交渉 その1
結局、陛下からの呼び出しは午後になった。
お昼は、食堂へ行くと騒ぎになるだろう、という事で、隊員に運んでもらった。
チキンのパルメ煮込み…黄色いトマト煮込みだね。大雑把な味付けだけど、カイルのご飯とはまた違った美味しさだ。量が多すぎて、ラグに9割方食べてもらったけど。だって、一人前のパンが、フランスパン一本分あるんだよ?…チキンもあれ絶対、1人1羽分くらいあるよ。
この騎士団の遠征費用はエグそうだな…。
隊員達の食べ方を見ていると、色々な産まれの人が混じっているのがわかる。
ヨシュアは明らかに貴族だな、しかもまあまあ高位の。平民がやや多めか…、この部屋は執務室だから、全体で見れば、平民のほうが圧倒的に多いのだろう。
書類仕事を一緒にやっていた人は、貴族か、商人の出身が多いかな。
…石を抱いていた、お調子者の脳筋集団の中に、貴族っぽい奴がいたのには驚いた。喋り方や行動は、どう見ても平民なのに、食べ方だけはやたら綺麗なのが、とても可笑しい。
…食べる量は皆一緒だね。
……
お腹いっぱいになると、眠くなるのは、子供の本能…、しかもラグが側にいる安心感からか、家にいる時より、眠い。
「どうしたミア、眠いのか?」
さあ、ここで寝るか?と両手を広げるラグ。やめろ!誘惑するんじゃない!
恥ずかしいでしょうが!
首を降る私を、容赦なく抱っこするラグ。
「ほれ、お昼休みの間に、仮眠を取るのはみんなやってる事だ。寝ていろ。」
むう…、じゃあ、ま…いっか…………。
……
…
あれ?地面が揺れている…、じゃない!馬の上だ!
「ラ、ぐヮ!」
いて、舌噛んだ。
「おお、起きたか。よく寝てたな。呼び出しがあったから、今向かっているところだ。」
何だって…、危なかった、下手すると金髪陛下に寝顔を見られるところだったぜ…。
建物に入る前に、アワアワと身繕いする。ヨダレ付いてないよね…?
シワになりにくい、ツルツルした素材で良かった。
前回のように、陛下の呼びかけによって、入室する。
…今日は公爵がいないようだな。
「よく来たな。座ってくれ。」
陛下と宰相の向かい側に、ラグと腰を降ろす。
「それで…?思い出したこととは何だ、ミレイア嬢。」
ふう、いきなり本題か。仕方ない。
「お話する前に…、ご理解いただきたいのは、これから私がお話する内容は、帝国の皇族か、教会の大司教にしか知り得ない内容です。皇族と言っても、すべてを知るのは皇帝のみで、私はほんの一端を教えてもらい、そこから推測をしたに過ぎません。」
「それでも良い。どんな情報でも今は欲しいのだ。」
陛下はそう言うが、ここは念を押させてもらう。
「お祖父様は、私に話すときは、最も信頼するルシアですら席を外させました。…陛下はここにいる者達に聞かせても良いとお考えという事で宜しいでしょうか?」
「…その話は、政局の決定に関わることなのだろう?」
私は頷いて肯定する。
「ならば、バルディとラグレシオンはこのまま。…影は下がれ。」
周囲で姿を隠していた護衛の者達の気配がすっと消えた。
ラグにはやっぱり聞かせることになるのか…。
促され、話を始める。
「それではまず、事実確認をして宜しいですか?」
「事実確認?」
「ええ、陛下がご存知のことが、どこまでなのか。…知っているはずの事をなぜ知らないのか。」
陛下の眉間にシワが寄る。
気に食わないでしょうね。こんな子供に、お前は無知だと言われているのだから。
しかし、この先の交渉の為には、積極的にマウントを取らせていただきます。




