騎士団遠征(魔物狩)
「第三小隊は左右に展開!、第二小隊は奴らの後ろへ回れ!」
ガーグの大群が押し寄せる足音が、地鳴りとなって伝わってくる。
素早く展開した小隊の、真ん中に陣取り、魔力を練り上げる。
「団長!数およそ200です!」
頭上から偵察隊の隊士が報告をくれる。
多いな。ガーグの群れは通常、5~10体程度だから、明らかにこれは異常だ。
だが200体ほどならば、第二小隊が回り込めば取り囲むことができそうだ。
うなり声が聞こえ始めた。かなり近い。
「よし、数は多くとも、たかが犬っころの集まりだ!一匹も打ち漏らすなよ!」
『おう!』
各自が攻撃態勢をとり、了解の声が挙がる。
木立の隙間からガーグが目視できるようになってきた。葉が茂っているため視界は良くない。
ピイー、という合図の音がした。第二小隊が回り込んだ合図だ。
「各員。攻撃開始!」
大声で指示を送る。いい終わるや否や、真っ先に炎を放つ。
続くように、そこら中で爆音があがる。
ドオンッ
ドッカーン
バキバキイッ
グワァァァァァ
ふむ、森林破壊がひどいな…、やり過ぎて、ここの領主にばれると厄介だ。
「おい、お前ら!もっとよく狙え!無駄撃ちするんじゃねぇ!森が剥げるだろうが!」
「お言葉ですが、団長の最初の攻撃が一番ひどいです!」
「自分でできないことを、部下に命令するのは良くないと思います!」
「自分は、炎が燃え広がらない様に水をかけて回っているだけです!」
「自分は、水に消されない様に大きめに火を放っているだけです!」
口々に反論される。くそう、俺のせいになってしまった。またヨシュアに切れられる。
「うるせえ!俺はいいんだよ。一端攻撃やめ!」
攻撃の手を休ませ、あたりを確認する。土ぼこりや水蒸気でまともに見えないので、風魔法を使う奴に視界を良くしてもらう。
視界が開けると、木々がなぎ倒され、ガーグがそこら中で息絶えているのが見えた。
全滅させてしまったか?いや…まだいる気配がする。
「隊形を維持しつつ前進、陣形を狭めろ!残っているものをあぶり出すぞ。」
ゆっくり前進し、囲いを狭めていく。
「あの大岩の影に数頭潜んでいるようです!」
別方向から歩を進める隊士が警戒を呼びかける。
「誰か岩だけ崩せる奴いるか?」
周りを見回すと、手をあげる奴がいた。
「俺、土魔法で多分崩せます。直接触らなきゃいけませんが」
「じゃあ二人ほど連れてやって来い。出来るだけ殺さないようにしてくれ。」
「分かりました」
すぐさま3人の隊士が選抜され、岩に近づく。ガーグのうなり声が聞こえるが、飛び出てはこないようだ。
隊士が岩に手をふれ、魔法を発動させると、土くれの山に変化した。
その瞬間、一体のガーグが飛び出してきた。
「バウッ」
「大きい!」
護衛役の隊士がすぐさま火魔法を放つと、弾き飛ばされたがすぐに立ち上がり、再び飛びかかろうとする。
「ほとんどダメージがないようだな…。それに大きい」
「あれが、群れの頭でしょうか?」
「おそらくそうだろう。…生け捕りにしたいな。研究塔の連中に見せれば、何か分かるかもしれない」
「そうですね、群れの他のガーグは普通のものとあまり変わりありませんが、あいつだけ異様に強いです。あの個体が群れを統率していた可能性が高いでしょう。」
おそらくそのとおりだろう。頷いて賛同する。
…しかし生け捕りか。
「何か良い案はあるか?」
檻などは持ってきていない。
「とりあえず気絶させて、手足を棒に縛って担いで帰れば良いんじゃないですか?4人もいれば運べるでしょう。」
皆嫌がりそうだな。それよりもまず、
「上手いこと気絶させられるのか?」
『…』
うん、難しいよな。あれはかなり頑丈そうだから、手加減したら反撃されるし、やりすぎたら死んじまう。
「土で埋めて動きを止めましょうか?」
一人が提案するが、
「いや窒息するだろ。」
すぐ他のやつに却下される。
うーん、少し休憩して、じっくり考えるか。
「よし、とりあえず飛び出てこれないくらいの高さの塀で囲っておいてくれ。」
余力のありそうな土魔法専門の奴らに頼んで、他の隊士を一端集合させることにした。
「皆、一端休憩だ。というか今日はここで野営するぞ」
ちょっと落ち着いて、皆で考えよう。大量のガーグの死骸も片付けなくてはならんし。
休憩の準備をする隊士を眺めつつ、水筒から水を飲む。
冷たい水が心地よかった。




