服作り
離宮に戻った私は、手作りのドレスズボン姿を人に晒してしまったことに今更気づき、悶絶した。
ああ!そりゃあ怪しむよ!むしろなんで見逃してくれたの!「上等な生地をズタボロに縫い合わせたものをとことん着古している、森の奥で野宿している少女」って何もんだよ!
加えて、顔や体は、お風呂で身体は洗っているけど、石鹸が無くなって久しいので、汚れ蓄積する一方である。
ストレートのサラサラヘアーであった髪も、ボサボサと広がっている。一応帝国の社交界では皇女様として頂点張ってたのに、こんな格好をひと目に晒してしまった‥
うおお、とひとしきりベットの上で悶える…。
…
気を取り直し、天蓋についているカーテンをエイヤッと外した。
そうだ、ローブを作ろう。
被ってしまえば全部隠れるわ。
なけなしの乙女心で、ローブを作り上げていく。糸はこの際有り余っているドレスを解体して取り出した。
今までは、シーツを細く裂き、より合わせて使っていたが、どう頑張っても糸ではなく、紐だったのだ。
狩りの合間にせっせと針仕事に勤しみ、ローブを作り終えたのは、秋が終わり、冬が深まった頃であった。
ローブを作る上では、色々と新しい挑戦に取り組んだ。ローブに魔法紋を刻みまくったのである。
夏に、あまりの寝苦しさから、寝具に、『夜中ひんやり効果』という魔法紋を刻んだ経験から、暖かい、冷たいをまず刻み込みこんだ。
次に、ローブを地味に見せるもの。ローブのもとになったカーテンが金糸入りのキランキラの生地だったので、これでは獣は逃げるし、ドレスを隠す意味がない。色魔法は、土魔法を基礎に組み上げる事は教わっていたので、そこから、『茶色の地味なローブに見せる』ことに成功したところで、「もしかしたら透明にして、隠れるのに便利な透明マントにできるのでは?!という夢を思いついた。
糸をガラス質に変形して、それを柔らかくできないか…など、色々と試行錯誤を重ね、
…ある程度、透明にはなったけどローブが透けて、恥ずかしい服が丸見えになっただけだった。
そうですよね、普通にバカでも解りますわよね、うおおお、わたしの2週間かけた透明化紋!なんの役にも立たねえですわ!
自分の愚かさに、ふたたびジタバタと悶てしまった。
なんで完成するまで気づかないんだ‥
結局、枯れ草色や夏の緑色など、いくつかパターン化してそのときに応じて発動させることにした。
あとは、丈夫にする紋、水を弾く紋、軽くする紋、汚れを落とす紋、音を消す紋、等などである。常時発動していたらすぐに魔力が尽きてしまうため、必要なときだけ紋に触れ、起動させる仕様である。
付けてからしばらくは、どれがどの紋だか混乱し、わたわたしてしまったが、春になる頃にはすっかり使いこなしていた。
ローブの開発に夢中で、森であったラグのことはすっかり忘れていた。
……
いや、頑張って頭の隅に追いやっていた。気を抜くと人影を探してさ迷ってしまいそうになるのだ。
もう一回ミアって呼ばれたい。
あの優しい目で見て欲しい。
あと、ヌガー食べたい。
要するにラグとの出会いは、私の今生においては、信じられないくらい幸な時間だったのだ。
今度あったら、付いて行ってしまわない自信がない。
ラグの微笑みと、声と、ヌガーの甘さが三位一体となって襲ってくるのを、頭を振って追いやった。




