来てくれた
夜って言ったけど、いつかな…本当に今夜来るのかな…
暫く浅い眠りに入っていたら、獣警報装置(紐)がブルブルしたので、ハッと、飛び起きる。
ラグの姿が現れた。
「おう、良かった、遅くなって悪かったな。」
「ううん。迷わなかった?」
ホッと息をつく。
「ああ、ちょっと迷った。煙の匂いがしたんで無事見つけられたよ。」
匂いか、なるほど。
「ふう、ちょっと休憩させてくれ」
そう言ってラグは背負ってきた大きな荷物を降ろして、焚き火のそばに座り込んだ。…重そうだな…持ってきたくれた物なのかな。
「はい、お水。」
木の器に水を入れて差し出す。
「悪いな…ふう、うまい。」
一息ついたラグは、ゴソゴソと荷物を開けて、何かを差し出してきた。
わっ!良い匂いがする。大きな丸いパンだ…パンだ!
「まずはこれだな、3つほど持ってきた。硬いがその分1ヶ月近く持つ。湿気らせないように気をつけろ。」
「3つも!!凄い!」
どうしよう!パンだよ!思わずその場でちょっと千切って食べようとする…が、硬くて千切れない。ラグが見かねて千切ってくれた。そのまま棒に挿して炙ってくれる。
「これは、遠征に持っていくようなパンだから日持ちする代わりに硬いんだ。こうして炙ったりスープでふやかすと美味しくなる。」
こんがりと、さらにいい匂いになったパンの欠片をくれる。
「美味しい…」
焼いてもまだ硬かったが、久ぶりのパンはそれでも、十分い美味しかった。
「小麦も一袋持ってきた。あまり大きいと持ち運べないだろうから少しだがな。」
「ありがとう!…凄い。一年ぐらい過ごせそうだよ。」
こんなに貰っていいのだろうか。あの石ころが対価だというのが急に心配になってくる。
「いや、1年は持たねえだろ。1ヶ月くらいでちゃんと食べ切れ。…あとは、チーズと果物の砂糖漬けだ。これはあんまり持たないから早目に食べろ。」
チーズに砂糖漬け…どうしよう一気に食生活がパラダイスだ。
「ああそうだ、塩も追加で持ってきた。」
「こ、こんなに貰っても、なんにも返せないよ!」
あわあわとちょっとパニック状態になる。
「だから気にするな。ガリガリの子供が森で一人でいるのを、大人が頬っておけないってだけだ。…俺も頻繁に来れるわけじゃない。事情があれば全く来れなくなる可能性もある。渡せるときに渡しておきたいんだ。」
心配そうに言う。
どうしよう、心遣いが暖かすぎてどうしたらいいかわからない。困惑した私に、ラグは苦笑して、砂糖漬けを差し出してきた。
うん、もう甘い物ですべてがごまかせることがバレているね。仕方がない、誤魔化されてやろう!
パクリと食いついて、お礼を言う。
「ラグ、ありがとう…」
良く出来ました、と言う風に頭を撫でられた。
「あのね、あんまり役に立たないとは思うんだけど、対価になりそうなものを作ってみたの。」
きっとラグなら何でも許してくれるだろう。
「まずこれね、ハーブを乾燥させたものをいくつか混ぜて細かくしたの。お肉を焼くときに塩と一緒にふりかけたり、スープに仕上げに入れたりすると美味しいよ。」
手のひらサイズの木の筒に入れたハーブをまず渡す。前世にあった塩とハーブが一緒になった調味料のイメージで作った。
「へえ、面白いな。遠征の時に使えそうだ。」
ちょっと舐めて確認してから、嬉しそうに手荷物にしまってくれた。
「あとはこれ、水を冷たくする道具なの。」
そう言って石を差し出すが、いぶかしそうに眺めている。
うん、そうだよね。見た目ただの石だからね。
「えっと…ラグは水筒は持ってる?」
「ああ…これで良いか?」
腰から外した水筒を渡してくれる。
ちゃんとした鉄製の奴だ。しかも軽い。アルミ的な特殊な金属かもしれない。竹筒作んなくて良かったー。
コルク製の蓋を外して、石を1つぽちゃんと入れ、少し待つ。
一言断ってから、少し味見をする。うん、ちゃんと冷えている。
「はい、飲んでみて。」
ラグに水筒を戻し、飲んでもらう。
「冷たい…何でこれで冷えるんだ!?」
驚いてくれたようだ。
「うーん、ちょっと秘密。でも危険はないよ!それは絶対に保証する。この石が触れた液体が冷えるというだけ。
騎士団とかにはもっとちゃんとした設備とかはあるんだろうけど、これも手軽に使うには良いでしょう?」
「あ、ああ…。遠征の時には結構嬉しいな。特に今度、南の方の暑い地域に行くことになりそうだから…」
良かった、迷惑そうではないようだ。
「そういう事なら、これ持って行って。
今入れたのは、多分一日くらい持つと思う。この白っぽい2つはもっと持つし、この透明に近い綺麗な石3つはさらにもっと持つと思う。今度どれくらい持ったか聞かせてくれると嬉しい。」
ちゃっかり報告を求めつつ、5つの石を渡す。




