スープ
これで鍋は出来たので、カマドをつくる。鍋の下から火をかけなくちゃいけないわよね…。石を3っつほど並べてその上に鍋を置く。下に出来た隙間に炭を入れればいけるだろう。
細かく切った鹿肉を先ず入れる。水は…これくらいかな?
うーんあと何入れれば良いのかしら。
私が食べたことのあるスープや煮込みを思い起こす。野菜とか色んな味がしていたのは覚えているけど…とりあえず色々入れてみよう。
食べられそうな野草や、焼くとホクホクして美味しい、何かの球根を投入する。
それらしいハーブも大盤振舞いで入れる。仕上げに岩塩を削り入れてコトコト煮る。洗った木の棒でかき混ぜながら、ふと食べるための器がないことに気付き慌てる。
太い枝からスプーンを削り出したところで、魔力が切れた。
まあ、直接鍋から食べましょう。誰も見ていなければ、行儀が悪い、なんていわれないし!
…だめな一人暮らしの人ような言い訳をする。
フーっと冷ましてから、ズズっとすすると、ホッと身体に染み渡る感覚がした。
温かい汁物がこれ程満たされるものだと初めて知った。
味は…まあ初めてにしては…という程度ではあったが、じんわり煮込まれたお肉も、したしたに味の染みた野草も、胃に優しく吸収されていく気がする。人らしい食事というものを、何だか思い出させてくれた。
ああ、私ずっと森で暮らしていけるかも…。
いい気持ちのまま、寝ることにする。持ってきた毛布に身をくるみ、体を丸くして、木にもたれかかる体勢になり、手には獣警戒用の布を握る。
これもドレスの切れ端で、『20ルータ先に空気の膜に、動くものが触れたら、紋を刻んだ布が振動する』設定になっている。2人で考えた、三重の魔法紋だ。
本来は、盗み聞きや、部屋への侵入者を警戒するための物なんだけど、野営のときはとっても重宝している。ただし、風の幕の発動は3時間ほどしか持たないので、定期的に目を覚まさなければならない。…と言っても、3時間に一回以上は、何らかの生き物が反応知ることが多いので、自然と起こされる。
案の定、夜中に2回ほど布が震えて飛び起きた。魔法石を手に握り、警戒態勢をとるが、慌てて立ち去る音がしたので襲ってくるような獣ではなかったのだろう。
…今日のように、魔力が少なくなってしまったときは、お祖父様のくださった魔法石が頼りだ。
太陽が顔に当たるのを感じ、目を覚ます。
火を熾し直し、昨夜の残りの鍋の中身を温める。ラグと合うまであと2日ない。考えているものを作るには、離宮に戻るよりこの辺りに留まった方が、時間を有効に使えそうだ。
二日目の鍋は、昨日より味が馴染んでいて美味しい。
残りををキレイに平らげ、鍋を洗う。ついでにお湯を沸かして身体を拭く。
石鹸で洗いたいな…。今度作るやつをラグが評価してくれたら、石鹸も頼んでみようか。
その為には良いものを作らなくては。




