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ヒトに恋した怪物たちへ  作者: キョウさん。
古き世界のハガネの乙女
14/17

六話~下水ネズミと仄暗い水~

(´・ω・`)11日経ってしまった



「待て、待て待て待て、待てって待て、待って」

「わぅ」

「メンタルコンディションが低い、深呼吸を」

「ヒッヒッフー、じゃねえ!!なんでお前らがあたしの班に来てんだよ!ちっこい犬耳はともかく赤いのは治療室に行くハズだろ!こっちは駆除班だぞ駆除班!冒険者小隊の付き添い!下水掃除!掃き溜め!汚れ仕事!」

「シャル、そこまで言われると僕達が傷つくよ……」


 ひとばん越して朝おきて、わたしはマザーさんからシャルさんと一緒に働くようにいわれた。なんでもわたしは力持ちだし、でもマザーさんから言われた他のお仕事をほとんど理解できなかったからとりあえず”げんばをみて”ってことらしい。


 メディちゃんには”げんばにおしつけた”って言われた、わぅわぅ。


 メディちゃんはほんとはシスターのお医者さん、治療師さん達と働く予定で今日はそのお勉強をする予定だったんだけど、メディちゃんが言うにはおいてあった本をあっというまに暗記しちゃったしシスターさんよりも腕がいいってことで、午前のうちにやることを全部終わらせちゃったからこっちに来たらしい。

 

「極めて古い方式だったケド、改良されてた点もあった」

「でもメディちゃんいいの?お仕事おわったならお部屋にいても」

「レラが実戦に出るなら観察すればわかることがあるかもしれない、それにメディックは必要」

「よくわかんねーけど、まあ足手まといにならないようについてこいよ」


 シャルさんはぶっきらぼうに言い捨てて、抜き身にしてるちいさなナイフをくるくる回している、とっても器用だなーって思いながらみてるとその、”ぼーけんしゃしょーたい”の人たちが挨拶してきた、革鎧を胸にあてたシャルさんのほかに三人いて、うち一人はシスターさんだった。

 羽根の生えた十字架をもってて、いかにも戦うヒト!って感じのほかと違ってシスターさんが着る修道服を着ているからこの中だと逆に目立つんだ。


 三人がちょっと目を合わせあったあと、左から順に紹介しようってことになったのかな、一番左にいた、茶色い卵のカラをかぶったみたいな髪型の男のヒトから名前を言ってくれた。


「僕はカチーノだ、錬金術師をしている……まあ、錬金術師の研究は懐事情が厳しくなるものがあってね、資金繰りのために冒険者ギルドに入会してるってことさ、普段はギルドの工房で薬を作って卸している。熱、とりわけ炎に関する魔法が得意だからネズミを焼き払うのは任せてくれ、犬耳のお嬢ちゃん」

「狼わぅわぅ…」

「はっは!こんなに可愛い狼ならば寝首を掻かれることを心配しなくて済みますなあ!」


 シャルさんに前言われたのと同じように、また犬よばわりされたのに耳をぺたんとさせているとカチーノさんの隣にいた、すごーく大きな男のヒトに大きな声でもっとひどいことを言われる。なにをなにを、そっちなんか頭になんもないじゃない!こういうヒトどういうか教えてもらったよ!はげって言うんだって!このハゲー!


 おじいちゃん、ごめんなさい。


「レラをいじめないで」

「いやはや失敬、拙はノタル、ノタル・バルトロ。いうなれば重戦士といったところでありましょうか、力自慢だけが取り柄でまあ、ここまで歳をとってしまったしがない戦鎚使いでありますとも!逃げの足には自信がないですが心配ご無用、皆より早く逃げるなどということはありませんて」

「おっきーぃ!ハンマーおっきい!もってみてもいい!?」

「身の丈七尺三寸とは拙のこと!おやおや狼娘のお嬢さん、これは土嚢ふたつほどの重さが」

「おもったよりも持ちやすいすごい!!」

「なんと軽々」


 ノタルさんが笑いながらもたせてくれたハンマーをもって、軽く素振りをしてみる。


 わたしのリュックよりは軽いけどたしかに重いかも?でもすっごく持ちやすくてたしかに、これを振り回すとすごい強いだろなーっておもった。でも持ち手がちょっと太いかなあ、太いからあっ、うっかり手を滑らして落としちゃう、重たい頭の方がぐるっと回って先に地面に落ちたハンマーが、にぶい音を立てて地面の土にめりこんじゃった。


「ごめんなさい、今抜きますっ!」

「ああいや大丈夫、万事問題ないであるよおおかみ娘殿……拙の自慢が、拙の自慢の力が…」

「……君すごいな、僕だって持てないのに」

「ちからもちってマザーさんにも言われました!」


 えっへんぶいぶい、はやさとぱわーが取り柄です、あたまはわるい。

 でもハンマー落としちゃったのがだめだったのかな、ノタルさんが縮こまってぶつぶつ言い出しちゃった。ごめんなさい、ぱんぱんって土をスカートで落として、どこにも傷がないよねって確認してから返してあげる。


 あとでもういちどあやまっておこう。


「くっちゃべってるのもいいけどよ、日が暮れるまでやってたらあたしは抜けるからなー。とっとと仕事終わらせて風呂入ってそのへんぶらつきに行きてーんだからよ、たかがドブネズミ駆除にんな時間かけられっかよ、さあ行くぞおら!ついてこないならあたしだけでも行くぞっ」

「ま、まってくださいよぉ~~~!ジョア、ジョアを忘れるなんてひどいですよぅ。皆さんにどう自己紹介するかずーーっと頭の中で考えてたんですよぉ……!」

「泣き虫ジョアンナがいたか、じゃあ1分」

「そんなあ~~!」


 ジョアンナさん、でいいのかな。黒髪おかっぱで丸めがね、見るからにすごーくシスターさんで戦うって格好じゃないそんなヒトは、シャルさんに言われると涙目でああでもない、こうでもない、って言い出しちゃう。

 わかる、わかるよわたしも言葉をいっぱい浴びせられると頭パンクしちゃうもん、パンクってなんだろう。パンっぽいしおいしいんだろうな、やわらかいパンより硬いのが好きですわぅわぅ、でもお肉はもっとすきです。


「ジョ、ジョアンナ・カルリートスですっ、長ければジョアとお呼びくださいおふた方…!教会の回復術師でときおり駆除班に送られております…っ、特技は毒消しとセーターの手編み、趣味は本のシワを引き伸ばすこととあとえーっとえーっと身長は142でえっとあとは」

「はい終わりー!十分十分!さぁとっとと行くぞ下水道!鼻栓は持ってきたよな!」

「そんなー!あんまりですよぅ……!」

「お二人は本当に仲がよいようですなあ!拙の旧友は既に亡きもので羨ましい!」

「違いますし話が重いですよぅ…っ!」


 あわわあわわ、とたんにさわがしくなった。こういうときはお耳をぺたんとすると気持ちちょっと音がちいさくなる、気持ちだから気持ちなのかもしれないけど、おじいちゃんは気の持ちようが大事なんだっていつも言ってた。

 だからきっとだいじょうぶなのだ、なんだよね?シスター服の上に雑ぅーって感じに皮の胸当てをつけたシャルさんが先導して、そのうしろをノタルさん、そのまた後ろをジョアンナさんを慰めながらカチーノさんがついていく。


 わわ、せんとーかいしだ!

 ところでメディちゃん、下水道ーっていうのはつまり。


「レラは狼」

「つまり」

「鼻が曲がる」

「きゅぅ……」


 ねえねえメディちゃん、帰ってもいいかな?

 だめ?きゅう。



◆◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



 ―――この世界の人々の多くは、旧世界の恩恵に預かり生きている。


 おそらく数千年前、”現代”より遥かに進んでいたらしい技術、魔法を誇った旧世界はその残滓を、朽ち果てた廃墟を残して消え去っていた。彼らが滅びた理由はいまなお、物語や聖書の中でしか語られない。

 行き場をなくした者達が地上に点在する旧世界の廃墟で雨風を凌ぐようになり、それがやがて街となったり、あるいは誰もいまだかつて立ち入ったことのない遺跡の奥深くから古代の遺産を掘り起こして遊んで暮らす冒険者達がいたり。それらの存在は、かつてこの世界に冒険者という職業が生まれた理由にもなっている。


未知を探求し、深淵に挑み、財を勝ち取る、そこに介在するものが金銭欲か探査欲求か、はたまた純粋な好奇心かなどはそれぞれのヒトによって異なるだろう。だが今、そのはずだった冒険者というものは所謂”何でも屋”に成り下がっていた。


「ってーわけで、こいつらは何でも屋、仕事、あたしらは公共事業、命張るのはこいつらで十分だから後ろついてくりゃいいよお前らは。あ、泣き虫のジョアは泣くなよな、ネズミが集まってきたら面倒臭いからな」

「そんなにいつも泣いてるみたいな言い方しないでくださいよぉ~!!カチーノさんシャルさんが~~!!」

「まあまあシャルはいつもこうだから……ああ、一番前に出てくれるのはシャルとノタルだから、君たちは僕達の後ろをついてきておくれ、列で言うなら三列目。さっきシャルが言ってた通り、ここの都もかつては旧世界の……たぶん街、だったんだと思う、近所にも大きな廃墟があるしね」

「そう!その通りでありまして、このふかーく広がる下水道はかつてそれらの造りしものであったと言われておりまする。拙は少しばかり歴史に造詣がありましてな……以前仕事で立ち入った時に感じたのですが、あの大きな廃墟はかつて、旧世界人の闘技場であったのではないかと、中央の広場といいぐるりと囲む窓といい」

「……あれは病院」


 言われれば納得しそうな説得力のある勢いだったが、真相を知るメディがぼそりと言う。さちか不幸かノタルの耳に入らなかったので、説明癖のあるメディは説明をねじ込もうとしたが直前、レラに止められた。


「メディちゃん、あんまり昔のこと言うとわたし達のことバレちゃうから…!」

「……ごめんレラ、メディカルユニットだった頃の癖でつい…ところですごい顔してるけど」

「にほいがつらくてあわわわ」

「……音波麻酔かけとく」


「おふた方!遅れるとシャル殿がひねくれますぞぉ!!下水道は暗いので迷わないようお気をつけくだされ!!」

「あっ、はい!メディちゃんおくれないで!すごいにおいがない!快適!」

「止めたのはレラ……」


 入ったのはいつだったか、一行はもう入り口からの光も届かなくなったほど下水道を進み、カンテラの灯りだけを頼りに進む。先頭を務めているのは最も頑丈そうで力強いと思えるノタルではなく軽装のシャルだ、実際のところレラの方が余程頑丈で力も上なのだが、なんでもっとも攻撃に弱そうなシャルが先頭を行くのかと疑問に思ってレラは彼女に質問してみた。


「下水道でネズミじゃなく犬に足止めされるとはよ?」

「狼わぅわぅ」

「知ってる知ってる、まあ普通に考えてみろ、この脳筋に罠を見破ったり敵を探知できると思うかよ?」

「できない!」

「そういうこった、重戦士が前行って不意打ち食らったり落とし穴落ちたらもう撤退以外ねえんだ、だからほら昨日言っただろ?あたし隠匿系の魔法使えるって、探知と気配遮断ってとこだな今は。それで一番最初に敵をめっけて、スピード活かして先手をかけたらあとはデカブツとひょろ長達に任せるって寸法さ」

「拙、もしかして馬鹿にされておる?」

「僕は痩せ型だけど、ひょろ長って……」


 なるほどなるほど、能力は同じだった狼時代の狩りとは違い人間の冒険者という人種はこのように個々人役割を分岐させて狩りをするのだ、実に理にかなっているとレラは目を光らせる。自身が曇っていたのに後ろ髪を引かれているのかその目を受けたシャルは、苦笑いをして目をそらすと先へと進み始めた。


「……お前ら、仕事だ」


 シャルが手で後続を制し、その場で立ち止まる。

 ほんの十数メートルほどの曲がり角の先にいるのだと合図すると、ゆっくりと足音を立てないよう戻ってきた。音を消す魔法、というものもあるのかとレラは魔法の万能さに耳をぱたぱたとさせた。


「ようやくかだね、数は?」

「10は越えてる、あたし一人じゃ無理だしノタル一人でも傷だらけだ。カチーノ、お前が先に燃やして援護しろ、泣き虫ジョアは後ろに下がって呪文を温存しとけ、傷だらけになって黒死病になったらたまらないからな……犬耳と赤いのは陰に隠れて見てろ」

「了解了解、じゃあノタル、僕が決めたら頼むよ」

「私だけまた泣き虫よばわり~…」

「ジョアンナ殿は毒消しの呪文をお持ちですからな、怪我をされては困るゆえ拙らにおまかせを」

「の、ノタルさんが言うなら…」


 手慣れた冒険者同士の会話だ、とレラは思いながら彼らを見る。

 森と村を出てからははじめてのモンスターとの会敵だ、彼女自身もモンスターというくくりで見るならばそうなるが、さすがに狼とネズミでは種族が違う、彼らを狩ることにためらいはない。むしろ狩る側だったので、ヒトによる狩りがどういったものか、興味津々でカチーノ達のうしろをそろりそろりと音を立てずについていった。


 元が狼なので、音を立てない歩行は得意中の得意なのだ。


 気配や音を遮断する魔法をシャルが使っているのだろう、だがその共有には対象に触れることが必須のようで、シャルはカチーノの首を手で引っ掴んでいた。実際のところ、手をつなぐのが気恥ずかしいので首根っこを引っ掴んでいる、シャルのほんのりした乙女心のようなものであった。


「いつもとはいえ、これは…」

「構わねえ撃て撃て!」

「はいはい、”盛る炎のたいまつよ、弾けて我が敵を討て”! ―――”ファイアボール”」


 カチーノが詠唱を行い、それに従い火球が火急大急ぎで大きくなっていく。

 やがて蹴鞠程度には大きくなっただろうか、そこで成長がとまり、彼が射線を向けると同時矢の如し速度で疾走したファイアボールはその道中を明るく照らすとやがて、ネズミ ―――大人の膝ほどもある体高をしたそれらの一匹に炸裂し、周囲を巻き込んで爆発した。


 とはいえ、巻き込めたのは3匹がいいところだっただろうか。それでも先制攻撃は古来、戦闘において大きなアドバンテージになる、カチーノが壁に背をついて狭い道を開くと、後ろからナイフを両手に逆手持ちしたシャルと遅れてノタルが殺到するのだ。


「よくやったカチーノ!あとで天使湯おごってやる!」

「飲酒は禁忌だろシャル?」

「天使様の残り湯だからいいんーだよっ!!」

「はっはっは!では拙も預かりましょうか!ぬぅあん!」


 それでも残るは10匹、膝ほどの体高のある巨大ネズミが足をばたばたとさせて向かってくるというのは恐怖だろう。だが恐るるでない、シャルは飛び、宙返りざまに二匹の背をナイフで切り裂くと続けて、壁を蹴って大きく飛んだ。カチーノのファイアボールがまだ地面を焼いていたのだ、退路を塞ぐことが目的で撃たれた火の壁を盾にして、シャルは投げナイフで下水ネズミを追い打ちする。


 後ろからは仲間の悲鳴、うっかり滑るは群れの流血。

 なら逃げるのは反対側、さあ逃げろ逃げろ背中は大やけどだ。だがそうは問屋がおろさなかろう、彼らの前に巨人が立ちはだかる。


「行き止まりですな!拙の稼ぎになるとよかろう!」

「お、おっきぃ!」

「……巨大すぎるネズミ……進化した生き物…?」


 レラはあらためて背から見たノタル、そしてネズミの大きさ双方に驚いて口に手を当てる。

 故郷の森にいたネズミはもっとこう、手のひらに乗るくらいのものだった。食糧になるほど肉付きのいいものではなかったが、まあ狩りの練習として小さい頃はよく狩っていたなあと思い出しつつ、それらがノタルのハンマーによって薙ぎ払われていくさまを観察していたのだった。


「ひとつ!ふたつ!みっつ!よっつ! …ああっ、シャル殿危ない!こっちは拙に任せ…」

「ばっきゃろーっ!一匹逃げてんぞ後ろ見ろ後ろーっ!!」

「あややこれは失敗!!お三方回避を!!」

「ひゃあっ!来ないでくださいっ!」


 その矢先、下水ネズミの一匹がノタルの手を逃れて後方に逃げる。

 向かう先はレラたちのいる曲がり角だ、もはやなりふり構うまい、下水に落ちて溺れるよりは突っ切る道を選ぶのだ。


 だが―――


「わたしがっ!」


 レラがその前に立ちふさがる。

 されど徒手空拳で防具も身に着けていないレラに警戒すべきとこはなかろう。


 しかし刹那、ネズミは全身の毛を逆立てて足を止めるのだ。


 なるほど確かに、ネズミは第六感が非常に優れた生き物だという。そしてレラは腐っても狼、かつてレラの群れの狼がその存在に仲間の気配を感じたように、レラの身体から立ち上るのは狼のそれだ、彼女の背には今、ネズミを睨みつける白き狼が大口開けて立ちふさがっているのだ。進むも地獄、戻るも地獄なら止まるしかないだろう、とりあえず今が幸せならそれでいい。


 だがその思考の先は、もうこの先になかった。


「どっせい!」


 ノタルのハンマーが下水ネズミを打ち付ける。

 まるでピザ生地でもこねるようにぺしゃんこになったネズミからは血が吹き出し、足下を濡らす。お客さんこれは食べられないよ、見たくもないよ、そんな姿形になってしまったがあいにくと、ここにいるのは元狼に医療ユニット、冒険者、血みどろには慣れた者達。


 ひとまずの戦闘が、終了した。


「このぶんなら、今日を終えればとりあえず三日分の飯くらいにはなるな…繁殖期って噂は本当だったんだ」

「拙らは運がいい!ネズミ駆除の仕事は追いに追われて割に合わないことも多いですからのお!ときにジョアンナ殿、ひっかき傷がひとつできたので毒消しを頼めますかの……いやはやふがいない」

「は、はい…!”天使の祝福よ、その血を清き真水に” ……”アンチベノム”!」

「おお、身体が癒やされますのぉ…」


 ネズミのしっぽを切って集めるシャル達をよそに発動したジョアンナの呪文と同時、ノタルの傷口から瘴気のようなものがたびたび出ていき、やがて空気に還る。非常にわかりやすい魔法だな、とレラが思う反面、メディは目を平たくしてその様子を見ていた。


「……透析のようなもの?」

「トーセキ、ですか?わ、私はちょっと知らないです…」

「大丈夫、あと下水にネズミの死体を放り込むのは感心しない。病気を媒介する危険がある」

「いいんだよいいんだよ、なんでか知らねーけどずっと昔からこうらしいし、そうなったってコトも聞いたことねーし……それにこの下水、どこにつながってるかだーれも知らないんだってよ。なんかわかんねーけど、旧世界のすっげーお宝があるんじゃねーのって噂されてて奥に行った奴らも結構いたんだってさ」


 そういえばここは旧世界、自分の生きていた頃の遺跡なんだとメディは思い出し、されどいくらなんでも一介の医療ユニットが地下下水施設の見取り図なんてものを登録されているわけがないことにためいきをつく。そもそもこんなところに来る可能性なんて考えたこともなかった、考えられるようになったのは最近のことなのだが。


 下水を流れていく、しっぽを切られたネズミの死体たちを眺めながら、不潔さに顔をしかめる。本当にここは臭い、帰ったら水浴びをしよう、この身体になってからというもの臭いというものは重要だ、睡眠を阻害する要因にもなる。そういったものを好む精神的嗜好があった患者を担当したこともあるが、自分はああいう手合いには生まれ変わらなかったらしい。


 ……そういえば、とメディは質問に続ける。


「……奥に行ったヒトたちは、どうなったの?」

「あー、知らねーのか?」

「知らない」

「率直なやっちゃなぁ……帰って来なかったんだよ、ココのある程度深いとこ以下は”深層”って言われててよ、そっから先のことなんか誰もわかっちゃいねえ。だから今日はそれより前の領域でひたすらネズミ掃除だ、わかったか?」


「……わかった、とりあえず電波マッピングはできたから、この階層のデータを表示するね」


 ほら、とメディがバイザーを下ろし、ホログラム化したマップを表示する。

 電波の届く範囲までなら地図を描けるのだろう、一行はメディの持つその技術に驚嘆し、レラはまたあわわあわわとあわてだした。


 だが今更後の祭りよ、この”優れた魔法”は行き先を大いに助けるだろう。

 一行は、火の消えた地面を踏み鳴らすと奥へと進んでいった。








(´・ω・`)力だ!力をよこせ!

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