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彼女はファザコンをこじらせている  作者: 花摘
王妃編
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干し肉作り(狩)

 

 パチパチと爆ぜる火に、長い箸で挟んだパンを近付けて少し炙ると、フワッと芳ばしい匂いが漂う。薄く切ったパンはあっという間に温まる。表面に焦げ目がついた所で、同じように炙ったチーズと、焼いたお肉を乗せ、かぶりつく。


「うまっ」

 思わず声が出るほど美味い。炭水化物バンザイ!

 ラグのくれたパンやチーズのおかげで最近は体の調子がいい。

 というか、今まで弱っていたことに初めて気がついた。すぐに疲れるのは体力がないのではなく、栄養が足りてなかったんだね…。


 ラグと別れて数日が経ったが、もらった食料は大事に大事に食べていて、ほとんど減っていない。


 …嘘です。砂糖漬けはもう残り僅かです。

 パンとチーズは凄く薄―く切ったものを1日1回食べるようにしている。チーズはそれでも早くなくなっちゃうだろうな。チーズは乗せパンは、3日に一遍ぐらいにするか…、でもこれから夏に向かって湿気も多くなるし、途中でカビたりしたら、絶対泣くから、むしろ早めに…。

 よし、2日に一切れにしよう。


 さて、今日も頑張って狩に行こう!

 身体が元気になってきたお陰で、狩りの成功率も上がっている。私の腕も上がっているに違いない。来世はマタギになろう。マタギのお父さんと二人だけで山奥に住んで、素敵なスローライフを送るのだ。むふふ。


 今日狙うのは鹿だ。マイホームよりやや離宮よりの、低い灌木が多く繁っている場所に到着した。今日狩りをしようと、辺りをつけていた場所だ。


 良かった、今日も何頭か来ている。

 この辺りの木には、この鹿たちが好きらしい苔が生えているのだ。最近発見した。鹿は今までは素早くて逃げられることが多かったが、居る場所がわかっているならば、こちらが有利だ。

 罠を仕掛けておいて、そこに追い立てて捕まえる予定である。


 しめしめ、よし行くぞ!

 バッっと鹿の前に飛び出し、

「ガオーッ」

 と言ってみた。ちょっと恥ずかしかった。しかも私が飛び出した瞬間に鹿は四散していて、「ガ」と言ったくらいに、すでに鹿はいなかった。かなり恥ずかしい。

 いいもん、狙い通りだもん。

 罠の方角に走っていくと、落とし穴に一匹だけ落ちていた。

 半日かけてかなり広範囲に掘ったのに、一匹だけか…。鹿の跳躍力を甘く見たかしら。普段なら一匹でも十分だが今日は別の目的があったので、ちょっとがっかりする。


「まあ、良いか。また獲りに来よう。」

 食料に余裕があると、心も余裕ができるのね。


 鹿にとどめを刺し、引っ張り上げる。その場で血抜きをしてから、

 用意していた手作り一輪車に乗せた。

 この数日間試行錯誤の結果生み出した、文明の利器だ。


 ふっふっふ。これでどんな大物も持って帰れるわ。

 ガッタンゴットンと怪しい音はしているが、担いでいくよりは遥かにスムーズに進んでいる。風魔法で製材し、土魔法で精製した釘があればこの通り。


 建築学科の授業で模型やちょっとした小屋は実技で建てたことはあったが、一輪車を作るのは初めてで、何度か失敗したが上手く行ってよかった。

 今までは、こういった道具を作ろうと、考えることすらなかったから、やっぱり切羽詰まってたんだろうな…。常に空腹で、時間も魔力も、食べること以外に使うなんてことは考えられなかったものだ。


 とはいえ、油断は出来ない。あと1ヶ月もすれば夏になる。虫を食べてしのいだあの夏が…。毛むくじゃらの◯◯◯や、プチゅっとする◯◯◯◯の食感を思い出し、身震いする。

 大丈夫、大丈夫だ。今のうちに準備すれば、例え、もうラグが来なくても、乗り切れるはず。


 離宮の近くまで鹿を、なんとか運び、解体してから塀の下の穴を通して引きずり込んんだ。

 庭に用意しておいた調理台(ただの木の板)の上にすべて乗せ、腕まくりをする。


「さて、やりますか。」

 鹿肉の塊を手に取り、よく洗ってから、薄く切っていく。鍋いっぱいになるまで切った。山盛りのお肉は迫力があるな…。

 そしてハーブとラグがくれたお塩を用意する。大量の塩を器にドキドキしながら入れて、ハーブと混ぜる。そして切ったお肉に丁寧にまぶしていく。


 そう、初めての干し肉作りだ。

 塩をたくさん貰ったので、夏を乗り切るために有効利用しようと考えたのが、これだった。

 上手くできるかな。ビーフジャーキーみたいになったら嬉しいけど、最悪ただのしょっぱい肉でも嬉しい。日持ちすればいいのだ。まだ肉は余っているが、今日は取り敢えず鍋に入る分だけ試してみよう。木で作った蓋でしっかり押さえて、室内の日陰に置く。

 …一日くらい待てば良いかな?今日は、結構涼しいけど冷やしておいたほうがいいかしら…。初体験の手探り作業だが、食材は一切無駄にするわけには行かない。

 こまめに様子を見つつ、他の作業も行う。


 入り切らなかった肉は冷凍し、箱に詰める。この箱も手作りだ。見た目はリンゴ箱のようだが、木のかみ合わせを工夫して、冷気が漏れにくいようにした。

 釘さえもっと量産できれば、他にも色々と作れるのだが、魔法に余裕がある日にようやく5本作れる程度が、今の自分の実力である。

 でも、まめに造り貯めて、いつかはツリーハウスを…なんて夢を見る余裕も最近は出てきた。


 箱に、例の鳥の骨を浮かべて作った氷を入れる。1日一回魔力を補充すれば、簡易版冷蔵庫になるということだ。冷凍庫までは行かないのが残念だよな…。蓋をした上から更に粘土をかぶせて、冷気が逃げないようにしているが、凍らせるまでは出来ない。もっと強力な素材があれば…とも思うが、強い獣には出会いたくない。今のままで頑張ろう。


 やることは沢山ある。体力と魔力の許す限り働き、尽きたら寝る。何だかとっても充実している。

 今日も暗くなる前には、疲れてきたので、さっき漬けた肉をひと切れだけ引っ張り出し、小さな火で焼いて食べる。数時間漬けただけでも結構味がしみている。パンと食べるととても美味しかった。しょっぱいくらいだ。


 ふむ、明日が楽しみだ。ベッドにそのまま倒れ込むと、日中干した布団からお日様の匂いがした。




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