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彼女はファザコンをこじらせている  作者: 花摘
王妃編
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ラグとおしゃべり


「…とろで、遠征って多いの?」

つい聞いてしまった。来れなくなる場合って、遠征先で何かあった場合って意味…?

「今回はそれほど危険な任務じゃない。調査が主だから、期間が終われば戻れる。…一ヶ月くらいは来れなくなるかもしれないが…」

心配したのがバレたらしい。慰めるように言われた。

「私は大丈夫よ。この食料があれば当分贅沢に生活できるもの。」

そう言って笑ってみせると、ラグは切なそうな顔をした。

「これが贅沢か…」

しまった、余計に憐れまれた。

「ええと、遠征に役立ちそうなものとかもっと作るけど、何かある?こんなに貰っては、もっと返さなくては申し訳ないよ。」

話題を変えることにする。

本当は治癒魔法の紋とかベタベタ付けてしまいたい気持ちだけれど、あんまりやり過ぎると周囲の人に怪しまれて、ラグに迷惑がかる。

「いや…この石で十分すぎるほどだ。魔道具は高いだろう。」

やんわり断られたー。

「で、でもその石は魔力が切れたらただの石です。私の魔力でしか補充出来ないので…。魔道具よりは不便だと思う…」

魔道具は、「大体その属性」であれば動かせる仕組みになっているものが多い。

その分単純な動きしかできず、大型になってしまう物が多いが、誰でも使えるのがメリットだ。

…ラグの魔力を読み取って、調整したものを作れば、ずっと使えるものが作れるが、流石に信用しすぎだろう。

それに、属性の偏りが大き過ぎると、調整も難しい。私の拙い魔力感知によると、ラグの魔力はほとんどが火の属性のようだ。


「そうか…じゃあ、使い終わった石に、また魔力を補充してもらうのが対価でいいんじゃないか?」

「それでは不公平でしょう!もう。良いよ、次までにこっちで何か考えておきます!」

「わかった、怒ること無いだろう。…ああ、そうだ、じゃあ逆に温かくなるやつがほしい。寒くなったとき用に。」

「まだ春だよ?それに火魔法は得意じゃなんじゃない?」

ラグから漏れて出てくる火の魔力の気配は、かなり強い。帝国にはそんな魔力の人はほとんどいない。触れてようやく感じ取れるくらいの人しかいなかった。


「…寒いのに弱いんだよ。あと俺の火魔法は、攻撃にしか使えない。察しの通り量が多すぎて調整ができないんだよ。水筒を温めようとしたら、多分溶かしちまう。」

「え…」

そんなにか。魔力が凄くても大変なこともあるんだな…

「じゃあ、結構不便なことが多くない?」

「ああ…身の回りの事は、かえって魔法を使わないでやることのが多いな。まあ、兵士はそんな奴らの集まりみたいなもんだから、皆で助け合っているな。」

まじか、王国の兵士超怖い。このレベルの兵士で各属性揃えられたら、小隊一つで街が消えるじゃないか。…お祖父様、ミアは平和のために頑張ります。


でも、対価品として何を作るかの、ヒントにはなりそうだ。

氷を作る鳥の骨は、きっと氷魔法が得意な人がいるから必要なさそうだな…。治癒魔法専門の人もいるかな?戦いには必須だもん、いるだろう。武器系は、ラグ自身が大量破壊兵器だから不要だろう。


うーん、と悩んでいる私を他所に、ラグは魚を焼き始めた。

うおっ良い匂いがする。

「凄い。捕まえてきたの?」

やや大きいニジマスくらいの魚だ。干物ではないから、買ってきたものじゃないのだろう。

「ああ、来る途中に、河でとってきた。火魔法を使うと簡単に取れるんだ。」

表面を焼いただけに見える魚を、渡してくれた。

「そうなの?どうやるの?」

「河を熱湯にすればプカプカ浮いてくるぞ。」

熱湯…、なるほど既に一度、湯通しされた魚さんでしたか。

「私に無理そうだな…。そもそも河で以前獣に襲われて、怖くてあまり近付かないようにしているんだけど…でもお魚美味しいね…。」

塩をたっぷり振ったお魚は、ふんわりパリパリでとても美味しい。

小魚とかなら、熱した石で同じよにできるかもしれない。前に何かで読んだな…。

でもな…前にやられたときも夏のはじめの頃だったんだよなー。ワニって南国の生き物っぽいし、夏は駄目な気がする。冬まで我慢してみるか。


「あの河にそんな凶暴な獣がいたのか?どんなのだ?」

「ええと、鱗があって、平べったくて、歯がいっぱいある大きい口がグバあって開くの。しっぽの先までは5mくらいあったよ。」

バカでっかいワニ!って言えれば楽なのに。

「うーん、コモドンかルナゲイルか?そいつは河にいたのか?」

「そう。水に入ろうと足を入れたら、水の中から突然バックンとされちゃって。」

「ルナゲイルだな、……大丈夫なのか!?」

「うん。奇跡的に千切れなかったよ。でも本当に怖かったし、倒さずに逃げたからまだ居ると思うんだよね…。」

TVでみたワニみたいに回転技とかかけられてたら足もげてただろう。


「傷は?ちゃんと処置できたのか?」

心配そうに私の足を見てくる。乙女の足は見せませんよ。

かなりガッツリ噛まれて肉をえぐられたから、歯型が残っているんだよね…

「ちょっと肉は持ってかれたけど、傷はとっくに塞がっているよ。痛みもないし。」

足をブンブンしてみせる。

「それなら良いが、獣によっては妙な病気を持っているのもいる。肌が変色したり違和感を覚えたら気をつけろ。」

ひっ、何それ怖い。

「しかし体長5mのルナゲイルか…。そんなのがいるんじゃ確かに怖いよな。ただ、あれは流れがゆっくりな浅瀬の泥の中に潜むことが多い。水が澄んでいて、底が砂利の場所を選べば大丈夫だろう。」

「そうなんだ!なるほど、ありがとう!」

「ああ。でも気をつけろよ。絶対は無い。…最近は凶暴な獣も増えているらしい。大人しそうなやつでも、お前より大きい獣には無理して近付くな。」

凶暴な獣が増えている?狂犬病的な?…ラグの遠征の調査ってその辺りのことなのかな。

「わかった、気をつける。元々弱いって知っているからそんなに無理はしないよ。食料ももらったしね。」

暫くお魚を食べながら、獣の対処方法とか、習性とかをいくつか教わった。

ルナゲイルは夕方の暗くなる頃に活発になるとか、よく似た形のコモドンは、この辺りにはあまり居ないが、陸上生物で、木に登っても追いかけて登ってきてしまうらしい。怖っ。

その他にも、これからの季節に美味しいものとかも、しっかり教わった。


……


「じゃあ、次の約束ははっきり出来ないが、一ヶ月後くらいにここに来る。」

そう言ってラグは帰る支度をする。

「もしミアと行き会えなくても、食料はあの辺の木の虚とかにおいて、動物に食われないように工夫しておくから、無理してここに留まったりしないように。」

立ち上がり、荷物を肩に掛け、私に注意をする。

きっと待ち遠しくて一ヶ月後はこの辺をウロウロしているに違いないが、心配かけないように素直に頷いてみせる。

「ラグも無理しないでね。遠征気をつけてね。」

とっても強そうだから大丈夫なんだろうけど。歩き出したラグに声を投げ掛ける。


「ああ、もらった石も試してみるよ。」

「うん、感想聞かせてね!」

最後まで名残惜しく声をかける。

「砂糖漬け食ったら歯磨けよ!」

あ、確かに忘れそう。


「うん!ありがとうね!」


後ろ向きに手がふり返され、姿が見えなくなる。




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