騎士団遠征(出立)
「団長、予備の剣は3本ほど入れましたが、よろしいでしょうか?」
遠征の為に、俺の荷物を預かる隊士が、最終確認をしている。
「…1本減らしてくれ。今回は移動が多くなるから、出来るだけ荷物は軽くしておいてくれ。」
「了解しました!着替えと、薬、予備の装備品は、こちらにまとめてあります。携帯食料はいかがいたしますか?」
「3食分だけこっちにくれ。」
非常事態用の携帯食料を受け取り、自分の手荷物に入れる。
…忘れ物は無いか…、ああ、そう言えばこれがあったな。
小袋に入れた、一見何の変哲もない小石を、遠征用の手荷物に移す。
…やはり、見たこともない形態の魔道具だな。この大きさで、水を自在に冷やせるなど、聞いたことがない。…あまり人に知られないほうが良いだろう。
俺はまだ、あの子の存在を、どう扱うか考えあぐねていた。出会った場所や、その見た目から、正体は薄々…信じられないが…、他には考えられない事実が揃っている。関われば面倒しかないとは解っているのだが…。
あの、今にも死んでしまいそうなほど痩せ細った小さな身体と、ボサボサの髪。薄汚れた顔に、それでも生き延びる意志があふれる目を見てしまえば、どうにか助けたいと思ってしまう。
かつて、同じように、生き残るために何でも喰らい、たった独りでも生き延びようともがいていた自分には、到底、見なかったことには出来ない。
だが…
…どうにか万事纏まる方法は、ないものだろうか。
やっかいな難題に、思いを巡らせていると、
「団長、第ニ、第三小隊、出発準備完了いたしました!」
副隊長付きの補佐官が報告に来た。
「わかった、今行く。」
そう返事をして、演習場で既に隊列を組んで待つ隊士達と合流する。
「揃っているな。ではヨシュア、留守を頼んだ。」
ヨシュア・ルベール副団長に声をかけると、ここ一週間ずっと言われ続けた文句を、また繰り返される。
「なぜ団長の貴方が、たかが調査で長期の遠征に行って、私が留守番何ですか」
「諦めろ。適材適所だ。現場は俺が得意で、事務仕事はお前がやった方が早い。そして人員配置を決めるのは団長の俺だ。」
ふっ、と得意げに笑ってやると、生真面目な正確の副団長が、眉間にシワを寄せて肩を怒らせる。やたらお綺麗で整ったこの顔で怒ると、なかなかな迫力があるが、年がら年中の事なので、全く気にならない。
「私が団長になったら、絶対誰かに仕事を丸投げしてやる…!」
何を行っても無駄な状態の俺に、ヨシュアは悔しそうに歯噛みする。
「お前以外に、事務仕事が出来そうな奴がいないけどねー!」
明るい声で茶々を入れるこいつは第一隊長のルークだ。騎士団一の脳筋ながら、実力は、ヨシュアに続く3番手に挙がる。恐らく次期副団長。…つまりヨシュアは団長になっても事務仕事からは逃げられない。
そっと肩に手を置いて、「頑張れ!」と、優しく笑ってやってから、素早く馬に飛び乗る。
皆の方に向き直り、声を張り上げる。
「出立!!」




