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彼女はファザコンをこじらせている  作者: 花摘
王妃編
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森にマイホームが欲しい

 

「森に家が欲しいよね。」

 ポツリとつぶやいた。最近独り言が良く出るが、仕方ない。こうやって口にしないと言葉を忘れてしまいそうになる。

 母国語である帝国語は、頭の中に住んでいる小さなお祖父様が話しているので、そんなに心配いらないが、シンドリア王国語はまずい。ラグとの短い会話の中でも単語が時々出てこない。文法はほとんど一緒だから助かっているけど。

 ラグにつられて、かなり気さくな口調になってしまっている気がする。

「…を沢山作るには森でやりたいけど、獣や虫の心配を減らすための家がほしいわね」

 ほら『燻製』の単語が出てこない。

 今の私の体力と材料で作れる家は…掘っ立て小屋くらいね。いや、釘を数本しか用意できないとなると…、やはり古代に立ち返るしかないな。よし、竪穴式住居を作ろう。

 安心安全で楽しいツリーハウスが作りたいが、釘も丈夫なロープもないし木材を持ち上げる力もない。寝ている間に壊れるような家を作るのはプライドが許さん。


「地面にまずは家を建てて、獣や虫対策はなんとか工夫しよう」

 そうと決まれば、早速取り掛かる。

 建てる場所は、ラグと待合わせする場所から近い方が良いな。


 その周辺を物色する。家を作るくらいの広さは欲しいがあまり開けていても目立つから嫌だ。いざという時の隠れ家にしたいという気持ちもある。

 そう考えていると、針葉樹の木立に囲まれたいい感じの場所を発見した。

「ここなら冬でも葉が茂っているし、落ち葉だらけじゃないから地面も乾燥していい感じね」

 よしここにしよう。


 即座に頭の中で設計を組み立てる。

「ふふっ、初の『マイホーム』。頑張らないではいられないね!」

 理想とはかけ離れているけどね!


 最初の作業は穴掘りだ。おそらく今日は、これで終わるだろう。

 まず地面に手を当て、魔力を薄く広く流し、土を柔らかくする。そして担いできた木製スコップを意気揚々と取り出し、地面に突き刺す。先の方だけを鉄で覆い、裏面に風魔法を施して軽く持ち上がるようにした力作だ。柔らかくなった土は素直にスコップの上に乗ってくれたので、軽々と持ち上げ、勢い良く放り投げる。

 魔法だけの作業では、すぐに打ち止めとなってしまうので、魔法との合わせ技で長時間労働を可能にするのだ。

「ふんっ」

「はっ」

「とうっ!」

「ぜい、はあ、ふう…」

「えいっ、やあっ、ふんっ!」


 ごくごくごく。ふう…。

 …

 …くり返す。


 …これは余分な食糧がなければ、とても出来ない仕事だね。

 昨日のうちに準備しておいた、塩味が効いたスープを休憩中に口にして、そのありがたみを実感する。鍋一杯に野草と干し肉一切れで十分な食事ね…。夕飯はパンと一緒に頂こう。


「ようし、もうひと頑張り!」


「ほっ、ほっ、ほっ」

 だいぶリズムをつかめてきたわ…

「ほっ、ほっ、ほっ」

「ほっ、ほっ、ほっ」

「ほっ、へっ、ふんっ」

「ふう、ふう、ふう」

 …疲れたら一休み…

 邪魔な根っこが多いなあ…。

 風魔法で丁寧に切っては、掘り進めて行く。


 一段落したのは、やはり日が暮れる頃だった。広さは大体6畳よりは少し大きいくらい、深さは大人の腰くらい…つまり今の私の身長くらいの穴が掘れた。

 今日中に仕上げが出来るかと思ったけど、無理だったか…。この身体が小さすぎるんだい。


「さて、寝るか」

 鍋の残りとパンを平らげ、そばの木によじ登る。

 その木の上から隣の木までの間に、シーツをくくりつけて、ハンモックが今日の寝床だ。

 近頃は、外で夜を過ごすと度々獣の気配で目を覚ますことが続いていた。

 警報装置で目を覚ました時には、かなり接近を許してしまっていることが多く、肝が、ひゅうっと縮まる思いをするのだ。

 それなので、少しでも安全を…と考えて、高い位置にハンモックをあつらえてみたのだ。

 ふむ…寝心地は悪くない。でも一旦寝てしまうと身体を動かしにくいな。

 慌てて起きるとひっくり返って落ちそうだ。





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