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彼女はファザコンをこじらせている  作者: 花摘
皇女編
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私とルシア

 


 私の朝は早い。お祖父様お手製の魔力紋で動く目覚まし時計は、部屋の中に光が差し込むと同時に起動する仕組みだからだ。


 カンカンという半鐘のような音で、よろよろと起き上がり、紋に触れると音が止まる。早く触れないとベットに向かって水が発射されという鬼畜仕様だ。


 聖地にあるこのお祖父様の住まいは、大司教のお祖父様と8人の司教のみが入れる聖堂の部分と、大司教のプライベート空間の2棟しかない。聖堂には何名か使用人や護衛がいるが、生涯を神に捧げると誓った選りすぐりの信仰バカ…もとい信仰心の厚い方々ばかりである。


 そしてお祖父様の住む棟はほぼルシアだけで管理している。それを可能にしているのは、あちらこちらにあるお祖父様お手製の魔法紋の仕掛けである。大きなものを移動させるものや、勝手に動くモップもある。私も早く作れるようになりたい。


 そんなわけで、かつての宮殿生活では、常時5人以上の使用人が周りにいたが、今は身の回りの事は一人で行っている。

 それでも、ご飯はお祖父様のものと一緒に、ルシアが作ってくれるし、ルンバもどきはいるしで、前世で父子家庭の家事を一手に担っていたときに比べればかなり楽である。

 宮殿の使用人は、お父様に気を許すなと言われていて、信頼できる人がいなかったから、むしろ今の状況のほうがのびのび暮らせている。


 顔を水魔法を使って洗っていると、ノックがしてルシアが入ってきた。


「ミレイア様、おはようございます。身支度をお手伝いいたしましょう。」 

「おはよう、ルシア。ありがとう。」


忙しいルシアだが、こうして頻繁に世話を焼いてくれる。ルシアとのお喋りは、ホッとする楽しいひとときだ。鏡の前に座れば、いつものようにブラシを手に髪を梳いてくれる。


「ミレイア様の御髪もだいぶ伸びましたね。毛先を整えておきましょうか?」

「いいわよ。朝はそんなに時間がないでしょう。今度時間があるときに自分でやっておくわ。」

 背中まである長い髪を切りそろえるだけならそれほど難しくない。


「なりませんよ、こんなに真っ直ぐで綺麗な御髪をそのように適当に扱っては。バチが当たります。」


 鏡越しにルシアが、メッと言う顔をした。


「本当はお召し物も、もっと可愛らしいドレスなどを着て頂きたいのに、センドリア様が、訓練に必要ないと仰って…」


 ルシアは不満そうに口を尖らせて言う。可愛いお婆ちゃんだな、もう。


「私は表向きここには居ない事になっているのだから、ドレスなんて取り寄せてはだめよ。それにお祖父様の言うとおり、魔法の特訓ではしょっちゅう焦げたり汚れたりしているのですから。」


 3日前などは、紅茶を淹れる為の小さなコンロを作ろうとして失敗し、天井まで火があがって前髪が焦げた。お祖父様に溺れるレベルの水をかけられた。その前には蛇口から水が出る仕様にしたくて、パイプを自作して水が出るように作ったら、泥水が噴射して部屋と自分が偉いことになった。

 その他にも…うん私はボロ布でも被ってれば良いのです。やらかしたあとのお祖父様が私を見る、万年氷のような目を思い出して思わずプルプルした。


「それでも…ミレイア様には女の子の楽しさを失ってほしくないのですよ。近頃センドリア様の影響で、魔法の特訓熱が凄いですし、難しい顔で考え込んでいると、まるで子供の表情ではなくなっていますよ?」

「えっ、私はお祖父様の課題をこなしているだけで、そんなに熱を上げているとかでは…!課題が難しいから、そんな顔になっているだけです!」


 子供らしくないといわれドキリとするが、

「いえ、食事中まで眉間に皺を寄せながら、思考に没頭する姿はそっくりでございます。」

 重ねて言われ、ショックを受ける。


 あ、あのお祖父様に似ているだと…?


「私、あのように怖いお顔になっているのですか…?」


 ちょっと泣きそうになって、ルシアを見る。


「違います!ミレイア様は大変お可愛らしいです!ただ…やはり血は争えないといいますか…纏っている雰囲気や考え込んでいるときの目の鋭さがよく似ていると、近頃感じることがございます。」


 う、私あんな雰囲気まとってんの?あんな鋭い目つき6歳の女児がしちゃだめでしょ!


「ど、どうすれば…」

「大丈夫ですよ。ミレイア様は、一緒にお話をすれば、楽しい方だとわかりますので、あとは、雰囲気を柔らかくするように心がければ良いのですか。眉間に皺など寄せてはなりません。」


 ショックを受ける私にルシアが優しく言うが、そんなこと言ったって眉間にシワが寄ることすら今日初めて知ったよ。前世では寄せようとしてもなかなか寄らなかったくらいなのに。


 …と言うことはやっぱり遺伝か。


「わかったわ、もっと女の子らしくする…。でもドレスは実際問題難しいと思うの。」

 でもお祖父様の女バージョンにはなりたくない…!


「では、時々私と二人でお茶会をするのはどうでしょう?ちょっとおめかしして、甘いお菓子を食べてお喋りをするのです。センドリア様には淑女教育に必要なことだと、申し上げておきますわ。」

「それはとても素敵ですわね!楽しそう!」


 ルシアに微笑みながら魅力的な提案され、私は飛びついた。


 ルシアはそんな私を見て「やはりミレイア様はお可愛らしいですよ。」と微笑んだ。




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