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彼女はファザコンをこじらせている  作者: 花摘
王妃編
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鍋と蜂蜜

 

 蜂の巣のある木が、遠くに見えるくらいの場所に、少し開けた場所があったので、そこを夜営場所に決めた。


 モモ肉を一本取り出して、焼こうとして、ふと、今日は時間もあるし、煮込み料理にしようと思いつく。


 一旦肉を脇に置き、土魔法で鍋を作る…鉄鍋が作れない…。

 針は上手く行ったからできると思ったのに。一度に放出する魔力量が足りなくて、鍋サイズのものは到底出来そうにないのだ。薄い手のひらサイズの鉄板を作っただけで、ヘロヘロだよ。

 …

ヘロヘロになってしまってから、鍋ならそこまで鉄製にこだわる事はなかったということに気づく。が後の祭りである。


 そんな訳で、原始時代に立ち返る事にする。鉄がないなら土器を作れば良いじゃない。

 …魔力ももうないので、手作業だ。


鍋を作るためにまず穴を…掘るのは面倒なので、斜面に露出している粘土を採取する。


 ゴミを取り除き、捏ねてから…整形しようけど上手く行かない。手でこねこねして鍋の形にしようとするが、深いものにしようとするとへにょんとして倒れてしまうのだ。陶芸家さんのロクロがほしい…

 分厚すぎたら火の通りが悪いしなあ…。これではフライパンになってしまう。


 駄目だ!今日はなんとしても焼き料理でなく煮込みを食べたいのだ!


 うーん、分厚くすれば何とか立つのだけど…。何か型があったら良いのにな…。


 私は、近くにある大きな岩に目をつけた。

 あの岩削って、型を作ればそれっぽくなるかもしれない!



 岩を削るには風魔法を使う。風魔法は土魔法ほど魔力を消費しないので、多分行けるだろう。蜜蜂よけの風の幕が参考になった。

 あの原理で手の周りに高速回転する風の渦を作り岩を削る。

 しかし、風だけでは、ほとんど削れなかったので、水を少し混ぜることで、可能にした。

水の割合が少し難しかった。多すぎると水の抵抗が大きいのか、削るまでは威力が出せないのだ。

 丁度良い割合を見つけたら、それからは速かった。木をやすりで削るようにスムーズに削れた。削れた岩の粉が舞い上がり、ぶへっとなったが、そのくらいは我慢する。

 …土をねっている間に、少し回復したの魔力がまた無くなった。


 ふむ、このぐらいかな?

 丁度良い窪みが出来たので、粘土をぺたっと貼り付けてパンパンと空気を抜きながら広げていく。

 形が出来たら乾燥だ。お腹も空いたし、早急に乾燥させたいが、魔力がない。


 …困った時のお祖父様!

 お祖父様の持たせてくれた魔法紋のうち、ドレスに刻んでくれた物に、乾燥用の魔法紋がある。


 ドレスが、水をかぶってしまったり雨に濡れたときに便利な紋だ。…お祖父様の中で私はどういういじめに合う想定だったのだろう…。

 ボロボロになったりして、着なくなったドレスに付いていたものは、切り取って手元に常に持っている。

 獣との戦闘にはあまり使えないが、こういう、ちょっと困ったときに使える感じの、お祖父様の細やかさがわかる魔法紋が結構好きだ。


 土にペットリと貼ると、布に触れたところからどんどん乾燥していく。均等に乾燥させるために、場所をずらしながら乾かしていると、窪みに張り付いていた粘土が縮み、剥がれた。


 やった、鍋の形の土器になった。


 乾燥をもう少しやって、カラカラに乾いたら、これをあとは高温で焼けばいい!

 焚き火のところに鍋(予定)をそっと置き、周りに薪を積み上げる。


 燃えろー燃えろーと薪を焚べまくり、大きな葉っぱで仰いで空気を送る。


 薪の隙間から鍋が鉄を熱したように真っ赤になっているのを見て、順調なようだとホッとする。

 身長より大きな炎があがり、山火事になるのではとひやひやした瞬間もあったが、幸い周囲の木とは距離があったし、風も無いので大丈夫そうだ。


 下草がジワジワと燃え広がった時は焦って土をかけて周り、どうにか消し止めた。

 水魔法が使えない時は焦るな…。今度やるときは河原でやろう…。


 火がある程度落ち着いたので、果物を食べながら一休みする。


 気が付いたら辺りは日が暮れていた。


 蜂の巣の様子を伺うと、すっかり静まり返っていたので、蜂蜜採集を先に行うことにした。


 少し休んで気力は十分。


 いざ、風幕起動!

 ふふっちょっとかっこいい。

 魔法紋の魔力が切れる前に終らせようと、作業を急ぐ。


 巣に近づき、様子を伺う。


 うん、飛んでこない。風幕の範囲に巣が入ると流石に飛び出してきたが、弾き飛ばされていく。飛ばずに巣にしがみついている蜂は一部、風幕に入ってしまったが、襲ってくる様子はない。防護ドレスも一応着ているので大丈夫だろう。


 層状になっている巣の端っこを、手袋越しにそっと確認すると、ベタベタしていたので、その辺りをえいやっと外す。


 よし取れた!

 くっっ付いてる蜂を払い落とし、そそくさと巣から距離を取る。


 すっかり熾火になった火のそばに腰を下ろし、辺りを伺うが、蜂はついてきていないようだ。


 とうとう採れた…。手袋をそっとなめてみる。


 甘いぃ〜

 うっうっと感動が込み上げてくる。頑張った…私頑張ったよ…!

 ……

 しばらくは、蜜をすくっては舐めるという行為を夢中で繰り返していた。


 焚火がほとんど熾火になり手元が見えなくなって、ようやく我に返った。

 ダメダメ我慢!少しでも長く甘味を楽しまなくては!


 断腸の思いで巣を葉っぱで包み、荷物入れに仕舞う。


 よし、魔力もだいぶ回復したし、夕食を作ろう!



 そろそろ冷めた頃合いだろうか?

 灰の中から鍋を引っ張り出して、確認する。


 うん、鍋になっている!


 灰をはたいてキレイにしてみると、表面は凸凹しているが、ひび割れもなく、きれいな半円状の鍋が出来上がっていた。中華鍋の大きいやつくらいのサイズだね。







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