あったか靴下
今日もラグは、夕飯前には帰ってきてくれた。
「お帰りなさい!」
ぎゅうっ、グリグリ。
「おう、ただいま」
早速ラグを二階にひっぱていく。
「ラグ、こっち来て!」
「何だ何だ?はしゃぐと危ないぞ。」
二階に連れてきた私は、ラグにお願いする。
「ラグ、お風呂入ってきて!」
「は?」
「いいからいいから、着替え用意しておくから!」
困惑するラグを浴室に追い込み、カイルが用意してくれた着替えに、最後の細工をする。
色々と考えた末、靴下だけに暖ったか効果をつけることにした。取り敢えず試してもらって、良ければ仕事着にも刻むことにする。温度に悩んだのだが、結局本人が選べるほうが良いだろう、と思い、2段階の温度調節と、ON-OFF機能を付け、結構複雑になってしまった。間に合わず、
最後の細工がまだだったので、お風呂に行ってもらったのだ。
「おおーい、着替えは何処だ?」
しまった…、もう出てきた。ギリギリセーフ!扉の隙間から着替えを差し入れる。
「ふう、一体何だったんだ?」
ホカホカと湯気が上がるラグに尋ねられる。…しまった、湯上がりホカホカの人に、あったか効果は説明しづらい。
「うーん、夕飯できたらしいから行こ?」
後で説明しよう。
首を傾げるラグと一緒に、居間に降りると、食卓が既に準備されていた。
「今日は、白魚のソテーがメインです。ハンプトンのポタージュも温まりますよ。」
「美味しそう〜!神に感謝を!」
適当なお祈りで、頂くことにする。こういうのは心掛けが大事だからね。
「このお魚って、海のお魚?すごく美味しいね!」
「良くわかりますね、遠隔地から何日もかけて運ばれるので、値は張りますが、買った甲斐がありました。」
カイルが優しく微笑む。…これは、午前中の件で気を使わせてしまったのだろうか…気まずい。
「すごく美味しい…有難う…。」
「それで、ミアのさっきのは何だったんだ?」
あ、そうだ。
「えっとね、ラグの靴下に魔法効果をつけたの。暖かくなるやつ。」
「へえ!…でも暖かくないぞ?」
「くるぶしのところに、3つ丸が並んでいるでしょう?一番下を押すと、効果を発動したり、切ったりできるの。上の2つは、温度の調節で、上のほうが暖かくて下の方は人肌ぐらいにしてるんだよ。」
説明すると、ラグは早速「どれどれ」と試す。カイルとロイも、興味深そうに見ている。
「おお、暖かくなってきた!これは良いな…、仕事用にも欲しい…。」
「うん、しばらく試してみて、問題なかったら付けて見るよ。温度とか…、寒さによって色々だろうし、靴の中で蒸れてしまうのも嫌だろうしね。」
「確かにな…、でも、つけたり消したりできるなら、問題はないと思うぞ?」
嬉しそうに、ラグが頭を撫でてくれた。へへ、やったね。
するとカイルが、ポツリと呟いた。
「良いですね…」
「もちろん!カイルのも作るよ!ええと、靴下渡してくれたら、明日にでも!」
「いえ!決して催促したわけでは!…良いのですか?もちろん旦那様優先で!」
慌てて取り繕いながらも、喜ぶカイルがなんだか可笑しかった。
「ふふ、ロイが言ったとおり、本当にカイルも寒がりなんだね。」
「ね?言ったとおりでしょ?ホント冬は大変なんだから。」
ロイと笑い合うと、カイルはちょっとバツが悪そうな顔になる。
「旦那様と私は、南の方の出身ですから…王都の寒さには、何年たっても慣れません。」
「へえ、出身が同じなの?」
ラグは南の方の出身だったんだ。驚いて聞くと、何故か突然カイルの端切れが悪くなる。
「ええ…、まあ、同じといいますか…。」
「ああ、同じ村の出身だ。」
「!旦那様…」
…これはあまり踏み込まないでおいたほうが良さそうだな…。
「そうなんだ、だからこんなに家族みたいな雰囲気なんだね。」
それだけ伝えると、少し寂しそうにまた頭を撫でてくれた。
「それにしても、便利なものを思いつくな…、冬の遠征なんかでは、隊員達も欲しがりそうだ。」
「私の魔力では、隊員全員は賄えないからね…。魔道具を作る人に聞いてみたら?私はむしろ、誰でも使える魔道具の方の作り方は知らないから、隊員用に作れる人がいるかもよ?」
「そうだな…、北の冬は動くのも辛くなるからな。」
と言ってから、ラグはしまった、と言う顔をする。帝国とのあれやこれやですね、大丈夫わかります。素知らぬふりをしておく。
「騎士団関係者の、信用できる人になら仕組みを教えてもいいよ。同じのは作れないだろうし、作り方も教えられなけど、何かヒントにはなるかもしれないから…。」
ラグだけ暖かい思いをするのも良くないかもしれないし、…何より叔父上がご迷惑おかけしてます。
「そうか、ちょっと聞いてみるわ。ありがとな。」
うん、私はラグが良ければそれで良いのですよ。




