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彼女はファザコンをこじらせている  作者: 花摘
帝国騒乱編
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頼もしい人達

 

 三人のメンバーが決まった数日後、私は再び騎士団の打ち合わせ室にいる。


 ラグとヨシュアが隣に、マーカス、キャスリーン、ビンスは向かいに座っている。面接みたいだね。

 私としては、二人が選んだのだからそれほど心配していないのだが、人となりは把握しておきたいところだ。


 何の話で呼ばれたのか不安なのか、三人とも緊張した面持ちだ。


「お前らに、ちょっとでかい任務を任せようと考えたいるんだが…、」

 とラグが切り出すと、三人の顔が緩んだ。むしろ嬉しそうだ。


 マーカスが真っ先に立ち上がる。

「なんすか!何でもやりますよ!任せてください!」

 身を乗り出し、青い目がキラキラとラグを見ている。


 キャスリーンもピシッと立ち上がり、凛々しく答える。

「お任せください。副団長の仰せとあらば例えどのような死地であろうと参ります!」


 鮮やかな赤茶色の長髪をキッチリ後に結び、真っ赤な瞳をヨシュアに向けている。筋肉質だが、細くて小柄だ。隊服だからきりっとして見えるが、ドレスを着せれば、普通の女の子に見えるだろう。20歳は超えている頃かな。

 こちらはキラキラというより、ギラギラだね。ヨシュアは、よく無表情を貫けるなと思う。


 この元気の良い二人に対して、ビンスは穏やかに返答する。


「もちろん私も喜んで拝命いたします。任務の内容は何でしょう?」

 うん、普通の人だ。ホッとする。中肉中背で、薄茶色に緑の瞳、20代後半らしいが、無精ひげとくたびれた表情のせいで、もう少し老けて見える。


「説明する前に引き受けるな。まあ、今回の任務は説明した時点で引き返せんがな。」

「ミレイア様がここに要るってことは、帝国関係でしょ?少人数ってことは、内部に侵入して揺さぶりをかけるか、暗殺って所だと思ったんですが?」

 ラグが一応たしなめると、マーカスはあっさりと答える。


「ああ、ミアの案内で帝国内部に忍び込み、最小限の犠牲で皇帝の首を取る。それが今回の任務だ。」

「へえ!ただの攪乱じゃなく、いきなり首を取って来い、ですか。確かにでかい仕事ですね。」

 なぜ嬉しそうなんだキャスリーン、可愛い顔が怖くなってきたよ。


「ええ、決して失敗できない任務です。情報部隊とも連係して動く事になります。」

「…最小限の犠牲、というのは絶対条件なのですね?」

 ビンスもすんなり要点を理解している。


「そうだ。…上層部で目指している決着に必要な、絶対条件だ。難易度は上がるが、お前達なら可能だと見込んでいる。」

 ラグにそう言われ、口角が上がる三人だが、次の言葉でそのまま凍りつく。


「それと、ミアを傷一つ無く、連れて帰ること。こっちはお前らが騎士団に戻るために必要な絶対条件だ。」


 ……

 すぐ我に返り、三人とも了承の礼をとるが、動揺が隠せていない。そりゃそうだ。こんな転んだだけで汚しそうな子供の御守を、敵地の真っ只中でするなんて無理がありすぎるだろう。


「傷一つ無くは、冗談ですよ。生きて帰れれば、良いのです。」

 慌ててフォローするが、ラグは無言だ。


「大丈夫ですよ、この三人ならば出来るはずですから。」

 ヨシュアが微笑んで追い打ちをかける。ええ…と思ったのだが…、


「もちろんです!!」

「ま、それもそうだな。」

「…最善を尽くします。」


 前二人!もうちょっと考えて!すごく頼もしいけど!


 …

 私はここで、後は四人だけにしてほしいと頼んだ。二人がいると、本心を出さない可能性が高いし、こっそりしたい打ち合わせもある。


 ラグが抵抗したが、私の気持ちを汲んでくれたヨシュアが、引きずっていった。


 出ていったのを確認し、防音の魔法紋もこっそり起動する。


「改めまして、ミレイア・ラズノールです。皆様のお供をさせていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。」


「よろしく、ミレイア様。」

 面識のあるマーカスが、そう答えると、続くように二人も挨拶を返してくれた。


「まず、こちらをご覧ください。」

 私は机の上に、図面を広げた。


「…これは、帝都の図面?いえ、道が違うか…」


「すごいですね、ビンスさんは、帝都内の地図も頭に入っているのですか。」

「いえ、大まかです。…これは何ですか?宮殿と国境の位置関係は帝都に見えますが。」

「俺分かったぞ、地下通路か何かだろ?」


「ええ、その一部です。」

「え?これで一部なの?…ですか?」

 帝都を示す円の中に、何本も引かれた線を見てキャスリーンが驚く。


「敬語は無理しないで大丈夫ですよ。…はい、王国と違い、帝都の地下には水道が巡らされています。それに紛れて、皇族専用の秘密通路もあるのです。…流石に全てを皆さんに教えるわけには行かないので、使う必要があるものだけを、図にしました。紙に書き取らず、この場で記憶してください。」


 こう言えば、3人とも真剣な顔で、図面を見る…、いや、マーカスは既に目をシパシパさせている。


「私達は、先ず、宮殿の裏手、国境から直接帝都に侵入します。…方法は聞かないでくださいませ。」

 国境から直接侵入すると聞き、目を丸くする3人だが、そう釘を指す。


「国境から入ってすぐの場所は、後宮の敷地です。その中の一つに入り、皇帝がこっそり使う通路を使用します。」


「何で後宮に行くのに、皇帝がこっそり通う必要があったの…ですか?」

 キャスリーンが、慣れていなさそうな敬語で、もっともな質問をする。ヨシュアに対しては、頑張って喋っていたのかな?


「…妃同士の争いに、配慮せねばならない皇帝が、いっぱいいたのでしょうね。」

「ああ、なるほど。」

「皇帝も大変なのですね。好きな妃の所に自由に行けないなんて。」


「は?何で?堂々と行きゃあいいじゃんか。」

 キャスリーンとビンスは深く納得するが、マーカスは解らないらしい。…陛下並みに女を理解しとらんな。


「まあ、とにかく、この通路をうまく使えれば、皇帝の寝室までは人目につかずに行けるわけです。」

「おお、凄い。後は俺達の仕事って訳だな。結構行けそうじゃない?」

 話を先に進めると、マーカスは余裕そうに言うが、一方で、ビンスは冷静だ。


「…皇帝がこの部屋にいるとは限らないですよね?それに皇帝の良く知る通路ならば、対策を講じている可能性もあります。ミレイア様がこの国にいることは知っているのですから。」

「ええ…、情報部隊との連携で、その辺はなんとかする手筈だそうですが…、不測の事態は起こり得ます。長時間宮殿内で潜伏する事になったり、寝室ではない場所で事に及ぶかもしれない。…場合によっては、通路でバッタリ合うかもしれませんね。…それが一番簡単そうだけど。」


「さっきの団長の言い方からして、ミレイア様に、何かあったらマジでヤバそうだから、極力バッタリは嫌だな。…です。」

「ですから、敬語は無理しないでください。…正直、皇帝が身体を休めたかったら、寝室にいる可能性が最も高いと思います。そこが一番襲撃に対する備えが万全ですから。」

 多分私のかつての部屋と同程度かそれ以上の、守りがあるだろう。


「念の為、皇帝の似顔絵を描いておきました。…2年ほど前に、私も似顔絵を見せられただけなので、多少変わっている可能性があるかも知れませんが…。」

 参考に、お祖父様が昔、描いてくれた似顔絵を復元してみた。デザイン画などに慣れているから、図面や模写などは結構得意だ。


「へえ…上手いんだ、ですのね。」

 おお、褒めてくれた!ここで一気に歩み寄ろう。


「…副団長さんの絵でも書きましょうか?キャスリーン?」

「まあ、いいの?ヤダ!キャスって呼んでよ水臭い!」


 …チョロいわ。大丈夫かこの子。


 ビンスは、詳細な情報を得ようと、尋ねてくれる。

「具体的にはどのような備えがあるのですか?」

「推測が混じるので、確実とは言えませんが、皇帝が作動させると、魔法攻撃や物理的な遠隔攻撃は弾かれる結界が作動されます。警報が鳴り、兵が駆けつけるやもしれません。」


「なるほど、剣などで斬りかかるのは可能でしょうかね?」

「うーん、結界の外からの衝撃は、弾かれる可能性があります。結界の中…かなり近くまで接近し、そこから攻撃を加える必要があります。もちろん皇帝も、武器も魔法も扱うので、かなり危険が多いでしょう。」

 しかも兵が駆けつける前に、かなり素早く済ませなければならない。


 すると深刻な私に対し、キャスリーン改めキャスが、少し楽しそうに言った。


「ふふっ、任せて。ナイフが一番得意なの。『殺るなら直に』が私のモットーよ。」

 やばい、やっぱこの子怖いわ。


「うわ、怖えー。」

 マーカスが怯えるふりをして見せる。


「俺だったら『殺るなら最後は派手に』だな!」

 なんじゃそら。同類やないか。


「二人とも、敵であろうと敬意は払わないといけませんよ。」

 ビンスがやさしく諭す。


「『殺るなら優しく丁寧に』ですよ。」


 ひいっ、あんたもか!むしろ一番狂気を感じるわ!


 まあ、ある意味頼りになるメンバーなの…か?




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