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ココロの謎解き、ご用意します。  作者: ミラ
第二章 想いが重い宝石謎解き

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10

 お土産を買ってから食事をして、アクアマリンに帰った。

 瑞葉さんが部屋で眠ったのを確認し、久々に何も心配事のない状態に安堵しながら、リビングへ下りる。

 夜のリビングは少し灯かりが落ちて、橙色が濃くなっている。

 真っ暗で静かな海に面したソファに座る心くんが、ローテーブルの上にチェス盤を広げていた。一人でチェスパズルをしているようだ。数手先まで読んで、キングを仕留める遊びである。

 彼の斜め向かいに座り、私は駒を勝手に一手指した。心くんが顔を上げる。

「あ、まだ考えていたのに、正解を指さないでくださいよ」

「一戦しませんか。今、休憩中でしょう?」

 心くんはにっとプライベートの顔で笑う。

「いいですよ。一戦だけ」

 駒を整えてから、互いに指していく。

 深夜のアクアマリンは静かだ。

 今日はまた新しい宿泊客が来たようだが、外出していたので見ていない。

 私たちがアクアマリンに帰る頃にはもう、海斗くんたち家族はチェックアウトした後だった。礼を言いたいと思っていたのだが、もう会えないようだ。

 ゲストハウスは、人が通り過ぎていく交差点のような場所だ。

 しかし、瑞葉さんに「可愛い」と言うたびに、私はきっと海斗くんを思い出すだろう。

 そんなことを考えながら、心くんのキングを仕留める方法も並列で考える。そして口では気になっていたことを訊く。

「三つ目の謎の答えは、人それぞれ、ということで正解ですか」

 盤面を見ながら心くんが頷く。

「『ココロの謎』の正解は、自分で決めるものです。でももし、僕が紹介した場所で何かを感じて、自分でこれを答えと呼ぼうと思うものを見つけたとしたら……」

 心くんのナイトが跳ねる。

「それを自らの正解にするためにがんばるのも、いいかもしれません」

 彼の答えは、私が掴んだ答えと相違ない。

 彼の用意する謎解きは汎用性があり、各人の感じ方を尊重したうえで、希望まで見せる。

 ココロの謎解きは本当に──すごい。

『すごい人だって思ったら、仲良くなりたくなりません?』

 彼の言葉を噛みしめながら、私は正直な感想を口にする。

「ココロの謎解きは、心くんの手のひらの上で踊らされているようで多少、癪です」

 私はミステリー作家として、読者を手のひらの上で楽しく踊らせたいほうだ。

 彼のナイトを仕留めるために、私のナイトが踊る。

「チェックメイト」

「強すぎますよ」

 心くんは負けて悔しそうに口の端を引き下げながらも、目の奥はちょっと嬉しそうだ。

 今日はこの前のように放置せず駒を片づけて、心くんの手に渡すところまできちんとやり切った。

 部屋に帰るために螺旋階段の手すりに手をかけた私は、心くんを振り返る。

「また、チェスに誘ってもいいですか」

 崩した笑顔で彼が微笑む。

「僕も誘いますね。プライベートで」

 彼に見送られ、私は階段を上り自分の部屋に入った。

 ベッドに寝転んだ私は、進みの悪かった英字のミステリー本をようやく完読することができた。

「意外と、おもしろかったです」

 本に向かって感想を述べた私は寝転んで、次の謎を探す。

「……次は心くんを、手のひらの上で踊らせたいですね」

 本職として負けていられない。私は布団を顎元まで引き上げて呟く。

「空白の一日の謎、解かせてもらいますよ」

 謎の答えが、彼に開示できるものであるように願う。このバカンス中の目標を立て、すっきりして寝がえりを打つ。

 201のほうを向いた私はやっと、穏やかに眠れた。


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