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彼女はファザコンをこじらせている  作者: 花摘
皇女編
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魔法紋2

 

 記号を覚えたら、次は紋の作り方だ。


 記号は二重の円状に配置する。

 内側には起動の条件を描き、外側に条件が満たされた場合に起きる事象を描き込む。

 どちらも記号が綺麗に均等につながって、円にならなければ正常に起動しない。

 文字を小さくしたり大きくしたり、時には横長縦長にやや変形させつつ、ぐるっと1周するように調整するのだ。


 これが難しい…。事象の大きさは、属性の記号の大きさとベクトルの記号の長さの相対で決まるため、狙い通りの効果を出すためにはその調整も必要なのだ。

 ぐぬぬ…

 私が描いた、ミミズの群れのような塊と、お祖父様のまさに魔法陣的な、美しい紋を見比べ、唸り声を上げる。


「これは、慣れるしかない。取り敢えずよく使いそうなものを記号のバランスも含めて覚えなさい。何度もやっていれば自然にできる」


 …嘘くさい…お祖父様の誰でもできるは、信用できん。

 そう思うが、渋々うなずいて、見本を何度も書き写す。


「取り敢えず先に進むぞ。紋が実際に起動できるようにするためには、魔力で記号を刻み込まなければならない」


 お祖父様は布を取り出し、指先で何かを描いてゆく。指の先に魔力を集中させているのがわかる。


「触れてみなさい」


 描き終わった布を差し出され、触れてみると、何もなかった場所に、お祖父様が先程描いた紋が光って現れた。


「わあ…光らせるなんてことができるのですね!…魔力を使って文字を描くため、紋の中に魔力が保たれるということですか!?」

「ああ、魔力の組み合わせ次第で熱を発生しない光も生み出せる。魔力で描く為にはコントロールが重要だ。何の属性にも偏らない純粋な魔力を集中させ、ものに刻む…染み込ませるといったイメージのほうが近いな。」


「やってみろ。」

「はい!」


 私は、ワクワクして先程まで紙に描いていた魔法紋を手元において、布に書き出そうとする。


 ぼっ

 …布に火がついた。火の属性に偏ったらしい。


 すぐに消して仕切り直す。

 おっ今度は行けたか?

 と思ったら、指先から染み出していたのは魔力ではなく水だった。


 …お祖父様の方は見ない。


 コントロール、コントロール。

 これまでの4種類の魔法を均等に維持させる特訓を思い出しつつ、指先で混じり合わせるように意識する。

 よし!何も出てきていない。

 ゆっくりと布に当てて動かす。


 …あれ?

 魔力がその場にとどまってくれない。すうっと周囲に広がってしまう。


 ううっ

 やむなくお祖父様に助けを求める視線を送る。

 良かった、そんなに呆れてないようだ。


「魔力の濃度が足りていない。空気よりも濃くしないとすぐに溶け込んでしまうぞ」


 そうか、他人の魔力は見えにくいはずなのにお祖父様の魔力が指先に集まったのははっきり感じた。それほど凝縮していたのだろう。

 集まれー集まれー。ギュッとなれー。


「絵の具を垂らすように、たっぷりと魔力を出しながら描け」

 お祖父様のアドバイスの通り、油絵の具をチューブからぐにゅーっと出すような勢いで描いていく。

 一つ書き終えて見てみると、今度はちゃんと留まっている。


 ゆっくり、丁寧に描き進める。

 この紋は『人が触れる』⇒『水が出る』という単純なものだ。


 水の記号に↑方向の記号を描き、不恰好ながら円を完成させる。

 お祖父様に目線をやると、頷いてくれたので、そのままそっと紋に触れる。


 水が噴水のように噴き出した。天井まで届きそうだ。


「結構すごい威力なのですね!」

 水飛沫が降って来るのが楽しくて、はしゃいでお祖父様を見ると、しれっと風魔法で傘を作っていた。


「魔力の量を込めすぎだ。もっと細く描かねば魔力の無駄使いだ、阿呆が。」

 くそう。こうなることがわかっていたな。

 もちろん私はずぶ濡れだ。


「片付けておきなさい。魔力を集中させる練習と、魔法紋の暗記をしておくように」


 そう言って、とっとと出ていった。

 

 くすん。



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