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彼女はファザコンをこじらせている  作者: 花摘
帝国騒乱編
89/250

説得

 

「だめ、私が行く!」

「は?」


 しまった、ちゃんとプレゼンをうつつもりが…。


「ええと、ラグは普通に考えて無理でしょう?目立ち過ぎるし…火力強すぎるし…、何より長期間ラグがいなくなったら、絶対帝国の諜報部員が怪しむでしょう。」

 ラグほど隠密行動に向いていない人はいないと思うんだけど。


「俺は騎士団の中じゃ、真ん中ぐらいの大きさだぞ?魔法が無理なら剣でいくらでも戦える。…そもそも、『私が行く』だって?そんなこと許すはずないだろ!」

 ま、真ん中ぐらいだと…。違ったそうじゃ無い。


 …ラグの説得は手強そうだ。私の事を考えてくれている分、余計にそうだ。

 よし、陛下と宰相から攻めよう。


「現在、帝国の教会で最も高い地位に着かれている、サルージャ大司教様は、お祖父様の古くからの友人で、ルシアも助けてくれた縁のある方です。直接お会いして、説得すれば、可能性は格段に上がります。」


 …そう、友人らしいのだ。絶対いないと思っていたのに!

 お祖父様が教えてくれた時は、盛って言っているにちがいないと思っていたのだが、ルシアに聞いても、どうやら本当のことらしい。

 あのお祖父様と長年、友人関係が築けるのなら、同じ様に相当頭が良いのか、海のように広い心を持っているに違いない…。きっとこの話にも耳を傾けてくれるだろう。


 同じ様に「私が行く」発言に驚いていた、陛下と宰相は、この話を聞き、検討する姿勢をみせる。…ラグはそんな二人を、苦味を潰したような顔で見ている。


「それに、私には、帝国宮殿に関する知識が誰よりもあります。陛下が部隊を組織してくだされば、私が皇帝の前まで案内致します。」


 宰相はなるほど、という顔をした。宰相は私がどうなろうと、大して困らないからね。反対する理由もないんだよね。陛下は…もうひと押しっぽいな。


 ラグが、また反対の声をあげる。

「お前自身が行く必要はない。情報だけ渡せば十分な貢献になる。」

「…私の魔力でしか解除できない場所が、あるんです。」


「ミレイア嬢を連れていけば、隠し通路から皇帝の自室に行くことができるということだな?」

 流石王族。話が早い。


「ええ、人数は限られますが…、」

「具体的には何人だ?」

 だいぶその気ですね。

「私から、2ル、…2.5m離れない距離が安全な範囲になるので、その中に収まるくらいですわね。」


「ふむ、かなり限られるな。人選が悩ましいところじゃ。」

 宰相さんは既に、計画を組み立て始めていますね。


「…そんな少人数では、ミアは守れん。」

 守る人員じゃなくて、暗殺用員になるからね…。


「案内するだけで、後は隠し通路にでも隠れているよ?足手まといになるもの。」

「そんなことで安全だと言えるわけがないだろう。…なぜ子供のお前が、危ない目にばっかり合わなきゃいけないんだ。餓死寸前からようやくまともな暮らしになった所だぞ?」

「私が皇女であったからには、当然出てくる義務よ。犠牲者が減らせるのならやらなくては。…私は、陛下と宰相に任せて、司教様たちに無理やり口を割らせようとしないかが不安なの。」


 正直な懸念を、話すと、陛下が不満そうに言い返す。

「人聞きの悪いことを言うな。交渉をしっかりするつもりだ。」

「身内の掃除のために、他国人や女子供を平気で捨て石にした方を、信じられるわけ無いでしょう。」

「陛下が望んでやったわけじゃ…」

 宰相がかばう。


「望もうが望まなからろうが、やった事には変わりありません。司教たちをいたずらに追い込み、帝国が滅亡したあとに、

『こんなつもりはなかった』と言われても許せるわけがないのですから。」

 感情なんて知ったことか。被害者にとっては結果が全てだ。


「ラグ、お願い、これは私の我儘なの。自分でどうにか出来る立ち位置にいたいの」

 ラグを頑張って説得するついでに、陛下をけなしていたら、少しむくれた様に、陛下が口を開いた。


「皇帝が死に、王国が脅かされることが無くなり、帝国の教会に話を聞くことができれば、私は他には望まない。帝国にそれ以上介入することもないと約束しよう。…何ならさっきの誓いをもう一度やってもいいぞ。」

 それはありがたい。ぜひ用意しよう。…準備には時間がかかるから後日ね。


 ラグへの説得のついでに、おねだりをする。

「人員はラグが選んでくれると嬉しいな…、その方が安心できる。」

 宰相が選ぶと、いざとなったら置いて行かれる人になる気しかしない。


「俺も行く。それが一番安心だ。」

 陛下の様子から見て、行くのを止めるのは無理とわかったのだろう。今度はついて来ると言い出した。

 これには陛下も反対する。

「ラグレシオンは目立ち過ぎる。その点は俺も賛成だ。敵と鉢合わせするなど、トラブルがあった場合、絶対大事になり、隠密行動が取れまい。ラグレシオンの顔は、帝国にもよく知られている。この間捕まえた諜報部員はお前の人相書を持っていたぞ。」

「むしろ、陽動が相応しいじゃろう。ラグレシオンのいる所が主力と見るじゃろうからな。」


 二人に言われて、ラグがイライラしている…。

 ここで言い合いは良くないな。


「ええと、具体的な作戦はまたじっくりと行ないませんか?先ずは教会との交渉が上手く行かなければならないのですから。」


 この提案に、一先ず交渉のため準備に話が切り替わる。

「…そうだな。向こうが動くのも、雪が溶けてからであろうから、それまでに準備を念入りに出来るな。」

「教会とのつなぎは、ノアール商会が出来るか?」

「…恐らくは。連絡手段は持っている筈です。」

「教会には、ミレイア嬢からの提案だと、伝えても良いのか?」

「ええ、その方が良いでしょう。『魔物が出て困っている。』、『ミレイアから、司教に聞くことを提案された。』、『平和理にことを納めて、帝国の教会に、教えを請いたい。』と伝えれば、大方は察してくださるでしょう。」


 ふむ、と頷く陛下。

「教会に手引きを頼む事は出来ないのか?」

「先程申し上げた通り、教会は政治に不介入の誓いを立てています。現皇帝が斃れ、別の体制になり、王国への介入をやめていただくまでは、こちらのやるべき事です。」

「そこまでを、最小限の犠牲で行うから、という条件を提示するということか。」

「ええ、そこが突破口でしょう。他の条件を提示してくる可能性もありますが、そこは交渉でお願いします。」


 これには、宰相がやる気を見せる。

「お任せください、腕がなるわい。」

「…シルバ公爵にもお手伝いいただいた方が良いのでは?」

 お祖父様と旧知であるなら、サルージャ大司教とも知らぬ中ではないだろう。

 そう思ったのだが、陛下はこれに懸念を示す。


「公爵に今の話を伝えるのは、躊躇いがあるな。彼は大臣ではあるが、優先するのは王国全体より自領であるから。鍛冶や魔道具が主産業の公爵は、土地の魔力より、人の魔力を優先させたがるかもしれない。」


 …なるほど、そうだったのか。

 確かに、魔力の配分は、人によって望む形が違うだろう。帝国の民は、この仕組みを知ったら、もっと自由に魔力を使いたいと望むかもしれない。農家の人は、もっと土地に魔力を回せと言うかもしれない。


「…限られた人にしか伝えられなかった理由が、この辺りなのでしょうね。」

「全くだ…、しかし公爵の協力は欲しい。話せる範囲で助力を願ってみよう。」

 そんな所が落とし何処だろうね。


「それでは、この方向で計画を進めよう。使う手子は、慎重に決めねばな。ミレイア嬢には、ラグレシオンを通じて、やり取りをしよう。頻繁に呼びつけると勘繰られる恐れがある。」


「…わかった。」


 そう答えたラグは、腕組みをして、ずっと何かを考えているようだった。



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