大事な確認
新章ですが、暫く前段が続きます。
「これから向かうのはラグ…レシオン様の邸宅でしょうか?」
王宮を出た後、馬車に乗せられ移動する間、ラグに話を聞く。
「ラグで良い。そちらが本名だ。爵位を与えられたときに、貴族っぽく名前を長くされたんだ。…さっき聞いたとおり、俺は元平民だ。小さい村くらいの領地を王都郊外に与えられていて、今そこに向かっている。邸宅なんて立派なもんじゃねえ、小さな家があるだけだ。」
ラグはラグで良かったらしい。ちょっとホッとする。さっきまでの皇女モードが解けて、気が抜ける。
いや、ぼうっとしていては駄目だ。着くまでにいくつか確認して置かなければ。
「ええと、ラグは愛人か隠し子はいる?いるなら早めに教えてほしいの。」
直球で聞いてみると、ラグは豆鉄砲食らったような顔をした。
「は!?何を言い出すんだ?」
あれ?いないの?…隠されるのは困るな。
「うーん。正直私は、ラグがまだ独身というのが信じられないんだよね。ラグの立場を知った今は尚更ね。いても全く問題はないのですよ?ただ知らないで放置しておくと何かと、後々問題が出てきますので、知っておいたほうが良いと思うのです。」
「何でいる事前提なんだよ…。しかも突然敬語。」
きちんと話そうとすると敬語になっちゃうんだよ。
ラグを困らせるつもりはないのだが…、ラグの年齢はおそらく30歳前後といったところか。英雄と謳われるほどの立場なら、女もその親も群がるだろう。
…何よりラグ自身が持つ雰囲気が、女っ気の無い独身男とは思えないのだ。
ファザコンの私は、前世の頃から包容力がある大人な男性に弱かった。…ただそういう人って、大抵妻子持ちか彼女持ちなのだ…。余裕のある男=女にガツガツする必要がない男。という方程式に気づいたのは、痛い目を何度か見た後のことだった…。
「ラグって女子供の扱いに慣れているよね…。」
じっ、っとラグの焦げ茶色の瞳を見つめる。
「私は、ラグの私生活を知りたいとかではないの。今回の婚姻で私は救われたけど、ラグや、ラグの周りの人が何か不利益を被ったのならば知っておかなきゃならないと思うの。」
それを聞いたラグは、深く息を付き、仕方なさそうに話し出す。
「…俺は13歳で入隊して、今の王…当時は皇太子だったが、に見いだされて戦功を重ね、人より早い勢いで出世してきた。遠征やらでくそ忙しくて、20代半ばでようやく結婚も考え始めたが、俺は根っからの平民で貴族のご令嬢とは価値観も家族観も違いすぎて結婚する気が起きねえ。平民でいいと思う子がいても、周りの圧力に耐えられず逃げ出すしな…。
………あと、一番話したくない理由は、そこかしこで聞く噂話のせいだ。…王と俺が…何とかいう関係だという…」
ほっほ〜う。女嫌いの王と、何故か独身を貫く騎士団長。二人は身分違いにも関わらず親友のように仲が良い。
「それは、男色の噂か出ても仕方がない状況ですわね。」
むしろそれ以外理由が思いつかないほどだ。
「くれぐれも誤解するなよ!陛下とは戦友で何度も死線をくぐり抜けた…信頼関係はあるがそれ以上は無い。」
ホントかなあ、本当でも私は困らないけどな…。いっそカモフラージュのお手伝いをしても良い。なんて考えて、ニヤニヤしていると、頭にチョップされた。
うう、結構本気で痛い。
「誤解を晴らす為に、女と手当たり次第付き合ったこともある…後腐れない人間はちゃんと選んだぞ。」
ふむふむ、女慣れしているのはその辺りからか?
「確かにそのような噂では、敬遠されますわね。」
相手が陛下では、どんな令嬢も裸足で逃げ出すに違いない!ぶふっ
もう一発頭に落された…
「陛下にちゃんとしたお相手が出来るまでは、噂は諦めたほうが宜しいですね。あまりにもしっくりきますもの
もちろん!私は信じませんよ!」
ラグが不信感あふれる目でこちらを見ている。
「そんなことより!ラグは私のような子供の扱いにも慣れていますよね。家には子供も住んでいるのですか?」
「家にはいない。村に教会があって、王都の捨て子が集められていて、良く行くんだ。」
「そうなのですね…私も行ったら受け入れられるでしょうか?」
そういえば、この世界で子供と触れ合ったこと全くないな。
「ああ、好きなだけ行くと良い。お前はもっと子供らしさを学んだほうがいい。森ではそれほど思わなかったが、ジークフリートに対する態度や、さっきの話題などは子供の話す話題じゃない。」
うっ、グサッと来た。精神年齢はアラサーなんだもん。しょうがないじゃないか。森では、ラグといる時だけ子供っぽく甘えてしまっていたけど。
ふてくされる私に向かってラグは、苦笑して手を伸ばす。
「俺の家の者も、村の奴らも皆良い奴らばかりだ。ややこしい事は一旦忘れて、ゆっくり休め。落ち着いてからまた考えればいい。」
うう、ラグの頭ナデナデには敵わない。こうやって甘やかすからいけないんだよ。




