夜のおしゃべり
ラグとは寝る直前までおしゃべりする。…つまり、私が途中で寝落ちするまで。
寝物語の変わりなのか、ラグは、仕事の話を一から十まで話してくれる。朝出勤してから、どんな仕事内容で、昼食のメニューや、隊員達の話題まで、一通り話してくれるので、退勤する時に副団長さんから逃亡して帰路に着くという、毎度の武勇伝を聞く頃にはウトウトと眠りにつくのがお馴染みになりつつある。
…副団長のヨシュアさんには、一度菓子折りを持って謝罪しに行かねばならないのでは、と思い始めている。
「今日の仕事は、捜索隊がとある子爵の屋敷の捜査に入った時に、隊員が壊したという家具のリストと値段をひたすらチェックするという、悲しい作業でな…、貴族の家具ってあんなに高いんだなあ、ゼロが二つ間違っているんじゃないかと何度も聞いてしまったよ。」
「捜査で必要だったら仕方ないんじゃないの?それも国の予算で弁償するの…?」
「いやあ、その見極めが面倒でな。隊員が引き戸を間違えて押して壊したとか、何かの箱だと思って無理やりこじ開けたら、高価な魔道具だったとか、明らかなこっちの過失もあってな。」
…隊員さんたちも、豪快な人が多いみたいね。さすがラグの部下。
「それは、払ってあげなきゃかわいそうかもね。これから大変なことになる人たちばっかりだろうし。」
没落するにしても、お金は必要だ。
「そうなんだよ、泣かれちゃってなあ…、こっちが悪いことしてくる気分になるぜ全く。」
泣いちゃったのかあ。…今回の騒ぎは、帝国が絡んでいるであろうことを、ラグの話から推測できてしまっているだけに、なんとも複雑な気持ちだ。下手に口を出せば、色々疑われかねないし、力になりたいのだが迷惑を掛けたくはないから、こうして話を聞いていることしか出来ない。
「今日も大変だったんだね…」
たふたふと、分厚い胸板をやさしく叩いた。
「ああ、あまりにしんどくてな、魔物が現れたという知らせが入ったのを機に、飛び出したんだ。」
それを聞いて、たふたふの手が止まった。
「実際は魔物じゃなくて、腹をすかせたグズリーの番が、芋の保管庫に立てこもっていただけだったんだが…」
うん、さっきより生き生きして話しているね。…魔物じゃなかったのか、良かった良かった。
「…それで最期にきれいに解体して、食われた芋の変わりに倉庫においてきたって訳だ。」
「そっかあ、村の人も安心だね。冬に食料が減っちゃうのは怖いものね。」
うんうん。
「そりゃあ喜んでな、村中で隊員皆を宴会で歓待してくれたんだ。ついつい長居して…、気付くと夕方だったから、そのまま家に帰ってきたんだ。」
「…そっか、それは嬉しかったよね。…副団長さんには、伝えてから帰ったんだよね?」
「もちろんだ。伝書白鳥を飛ばしてから、現地解散した。」
…言い逃げしちゃったのね。
「早く家に帰りたかったからな。」
…くうっ、すまん副団長さん!我が家の(私の)幸せのために耐えてくれ!今度菓子折り持たせます!
「うん、ありがとうラグ…。」
ぐう…。
伝書白鳥…伝書鳩のでかい鳥バージョン。物も運べる仕様です。




