へ旅行に連れていってくれる! 海に近いゲストハウスってところに泊まるんだ!」

「さっすが航ちゃん、優しいな。まあ、見た目はプロレスラーみたいでちょっと怖いけど!」

「だよね~」

 ガタイが良くて、顔もいかつい航ちゃんを思い浮かべて二人で笑う。

 同じマンションの下の階に住む大地とは、保育所のころからの友だちだ。

 大地は私の家の事情を、一番よく知ってくれている。

 二人で話していると、同じクラスの梨々りりかが話しかけてきた。

「ねぇ凪、ママに聞いたんだけど。あんたのお父さんって『モンペ』なんだって?」

 梨々花といつも一緒にいる子たちが、私を見てクスクス笑う。

「えー何それ、サイテーじゃん」

「カスハラってやつだ」

 嫌なことを言われていることはわかったが、言葉の意味がわからない。

「モンペって何?」

 梨々花が得意げに答える。

「モンスターみたいな親ってこと。先生に文句ばっかり言って、先生を困らせて、先生の時間を奪う迷惑な親って意味」

「まさか航ちゃんが、そんなモンスターだって言うの?」

 胃に冷たいものが落ちると同時に、私は思い当たる。航ちゃんは家で何度も、私の担任の先生や、校長先生とまで電話で話しているのだ。

 大地が口を挟む。

「航ちゃんは凪のことを心配してるだけだろ。航ちゃんのこと知らないくせに、余計なこと言うなよ梨々花」

「保護者懇談会で『林間学校の行き先を変えろ』だなんて、常識がある親が言うことじゃないでしょ。わたし、何か変なこと言った?」

 梨々花が隣の女子に聞くと、彼女は素早く首を横に振る。

「わたしは常識的に言っているだけ、非常識で人に迷惑かけてるのはそっち。虐待とかされてない? わたしクラスメイトが事件に遭わないか心配なんだけど」

 わたしって優しいでしょと言わんばかりに、梨々花が私を指さしてふっと笑う。

 航ちゃんが先生たちと揉めているのは事実だ。

 でも、航ちゃんは非常識でもないし、私に暴力を振るうだなんてありえない。冷えていた胃の中から、ぐっと熱いものが吹き上げたように、口から声が飛び出した。

「航ちゃんのこと、バカにすんな!」

 爆発音みたいな私の声が教室に響くと、梨々花は怯んだように一歩後ずさった。

「わ……わーコワ、やっぱりモンペの子だわ。大声も服装も髪型も全部、男みたいで品がないんだから」

 梨々花が背を向けて去って行く。

 彼女のフリルの裾がおしゃれな服装と、揺れるポニーテール。

 私のスポーティな服装とベリーショートヘア。

 身だしなみの差さえ、品がないと罵られて、それ以上言い返せなかった。私は全部気に入っているのに、そう言われると少しへこむ。

 大地が隣で、梨々花の背に言った。

「おい、梨々花。スカートめくれてるぞ」

「え!」

「ウッソだよ!」

 梨々花が憤慨した顔で去っていくと、ちょっとすっきりする。大地がにっと笑った。

「気にすんな、凪。航ちゃんは良い奴だって知ってるだろ」

「うん……」

「旅行、楽しんで来いよな」

「ありがとう」

 大地のおかげで、昼休みはなんとか過ぎていった。

 午後の社会の授業が始まって、近ごろ多い熊の出没に関するニュースについて先生が話す。「熊が人里に下りてくるには事情があります」

 航ちゃんにも、人に迷惑をかけてしまうほどの事情がある。

 本当は私もわかっている。

 航ちゃんは、ちょっとだけモンペだ。


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