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彼女はファザコンをこじらせている  作者: 花摘
王妃編
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雨漏り

 

 雨が降ってきた。

 物凄い土砂降りだ。


「…今年初めての雨ね。」

 シンダルシア王国は、降水量がとても少ないが、夏の間だけ時々こうして、バケツをひっくり返したような雨が降る。

 雨が降るのはもうちょっと先だと思っていたのに、くそう。


 森のマイホームは、寄せ集めの草葺き屋根のため、現在絶賛雨漏り中である。

 ボタボタとあちこちから水が、垂れてくる。

 外で濡れながら、せっせと補強するが、なかなか追いつかない。格闘している間にも、すぐ雨はあがったが、今後のためにも補強は必要だ。


 雨漏りの後片付けをしなくては…。濡れてしまった床を、火で乾かす。土の床はこういうとき便利だね。


「良かった、干し肉は無事ね」

 燻製中の干し肉には、雨はかからずに済んだようだ。

「ベッドは作り直しね…干し草を入れ替えなければ。」

 木の台と、干し草で作ったベッドの辺りが、一番雨漏りがひどかった。


 やれやれと、濡れた干し草を外に干そうと、外を見るが、辺りもすっかり濡れてしまっていて乾かすことも、新しい干し草を手に入れることも難しそうだ。


「あ…、乾燥用魔法紋で乾かしちゃうか。」

 乾燥魔法の布きれを使おうと考えるが、この場合は別の紋のがいいかも知れない。

 今ある乾燥魔法の紋は、元々、ドレスが濡れた時にすぐ乾くようにと刻んだ紋のため、あくまで布自体が乾燥するだけで、周りのものを乾かす専用のもではないのだ。

「確か、ルシアの雑巾についてたやつ…。」

 思い出せ…凡人の脳みそには、2年前に一度教わったことを引っ張り出すのはなかなか難しい。

 確か布に水分を吸い取らせて溜め込む紋を刻み、布を絞れば何度でも使えるから、床を水拭きしたときの最後の仕上げには最適だとルシアが言っていたな…。

 うん、だから森の生活では、今まで特に必要だと思わなかったのだ。

 だが、干し肉の時や今回のように、以外に使いどころがありそうだから、この際作ってみよう。


 しかし、

「布がないわね…」

 ちょうどいい布が手元にない。寝床に使っているシーツと毛布は貴重だから切り取りたくない。どうしても必要というものでもないしな…

 取り敢えず火をおこし、室内を乾燥させる。煙と一緒に熱が上に登っていく。こうしていれば屋根は乾きそうだな。


「あ、布でなくてもい良いのか。」

 あれはお祖父様がルシアのために作ったからああなっただけで、布に溜めなければいけないわけではない。普通に器に溜めよう。


 木のお碗を作り、なんとか思い出した魔法紋を刻んだ。

 ほんの少しずつ、周辺の空気から水分だけを吸収させるのがコツだ。触れた場所からだけの吸収だと、効率が悪い。それと、沢山の水を吸収するようにしてしまうと、人の身体の水分まで吸い取られるのだ。調節しても、手が長時間触れていると乾燥してしまうので、ルシアが掃除に使うときには、厚手の革手袋をしていた。


 出来上がった物を、しっとりしてしまった干し草の上に乗せて暫く待つと…。

 あれ?あまり乾かない…水も溜まってこないなあ…。


 手にとって見ると、原因に気づいた。

「あ、しまった。」

 木の器がじっとりと限界まで水を溜め込んで、なんだか柔らかくなっている。

 水を溜め込むように指示をした、『紋を刻んだ素材』の『中』は、「お椀の中」ではなく、お椀自体に浸透することになったのだ。

 そりゃあそうだよねー。言葉のニュアンスを魔法が汲み取ってくれるわけないよねー。


 がっくり落ち込んでから。

『素材の上』という記号に書き換えた。ちなみに『内側』という意味の記号は、完全にそれに囲まれている状態でなければ、発動してくれないので、あまり使えない。


 よし今度は上手くいった…?


 …だめだ。溜まった水を再吸収して無駄なエネルギーを使っている。水分を吸収する範囲を、下と側面からだけにして、ようやく狙い通りのものになった。


「よし、まあいいだろう。」

 お祖父様だったらもっと完璧を求めるだろうが、取り敢えず私としてはオッケーだ。


 そうだ…、こういう微妙な魔力調節が必要なものなら、ラグも使うかな…?





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