副団長の鎖
ヨシュアは、先程届いた資料を持って、部屋の奥の机に向かった。
隊員たちは、そっとその姿を目で追う。
椅子に座る団長を見下ろしながら、報告を行う。
「団長、研究塔からの調査報告が来ました。」
「そうか、これを解いてくれ。」
「捕らえた奴らのうち、半数近くが通常の獣と違う生態であるということです。」
「無視するな。解け。」
「具体的には、石を消化できるようになったカル、夜目が利いて、夜空を飛べるようになったミュール、知能が発達した上、体表が硬くなったガーグなどです。」
「ああ、そんなのがいたな。大人しく聞くから、もう解いてくれよ…。」
「信用できません。個体ごとに特徴はバラバラですが、共通していたのは、通常の獣より魔力量が多かったことです。」
「…やはりか、しかし魔力が増えると、獣って進化するのか?」
「その因果関係はまだ証明できないとの事です。人は魔力の量で、生態が変わるなど聞いたことがありませんからね。」
「後日俺が持ってきた、ルナゲイルの尻尾も異常が出たか?」
「ええ、死骸のため確かではないですが、残っている血液からは通常より多い魔力が含まれていたとの事です。」
「そうか…」
「あれは東の森で発見されたのですよね?そちらにも隊を動かしますか?」
「いや、それは必要ない。俺が見回りするからな。」
おいこら、「俺が」見回りってどういう事だ。あんたは何処の平隊員だ?と文句を言おうとしたら、団長が立ち上がった。
バキッ
「じゃあな!!」
拘束していたはずの鎖は、椅子が砕けたことにより、虚しく床に落ちた。
「団長!!窓から飛び出ては…下をちゃんと確認しなさい!!」
下に人がいたら危ないでしょうが!
…
…
残された鎖を手に取り、思わず独り言を漏らす。
「ちっ、椅子が保たなかったか…あの人だけ魔力が多過ぎて進化してんじゃないか?」
世にも恐ろしげな顔でキレているヨシュアから、隊員達はそっと目をそらした。




