騎士団遠征(帰還)
「…どうしてこうなったのですか」
王都の南門近くの森に突然呼び出された、副団長のヨシュアは呆然としていた。
そこには、門兵の詰め所より大きな建造物が出来ていた。中からは、壁にぶつかるような音や、様々な鳴き声が聞こえる。
「皆でよく考えたんだ。」
あっけらかんと答えになってない答えをする上司に、血管が切れそうになる。
「順を追って、丁寧に、分かりやすく、お話を、してください。」
ゆっくり言い聞かせるように、そこにいる者達を見渡して言った。
すると隊員どもは口々に、身振り手振りを交えて自慢げに話し出す。
「殴って捕まえたんです。素手でやるのが一番死ななかったです。」
「紐でつないだら暴れて大変で」
「縛ってぶら下げたら弱ってしまって。」
「暴れて紐を切られて、支給品の丈夫なやつが一本もなくなっちゃいました」
「土壁の中から動かす方法が見つからなくて」
「いっぱい面白いの捕まえたんですよ」
「檻を長ーくして、いっぱい入るようにして、」
「羽のある奴もいたから、屋根もつけました!」
「それでせっかくだから檻ごと移動させてしまおうってなったんです!」
「王都まで長―く伸ばせば逃げずに移動してくれるってひらめいたんです。」
「すっげえ冴えてたよな!」
…
…要するに、捉えたものを入れた檻を、ひたすら長く伸ばして来たのか。…今回の一番遠い遠征地は、王都から馬車で移動しても、5日はかかる西の端だ。それをまあ、よくも…
…
なぜこの連中は、こんなに無駄が多いんだ。へたに魔力が有り余っているから豪快に使うことに躊躇がない。褒めるべきか、注意すべきか良く分からないきもちになって、一言だけ呟いた。
「…それはさぞ手間がかかったでしょう…。」
「ちゃんと役割分担したぞ。土魔法の奴らはひたすら組み立て係りで、他のやつらは食料供給とか、別の怪しい獣を新しく捕まえたり、出来上がった檻の方に追い立てる役だったり。」
「追い立て役が大人気でしたね!檻を端からぶっ壊して派手に追い立て」
…そんな苦労して造った物を、造ったそばから壊してしまったのか。色々使い道はあっただろうに…。
「せめて残しておいてくださいよ…。」
「後片付けはしっかりしろと、いつもは言うだろ?何だ、残してよかったのか。」
言っている…確かに口酸っぱく言っているが、…もういいや。
「もういいです。言われたとおり、研究塔の方には知らせをやっておきましたので、もう直ぐ来るかと思います。彼らに引き渡しを…」
「そうか!では、任務完了だな!」
言うやいなや、片手を挙げて団長の野郎が走り去る。
「オイこら待てぇ!報告して行け!」
捕まえたとき状況報告とか色々あるだろうが!全くないまま研究者達に引き渡せるか!
しかし団長の背中は、既に遥か彼方だ。
「さーて俺らも帰るか!今回の任務は頑張ったよな!」
「ああ、予定より長くなっちまったが、その分酒はうまいだろうな!」
ぞろぞろとその後に続こうとするアホ共がいたので、八つ当たりをして怒りを鎮めることにした。
「…皆さん、今日は残業です。帰りたければ私を倒してから行くように。」
報告はこいつ等を残業させる。そして俺は、あのクソ上司を執務室の椅子に付ける鎖を買いに行こう。




