表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
彼女はファザコンをこじらせている  作者: 花摘
帝国騒乱編
96/250

魔法研究塔

 

「じゃあ、マーカス。国境沿いの話を聞かせて下さい。」

 紙とペンを用意し、話を聞く態勢をとる。


「そうですね…、俺と、一緒に行く予定の情報部隊のやつ…名前を名乗らないので、俺はクロって呼んでるんすけど…、そいつと国境沿いの村を確認しながら、西へ移動して行きました。」


「目的は、偵察と、協力者探しの為でしたっけ?」


「帝国からの密偵がいないか、クロが目を皿みたいにして探していましたけど、異常はなかった様っす。」

「そう、それは一安心ね。」


「ただ、月に数人は、旅人が通ることもあるらしくて、何かあったら知らせるようにと、騎士団直通の伝書鳥を備えて置きました。」

 旅人か…、紛れている可能性は十分にあるな。


「村人は協力的でしたので、道中はさほど困らないかと思います。帝国内の情報を、いち早く我々に伝える手筈も整えられそうっすね。」

「よかったわ、侵入予定の周辺の様子はどう?」


「国境の向こうに、帝国の宮殿が、ドーンと見えましたよ。こちら側は、所々に低い灌木が繁っているだけの荒れ地だから、夜陰に紛れるか、国境の塀にへばりついて移動するしかないっすね。」

 ふむ、どのみち侵入は、夜陰に紛れて行うことだろう。帝国に侵入してからのことを考えても、夜の方が都合が良い。


 マーカスが、ここで思い切ったように質問する。

「それにしても、あの国境の魔法って凄いですよね?どうやってあれを破るんですか?」


「マーカス…」

「いや、だって、全力で魔法ぶっ放しても、空飛んで上空を飛び越えようとしても、何やっても弾かれるんすよ?仕組みがわかるなら是非知りたいなー、って…」

  妙に熱心に聞いてくるな。


「…仕組みは正直私も解らないわ。何でずっと作動し続けるのかは、私もぜひ知りたいところね。侵入には…一回しか使えない、特別な手段を使うの。だから帰り道も、今後も二度と同じ事は出来ないわ。」


「ええ…、そうなのか〜。だから地下通路あんなに覚えろって言ったんすね。」

 まあ、それもある。


「ちなみに…どうやって通るんですか?」

 ぐいぐい来るな…。


「…な・い・しょ。」

 指を口に当て、ウインクをしたら、マーカスの顔が赤くなった。

 …あざと可愛いを狙ってみました。


 押し黙ったマーカスに、首を傾げて聞く。

「マーカスは、ああいう古代魔法とか興味があったの?」

 ちょっと意外。絶対本とか読まなそうだけど。


「…俺は、魔法で工夫して色々出来る様になるのが好きなんです。魔道具とかも集めてるんですよ。だから、正直ミレイア様の作る道具にはずっげえ興味あります。…暖房用道具はあんま使わなそうですけど。」


 へえー、マーカスがそんな趣味を持っていたとは。色々器用にこなすと言われているのは、そのせいか。


「…どんな道具を持っているの?」

 ラグの家は、私が作ったもの以外はほとんど魔道具を置いていない。ランプくらいかな。


「小さな竜巻を作るやつとか、水蒸気を出すやつとか、風呂で泳ぐ人形とか!すごいでしょう!」


 …水蒸気を出す…加湿器?以外はあまり実用性はなさそうだけど、玩具が好きなのかな。


「面白いものがあるのね。そういう感じのが好きなの?」

「魔法研究塔にいる友人がいて、時々作ったのを貰えるんです。」

 良いでしょう、という顔をするマーカス。

 …なるほど、王宮内の機関が開発するなら、ミニチュアの試作品なのかも知れないな。それならば納得だ。


「研究塔ですか、是非言ってみたい所ですね。それこそ、国境の結界の研究者とかも居るんじゃないですか?」

「…どうだったかな?古代魔法の研究は、教会がいい顔しないらしくて、やってる人は少ないみたいっすよ。」

 まあそうか…、しかし魔道具研究者には、是非会ってみたい。ラグ用の魔道具をつくヒントがほしいのだ。

 ラグは、魔法の属性の偏りが強すぎて、調整しても上手くいかないのだ。多くの人が使える魔道具を研究するのは、参考に出来るるかも。


 マーカスの友達なら丁度いい。

「今度その友人の方を紹介していただけませんか?」

「え、いいの…?」


 ん?なんで驚くの?


「以前からミレイア様を紹介して欲しいって、研究塔の奴等が陛下に直訴しているらしいんだケド、団長が全部はねつけているって聞いていますよ…?」


 え…?



―――――

――


「ラグ!どうして私は、研究塔の人と会っちゃ駄目なの?」

「……。」

 部屋に戻るなり、ラグに尋ねたら、ラグはマーカスを無言で睨む。


「え、俺を睨まないでくださいよ!言っちゃ駄目だったんすか?」

 マーカスは訳が分からず涙目だ。私も訳わからん。


「ええと…、ラグがだめっていう理由があるなら、無理に行きたいなんて我儘は言わないよ…?」

 行きたいけども…。


「ミレイア様が行きたがるって、知っていて黙っていたのが、とうとうばれてしまいましたね。」

 口を愉快そうに歪めてヨシュアが言ってくる。マーカスの報告書が手に入ってご機嫌なのかしら。


「勿論、悪気があって黙っていたわけじゃない…。あいつ等は、魔法の研究のためと言って、後先を考えない所がある。ミアの能力や知識に対して、ありとあらゆる方法で、自分たちの興味を満たそうと迫ってきかねない。」

 ええ…、それは怖いな。


「ラグが怒るよー、って言っても駄目かな?」

 ラグって多分王国最強だよね?


「…ある意味、騎士団並みの命知らず揃いだからな…。」

 これにはマーカスも同意する。

「団長の魔力が強すぎるから、研究したいって言って、ごっそり血を抜かれた事もありましたね。」

「『ちょっとだけ』て言って酒樽一個分ぐらい採られたんだぞ!?」

 ひえっ、それは普通死んじゃうよ!?彼らも怖いが、ラグも凄い。


「陛下を護る為の魔道具を作ろうとして、私生活を調べるって言って、風呂場まで付いていって連行されたやつもいたな。」

 わあ、仕事熱心ね。


「う…、危ない人が多いのは解ったわ。気を付ける…」

 私もあまり追求されたくないことが多いしね…。でも、教えてほしい事もあるんだよなあ。


「…マーカスの友達だけとか、人を選んで会っちゃだめ?…魔道具の勉強がしたいの…。」


 じっと上目遣いでおねだりをすると、困った様に天を仰ぐラグ。

 ヨシュアが珍しく助け船を出す。


「学院で魔道具の仕組みは、勉強できますよ?」

 学院?貴族が通う王立学院のこと?


「私って通えるの?」

「ええ、全ての貴族は通う事が義務付けられています。王族や既婚者にも例外はありませんよ。」

 へえ…、それは凄いな。貴族の心得とかを学ばされるのかな?

 魔法の授業があるのは、楽しみな反面、魔力の少なさで苦労もしそうだけど…、友達が作れるかもしれない…!


「いつから通えるの!?」

「えー、12歳になってからですので、後2年と少しですね。」


「2年…」

 そんなにあるのか…。むう、と思わず口が尖る。



 そんな私を見て、ラグがマーカスに尋ねる。


「…マーカス。その友人はミアに無茶を言ったりしない、信用できる人間か?」


 バッと私もマーカスを見る。


「え、ええ…、家族を養う為に頑張って研究塔に入ったやつですから、趣味全開の貴族の方々よりはまともなはずです。」


「…ならば、いざとなれば家族を盾に脅せば、何とかなりそうだな。」


 ええ…

「脅すとかはやめてよ…、こっちが教えてほしいのに、迷惑かけたくはないよ。」

「ミレイア様が、彼の研究を少し手伝ってやれば、十分な返礼ですよ。」


 そんな凄い人に助言なんかできないと思うけど…。


「それでは、あいつが周りから嫉妬されてしまいませんか?」

「もしバレたら、されるでしょうね。」

「俺が陛下に頼んで、まともそうで、かつ身分の高い奴を教えててもらうよ。そうすれば、そいつだけ妬まれることはないだろう。」


「ご配慮感謝します!」

 ピシッと礼をしたマーカス。


 そんなに嫉妬されるようなことはないと思うけどなあ。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ