表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
彼女はファザコンをこじらせている  作者: 花摘
帝国騒乱編
91/250

ラグの苛立ち

 

 家に戻っても、ラグは不機嫌なままだった。スキンシップはいつも通りだから、そこまで怒っている訳ではない…と思いたい。


 …

「ラグ、ゴメンなさい…」

 重苦しい雰囲気のまま、夕食を終え、寝台の上で二人だけになったタイミングで、謝罪をする。


「それは、何に対する謝罪だ。」

 ラグに切り替えされ、そこで困惑する。

 え、…ラグが怒っている事…、何に怒っているんだろう。


「黙って勝手なことをした事…?」

 要はこれだと思うんだけど…。


「…もう寝よう。」

 違ったあああ!?


「ゴメンなさい!もっとちゃんと考えるから!!」

 ワンモアチャンス!


「…別に怒っていない。いいから寝なさい。」

 嘘!絶対怒ってる!

 …布団かぶせてトントンしないで!…眠く…なっちゃう…………



 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 ーーーーーーーーーーーーー

 ーーーーーー


 あっさりと眠りについたミアの寝顔は、王宮で弁舌を振るっていた彼女と、本当に同一人物かと疑うほど、あどけない。


 普段は、この穏やかな寝息と温もりに誘われるように眠くなるのだが、今日の出来事が、頭を巡るせいで全く眠くならない。


 …

 その時、扉をノックする音が聞こえた。


「…旦那様、ルシアでございます。ミレイア様はお休みになられたでしょうか?」


「…入れ。」


 ミアを抱えたまま、身を起こす。

 ミアは、俺から離れない限り、滅多なことでは目を覚まさない。逆に離れると、ぐずるように目を覚ますことは、本人も気付いてないのだろう。


 …そんな状態で、独りで親の仇を殺しに行くなんて、させられるわけがないだろう…!



「夜分に申し訳ありません…」

 ルシアが躊躇いながらも、部屋に入って来る。


 寝台に腰掛ける俺に、何を話すのか迷う素振りを見せる。

 なので代わりに切り出してやる。


「ルシアは、ミアが今日、王宮で何を提案するか、聞いていたのだろう?」

 二人で相談して決めたのだろうと思い、そういったのだが、ルシアは否定した。


「いえ、私には、争いに関わる事に対し、協力をして欲しいと説得されただけでございます。協力についても、現大司教様のお人柄を聞かれただけです。ですので、ミレイア様が、何をなさろとしているのか、解らず、不安で…。」


「独りで決めて、頼みたい事だけ頼まれたと言う事か。」

 そうか。ルシアにもか。


「ええ、それはミレイア様のお立場からすれば、私にすべてを話せないのは仕方がないことです。…ミレイア様が自ら関わることを、そのお気持ちを話してくださったので、それはそれでよいのです。

 こうして参ったのは、私にも出来る限りのお手伝いをさせて欲しいと、旦那様にも許可をいただきたいとおもったからです。」


 それが、ルシアの要件か。

「…ミアが関わることになる作戦は、極秘事項だ。ただし、協力は願ってもないことであるし、陛下にも手伝ってもらう事に、許可は得ている。」

 商会と帝国教会に繋ぎをつけるならば、ルシアが最も適当な人材だろう。


 帝国へ取り引きを持ちかけるつもりである事や、その条件として、犠牲を最小限に抑えるつもりである事を伝えた。こちらが求めるものについては、勿論伏せて話す。


 ついでにミアが自身で帝国に、乗り込むつもりであることも話した。

 ルシアならば、一緒に反対してくれるであろうと思ったからでもある。


 しかしルシアは、青ざめた顔で震えつつも、ミアの寝顔を見つめてから、協力を了承した。


「…ミアを止めないのか。」

 思わずそう聞くと、ルシアは悲しそうに首を振る。


「ミレイア様が、そのように決断されたならば、私がどれほど嫌でも、結局説得されてしまうのでしょう。」

「俺は、自分一人で勝手に決めていたことに腹が立ったがな…。」

 決意する前に、相談するとかなんか無いのか、と思う。


「皇女様としてのお生まれになられましたから、先帝陛下やセンドリア様以外の方に、判断を委ねるというようなことは、そもそも考えておられないのでしょう…。それにミレイア様であれば、ご自身で最適な答えを見つけられますから。」

 そう言うルシアは、どこか少し誇らしげだ。


 ああ、そうか、ルシアにとってのミアは、どれ程親身に思っていても、『皇女』と『臣下』なのだ。

 だから、決断を尊重するし、それを曲げたいとは思わない。ミアの出す答えが、どう見ても最適解であるせいもある。いっそ愚かであれば、簡単に退けられるのに。


「俺は、あいつの父親や祖父ほど、信頼はされていないという事だな。」

 要はそういう事だろう。所詮は他人と言う事か。正直この点が一番腹が立つ。


 しかしそれをミアにぶつけるのは大人気がなさすぎるとも思う。会って1年と少し、家族になってからは、まだ季節一つ分も過ごしていないのだから、当然だろう、とも思う…。


 慌ててルシアが否定する。

「旦那様の事は、一番信頼されていると思います。…少し恨めしく思うくらいですもの。」

 俺の腕の中で、平和な寝息をたてるミアに目をやり、寂しそうな顔をする。…そうも思うんだがな。


「きっと旦那様が、『ちゃんと事前に相談してほしい』と言えば、自然とそれに慣れてくると思います。旦那様はそれができるお立場なのですから。」

 自分にはできないのだから頼む、という意味を込めて言われた。


「…ミレイア様は、争いの渦中に飛び込むことの、一番の理由に、旦那様との暮らしを失いたくないからだと仰っていました。」

「…だから、それが信用していないというのだ。」

 そんな事には俺がさせないと、どうして考えない。


「信頼していた御二人と、否応なしに、別れさせられたのですから、そう簡単に安心など出ないのだと思いますわ。」

 …ごもっともだな。


 帝国との事を完璧に納め、誰一人欠けることなく無事であれば、ミアももう少し頼りにするようになるだろうか。



 そう思い、頭の中で作戦を練り始めたころ、ようやく苛立ちが収まった。






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ