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彼女はファザコンをこじらせている  作者: 花摘
王妃編
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最後に、王妃として

 

 国王と顔を合わせるのは、最後かもしれないと思い、この際聞きたいことを聞いておく。ラグの気安さにつられてしまったのかもしれない。


「お聞きしたいのは、後宮をあれほど放置したわけです。いくら女に興味がないとはいえ、政治的にも問題が出てくるだろうことを何故しているのですか?」

 忠告はしていたとしても、宰相もラグも放置を容認していたということは、なにか理由があるのだろう。

 王が苦々しい顔で口を開いた。

「女に興味がないという言われ方は誤解を招くから、控えてもらいたい。理由は一応あった…ここまでひどいことになっていることに気づかず、危険にされたことには…責任を感じている。」

「女嫌いは帝国にも聞こえておりましたので、手遅れかと思います。…命が危険にさらされていたのは生まれた頃からですので、特に気にしておりません。餓死の危機というのは初体験でしたが、まあ精神的にはむしろ健やかに暮らせましたわ。…先ほどの話にあったグスタフ侯爵とやらをあぶり出して罪に問いたかったとかでしょうか?」

 手遅れと言われて落ち込む王。代わりに宰相が答える。


「話に聞くより、貴方は遥かに聡明のようですな…。そのとおりです。後宮の管理を担当するとある貴族をどうにかしたかったと言う思惑がありました。」

「ああ、これまでも后たちに使っていたという報告であげられた予算を着服しているという噂はあったが、今回のことで明らかに事実と合ってないことが証明できた。」

 第一妃の部屋の現状を王に見られては言い訳できないよね…。…しかし、


「管理人が馬脚を表すのを待つためとはいえ、後宮の現状はひどいものでした。後ろ盾を失った私は、ともかく、他の后たちもどうなろうと構わない存在であったということですか?」

「…后を送り込んできた有力貴族も、静かにしていただきたい存在ではある。」

「ああ、后たちも共謀して不正を行っていた、としたいのですね。」

「后たちについては、ミレイア皇女殺害教唆で罪に問おうと思う。」

 宰相がしれっという。こいつ後宮のことを把握していたな。知っていて、証拠が上がるまで放置していたのだろう。

「弱い子女を物のように使い捨てるのは、どこの国の権力者も同じですわね。」

 ふっ、と思わず呟くように言うと、聞き咎めた王が不満そうに反論する。

「私は后たちが弱いものとは感じたことがないが?、ミレイア皇女もその年でも強かに生き残っているではないか。」

 やはりムカつくな、こいつら。勘違い男に一言いっておこう。

「死んだ者もいるでしょう?病死とか言われているものも、殺されたとしか思えませんわ。」

 私が嫁いでくる前、後宮で二人程不審死があったという情報が入っている。

「そもそも、私たちは弱いからこそ、なりたくもない王の后をさせられているのです。父親に逆らえないから、言われるがまま女嫌いの王の后にならざる得なくて、子を生むように父親に命じられているから、生き残るために皆あがいていただけですわ。」

 義務を果たしている后達が、義務を果たせと王に迫るのに、何が不思議があろうか。

「私自身も強かったならば叔父を殺して、好きに生きています。間違っても貴方に望んで嫁いでくることなどなかったでしょう。」

 話しながら、つい口の中で歯を食いしばる。表情も歪んでいたのだろう。ラグに横から頬をつままれた。なだめるように私を見てから、ラグが言う。

「強かっていうのは、そもそもが力の無いもんが、知恵を絞って身につける力の事だ。若い身で王になったお前ならわかっていたはずだ。今回のやり方は俺は、好きじゃねえ。」

 強さの塊のようなラグが、これ以上話してもしょうがない。といったふうに、話を切り上げる。


「とにかく!お前らの狙い通りに事はおおよそ運んだんだから満足だろう。ミアとお前の婚姻破棄と、俺との婚姻承諾書を渡してくれ。」

「お前が急かすからもう用意はしている…。ミレイア皇女。今日から君はミレイア・ラズノールとして、ラグとともに王国に仕えるように。この婚姻を機に、ラグレシオンに『ラズノール』の家名を許す。…そんな顔をするな。」

 ラグは、家名を貰うのが嬉しくないらしい。複雑な顔をしている。…それにしても、『ラズ=ノール(王の盾)』か…、ラグは随分信頼されているらしい。


 最後に、王が絞り出すように言った。

「…すまなかった。」

 うわ、国王がはっきり謝った…。 

「いえ、『国のため』に個人に犠牲を強いるのは、王の仕事です。私も皇族の端くれとして理解しておりますわ。ただ、王としての義務を果たしていない王に強いられるのは反感を買うという事…、后としての最初で最後の忠言ですわ。今日は過ぎたことを申し上げました。お許しくださいませ。」


 立ち上がり、別れの挨拶として、深く礼をする。



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