表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
彼女はファザコンをこじらせている  作者: 花摘
帝国騒乱編
79/250

ルシアがやってくる

 

 家に戻ると、どっと疲れが襲ってきた。


 カイルが着替えを手伝ってくれるが、私がぐったりしているせいで、脱がせるのにも苦労している。ごめんよう、精神疲労が酷いんだ。


「いい加減、ミア様には侍女が必要ですね…、何時までも私がお着替えを手伝うわけには参りませんから。」

 …あ、そうだ、カイルには伝えてもいいよね?


「今日ちょうどね、陛下に呼び出された件が、私が帝国にいた頃に世話になっていた侍女が、王国に来ているという話だったの。」

「ほう!それは良いですね。信用できるお方なのでしょう?」

「うん、お祖父様が一番信用していた人なの。陛下も許可してくれて、ラグが近々連れてくるらしいわ…」


 ちょっとウトウトしながら、報告すると、カイルが突然焦りだした。


「ヘ?近々っていつですか?まさか今日じゃ無いですよね?ミア様!」

 うーん、いつだろう…、ラグはフットワーク軽いからな…

「わかんない…むにゃ。」

「ミア様!その方は一人ですか?住み込みですか?まだ寝ないでください!」

 はっ、そうか、ルシアも一緒に住めるかもしれないんだった。


「住み込みなら、あの離れに住むのよね?女性でも大丈夫?」

「え、ええ、浴室等も個別に備えておりますし、鍵も付きますので、問題はないかとは思いますが…、女性は住んだことがないので自信がありません。ロイも呼んで、準備をしたほうが良さそうですね。」

 困ったカイルは、庭の手入れをしていたロイを呼ぶ。


「え、ミア様の侍女?いくつ?美人?」

 先ずそれか、この若人が。


「…年はカイルくらいだよ。すんごい美人だけどね。」

 大分年上と聞き、残念がるロイに、ふんッと言った。


「全く…。ロイ、ご婦人が離れに住むとしたら、何が必要でしょうかね?」

「うーん、服とかは自分で持ってきてくれるといいけど…、村にはあまり種類がないからね。その人、上流階級なんでしょ?」

「うん、すごく。気さくで優しいから、二人にも馴染めるとは思うんだけど…働き者だし。」

 ずっと皇族のお世話をしてきた人だからね。私よりよっぽど最高峰の文化に染まっていたはずだ。ただし、この家にいるところを想像しても、違和感はない。むしろ女主人かと感じるほどしっくりくる。


「ミア様のお世話以外は、今のところ特に仕事はないですが…。」

「村の管理なんかも手伝ってもらったら?カイルは村の女将さん連中にとことんやり込められてるし。」

「ああいい考えです…、いえ、今は準備する物の話ですよ。」

 はは、カイルはおかみさん達に弱いのかー。


 あ、そうだ…

「ルシアは、帝国人だから魔力が少ないの。だからお風呂を溜めて沸かすとか、洗濯で魔法を使うとかは、二人より時間もかかるし、できない事もあると思う。」

 私は全部やってもらってしまっているから、さほど苦労していないけど。今は。


「そっかー、なるほど、その辺は俺たちがフォローすればいいね?もしくは、台所とかも、薪を使えたほうが良いのかな?」

 えっ、料理全部魔法でやってたの?あ…、だから巨大肉パイが焼けたのかな?


「是非そうしてあげて下さい…。お水とかも、井戸があったら気兼ねなく使えるんだけどね…。」

「掘っちゃいますか。」

 掘れちゃうんですか。

「穴は直ぐに掘れますが、組み上げ用の仕掛けや、木枠は職人さんを手配する必要があります。」

「そうですね、ではそれは追々…。」


「布団とかはあるのですか?」

「来客用の物があります。」

「俺、干してきますね!」

「では、私は家具の点検を。しばらく使っていないですから。」

「私もお部屋、見に行きたい!」

 ルシアの部屋!


 …

 …

「うーん、ホコリが溜まっていますね。一度掃除をしますから、ミア様はここでお待ちを。」

 カイルがいつもの、風魔法ブワーをやっている間、ロイは布団を干している。


「…もしかして、私が来る時もこんな感じだった?」

 何となく、初めてここに来た日、二人が汗をかきながら出迎えてくれた姿を思い出した。

「ええ!全く良く似た状況でしたね!前日の夜に言われて、一日中カイルと、てんてこ舞いで…」

 布団をバンバン叩きながら喋っている。

「…その通りです。だからこそ私は、旦那様が今日にでも連れてくる気がしてならないのです…夕食どうしましょう…。」

 おお、カイルが困ってしまっている。珍しい。


「カイル、お部屋は私が見ておくわ。後はタオルとか、シーツとかを用意しておけばいいのよね?ロイとやっておくから、カイルは夕飯の支度に行って。」

 そう言うと、カイルは、すみません、と謝りつつも、ホッとしたように母屋へ向かった。


 私は、ルシアの部屋に、母屋で余っている調度品を運び込む。毛布やベッカバー、花瓶や水差しなどなど、ルシアに似合いそうな物を選び、並べていく。

 カイルも、薪を運んだり、クローゼットの立て付けを直したりしている。


 ある程度もう良いかな…というところで、馬車の音がした。ロイと顔を見合わせる。

「カイルの予想が当たりましたかね。」

「行ってくる!」

 …と、駆出そうとして、ハッとしてから、しずしずとした歩きに変更した。


「どうしたんですか?」

「…走って行ったら、腰を抜かされてしまうわ。」

「…礼儀的な意味ですか?」

「うん…。」

 今更、ラグに子供みたいに甘えている事が、ルシアにバレるのが恥ずかしくなってきたぞ。

 いかん、ルシアにはどんな感じで接してたっけ。成長どころか、退化している事がバレてしまう…。


「おっあの方ですか!?確かにミア様と同じ色合いですね!」

「色合いって…、!!」

 ルシアが駆け寄ってきた!


「ミレイア様!」

 うわあ、ルシアだ…、胸がふかふかだ…。じゃない、

「ルシア、元気だった…?ずっと連絡をとれなくてごめんなさい…。」

「良いのです、事情はラグレシオン様から聞きました。本当にご無事で良かった…!」


 ぎゅう、と抱き締めてくれた。

 別れのときは、もう二度と会えないと思っていたのに…。


 こうしてまた会えた喜びが、じんわりと心に染みてきた。


 視界に入る髪色が、記憶よりも白い。薄いグレーの髪色が、ほとんど真っ白に近くなっている。


 ルシアが、私の両頬に手を添え、じっと見つめる。オレンジがかった明るい赤色の目は、記憶と変わらず、暖炉の火のように暖かかった。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ