魔法紋1
魔法紋を扱うために、訓練をしている。
火魔法、水魔法、土魔法、風魔法を均等に発動させるコントロールの特訓である。
方法は単純で、それぞれの属性の塊を同時に浮かべておき、魔力切れまで4つを維持し続ける、
というものだ。
どれか一つだけが崩れてしまったり小さくなってしまったりすると、お祖父様が舌打ちしてくる。くそう。
魔力切れまでの時間がもったいないからと、勉強も同時並行でやらされる。鬼め。
魔力は、気力や体力とも連動しているため、魔力が切れたときには身動きできない瀕死の状態である。
毎日床にばったりと倒れる私に、お祖父様は、「明日の朝は、ガンガルド共和国の首長名のテストをする」と課題をおいて帰っていく。
「あり…が…とう…した」
こんちくしょう。
そんな私を面倒見てくれるのがルシアだ。
お風呂に入れ、髪を乾かし、ベッドに運んでくれる。甘いお菓子もこっそり渡してくれる。もうお祖母ちゃん、いやお母さんと呼びたい。ルシアの灰色が混じった白髪と、優しく微笑む目尻のシワを眺めながら、ウトウトする。
いかんいかん。
「ルシア…シンダルシア王国の歴史書250p〜264p読んで…。明日のテストなの」
なんとも可愛くないおねだりを聞いたルシアは、困ったように笑ってから読んでくれる。
始めのころは、早く寝るようにとか、やりすぎだとかお祖父様に訴えていたが、事情を説明されて諦めて協力してくれるようになった。
食事と、最低限の睡眠時間はしっかり管理してくれる。
ありがたや…
基本の魔法のコントロールの精度を上げつつ、魔法紋で発動内容を描けるようになれば、同じ原理で魔法も扱えるとのことなので、魔法紋の作り方を教わる。
先ずは魔法紋に刻む記号を覚える。
記号は2種類あり、ひとつには、属性を表したり、『触れる』や『壊す』など一文字で何か意味を表す文字がある。
もう一つは、左右上下などのベクトルを表すものや数字、地球で言うところの±(プラスマイナス)、✕(倍)に当たるものなど、事象の大きさや方向を指示するための記号がある。
象形文字のような丸っこい文字で、意味を表す記号の方はかなり複雑だ。
書いて、ひたすら覚える。
全部で100文字くらいしかないから、漢字より遥かに少ないが、1週間で覚えろって言うんだもん…。数字や距離、重さの単位も帝国語とは全く異なるのだ。ややこしい。
前日教わった記号を忘れてしまっていると、お祖父様からすぐ嫌味が飛んでくる。
「一晩寝ただけで忘れるとは、其の方の頭はどういった構造をしているのだ?」
心底不思議そうなのが腹が立つ。
「…お祖父様って、お友達いた事ないでしょう」
思わず呟くと、目元をピクリとさせ、無視された。気まずいので、顔を見ないようにせっせと書き取りを続ける。私も今世はこのままだと友達いない人生を送る気配を、ひしひしと感じている。
「…魔法紋に関することは、皇家の秘術のため、書付けを残しておくわけにはいかない。どうにかして頭に叩き込みなさい」
厳しくする言い訳が、お祖父様の口から漏れた。
…お祖父様に教わる今を逃せば、二度と覚えられないのか。それでは確かに無理してでも覚えないといけないな。
「はい、申し訳ありませんお祖父様」
諸々込めて謝罪した。ついでにそういえば、と思いついてたずねる。
「叔父上様には教えたのですか?」
「あれは、私にも隠されて育てられた。宮殿内の各所に設置されているため、触れる機会はあっただろうが、詳細は知らないだろう」
なるほど。私も緊急事態のために、使い方は聞いていたが、皇家直属の魔法師のような専門家が設置したものとばかり思っていた。
「あれに対しては、切り札になることもあろう。しっかり学べ」
「はい!」
文句言ってごめんなさい。
完璧に覚えるには2週間かかったけどね…はい、




