国王と宰相の反省会
ラグレシオンとミレイア皇女が退出し、扉がパタン、としまった。
私はが、深く溜息をつくと、バルディが嗜めるように言う。
「今さら後悔ですかな?…あのように謝罪の言葉を口にするとは。」
「…国王が王妃に謝罪する分には問題なかろう。」
まだギリギリ王妃だったし…。
「私の政策が原因で、あの様な痩せ細った身体になるまで追い込んだのだ。責任を感じるのは当然であろう。」
「じゃから、それが今更だというのです。貴方は王妃たちを犠牲に、大掃除することを決めた。それを目の当たりにしたからといって、後悔するのは王としてあるまじき姿ですぞ。」
痛い正論を言ってくれる。わかっている、これはただの愚痴だ。彼女になんと咎められようと、素知らぬ顔で婚姻破棄を伝え、終わりにするつもりであったのだ。それが…、王妃の住いとは思えぬ離宮の惨状に動揺し、何より、
「センドリア上皇の死を伝えた時の、皇女の表情が、頭から離れぬだ。」
ポカン、と途方に暮れた様な表情は、皇女のそれではなく、支えであった唯一の肉親を失った、ただの幼い子供の表情でしかなかった。
そう私が言うと、バルディも苦い顔をする。この男も、孫をもつ祖父である。仕事でなければこのような役目は御免だろう。しかも、彼はもっとひどい状況を望んでいた可能性がある。
「私は正直、既に死んでおると思ってましたわい…。」
そういうことだ。バルディは、ある程度後宮の現状を把握した上で、後宮内で皇女が、死ぬことで2つの利を得ようとした。
一つは…グスタフの罪を決定的な物とする事、そしてもう一つは、帝国が戦争を仕掛けてこざる得ない状況にする事だ。
グスタフの罪は、今の状況で十分に拘束まで持っていける。あとは捜査の腕次第だろう。もう一つの方は…
「バルディは、それ程に開戦を急がせたかったのか?」
「ええ、不安定要素は一つでも早く潰しておきたかったのです。…しかし、ラグレシオンの提案のおかげで、皇女を死なせずとも、凡そは上手く行くことになりそうです。」
ラグレシオンがいなければ、死なせてしまっていただろう。そもそも、皇女を餓死から救ったのもラグレシオンの可能性が高い。
離宮の様子から考えて、信じらぬ話だが、皇女は森で飢えを凌いでおり、そこでラグレシオンと出会ったのだろう。
そのような状況の彼女を発見したラグレシオンは、一体何を考えたのだろう…。バルディに、又しても愚痴をこぼしてしまう。
「ラグレシオンは、私を軽蔑したであろうな…、幼い少女を犠牲にするなど…。」
「ラグレシオンは、『必要な犠牲』という貴族的な考え方を嫌っていますからな。」
バルディも、少し寂しそうに言ってから、慰めるように言葉を続ける。
「じゃが、陛下や儂らに配慮してくれたからこその提案でもあったと思いますぞ。…黙っていたのは思い知らせたかった気持ちはあるでしょうが…」
「ああ、胸糞悪い事案に巻き込むまいとしたのに、代わりに全部引き受けて、納めてくれたようなものだな。意趣返しくらいは甘んじて受け止めねば。」
…事のついでに、ラグレシオンの地位を固められたのが、せめてもの詫びか…、いや、それも本人はあまり喜んではいないだろう。
はあ、と二人で顔を見合わせ、反省のため息をついた。
次章に進みます。
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