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彼女はファザコンをこじらせている  作者: 花摘
王妃編
22/250

森での暮らし 一年後

 

 グルルッ


 獣の声が聞こえた。すぐ大木を背にモップの柄を構え、臨戦態勢となる。

 唸り声と複数いる気配からして狼のようだ。

 正確には狼っぽい四足の獣。毛が短くて、ややずんぐりしているから、シルエットはハイエナに近い。


 …あんまり美味しくないんだよなぁ。


 危険な割にメリットが少ない相手だと気づき、少し落ち込む。


 余計な事を考えていると、すぐに一匹が跳躍して飛びかかってきた。

 慌てて魔法紋を発動させ、柄の先の方にトゲトゲのついたものに変形させ、振り回した。

 名付けて鬼の棍棒バージョン!


 キャウンッ

 という声をあげて狼が転がる。なんとかあたったようだ。

 狼達がが怯んでいるうちに、背後の木に駆け上る。


 太い枝に腰を落ち着け、見下ろすと、狼が木に飛びついてガリガリしている。

 そこで柄の先を狼に向け、別の魔法紋を発動させる。

 すると針がピュッと飛び出し狼の鼻先に当たる。

 キャンッという声を聞きながら、次々と他の狼に標準を定め当てていく。


 便利だけど殺傷力がないのよね、この武器は。

 もうちょっと一発あたりの発射速度をあげ、針も大きくできないものかと考える。


 狼には傷を追わせて追払えたが、逃げられては、食料にならない。運良く喉元に刺さり倒れた一頭だけが今回の成果だ。こいつ等は、集団で襲って来るから、追い払うだけでも危険度が高いのに、美味しくない。襲われ損が大きい奴らである。

 しばらく木の上で呼吸を落ち着かせ、魔法紋にも魔力の補充を忘れずに行う。

 数回発動するだけで魔力が切れてしまう紋もあるので、こうしてまめに補充してかねば命取りになる。


 あたりに獣の気配がないことを確認して、木から降りて解体を始める。


 もう手慣れたものだ。血抜きのために木にぶら下げるのも、腕力がついたので、自分より大きな狼でもロープでくくれば出来る。内臓の位置も把握して捌けるため、もう臭い肉を食べることもない。糞の詰まった辺りを切ると、めちゃくちゃ臭くなるのだ…。



 ここまで生き延びるのは、色々大変だった。

 幸運と、お祖父様の防御用魔法紋が無ければとっくに死んでいた。完全に攻撃は防げないが、致命傷にならずに済んでいる。


 最初の狩りが秋の頃だったのだが、すぐ冬になった。寒くて焚き火をしようとしたら枯れ草に燃え移り、パニックになり、水魔法を力の限り放ったら魔力切れになり、倒れて動けなくなったところに、くまさんがやって来た。時は本当に死ぬかと思った。ただのくまではない。クリーム色のくまだ。一瞬北極圏に来たかと思ったよ。


 死んだふりが通じなかった。…お父さんは嘘つきだった。


 ガブッとやられそうになったところでモップの柄を噛ませてトゲトゲを発動したら、うまく喉に刺さってくれた。


 冬は帝国と違い、雪が降らないため狩にもそれほど困らなかったが、植物性の栄養が足りず獣の血を飲んで補った。身体が塩気を求めていたせいか、そこまで不味いとは感じなかった。ハーブたっぷりの血ソーセージが食べたい。


 春は、夢中で葉っぱをむしって食べた。春の柔らかそうな新芽なら、もはや何でもイケる気がして…。

 実際、ほとんどの草は、大して毒があるわけでもなく、只々不味いだけなのだ。

 …治癒魔法があるから出来る芸当だからね、良い子は真似していけません!

 その無謀な暴食により、ハーブも何種類か覚えられたのは、思わぬ幸運だ。


 困ったのは案外、夏だった。日中は暑いため、獣が活動していないのだ。水場にはいるかと思い、歩き回り、川を発見したが喜んで足を突っ込んだ途端ワニ(仮)に襲われた‥

 いやぁ、久しぶりに叫んだね。パニック映画の女優並みに悲鳴を上げて、引きずり込まれないように手当たり次第物を投げて、武器で殴って。


 何とか隙を突いて、足を引き抜いて逃げ出したのだが、…噛みつかれた足がめっちゃグロかったぜ…。

 グッチャングッチャンで、ほ、骨が見えているんじゃないかと…いや、私は見てない!目を瞑って、力の限り治癒魔法を使ったから!

 私の魔力では、とても直ぐには直せなくて、何日も痛みに呻きながら、少しずつ修復していった。

 一ヶ月くらいは片足生活していて、痛みは最近ようやく消えた。見た目も…ほとんどの戻っているが、まだ歯型はしっかりある。継続してかけ続けているが、これは跡になりそうだな…。

 お祖父様ごめんなさい。


 …お祖父様に謝る事が多すぎて、春くらいから、ちっちゃいお祖父様の幻が、私が何かやらかす度に出現する様になった。

 大抵、眉をしかめて鼻でフンっとやって消える。


 寂しすぎてオカシくなったわけではないよ?自分を戒める為ってやつです。


 いや…オカシくなっているかも知れない。一年以上、本当に一人がこんなに辛いとは思わなかった…。





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