番外編:夢のダンジョン(4)
「魔王の角カツカレー」を虚無の表情で完食した僕の前に、
ミナさんがキラキラした笑顔で一日パスポートを突き出した。
「さあ、休憩はおしまいです! 一日パスポートを買ったんですから、
閉園までアトラクションに乗りまくって、元を取らないと損ですよ!」
「乗り物!? ……嫌な予感しかしないんだけど、
このダンジョンの奥に、一体何が走ってるっていうのさ!」
案内されたのは、真っ暗な穴の前にレールが敷かれた場所だった。
そこには、トロッコを派手にデコレーションしたような乗り物が、
等間隔でカタカタと音を立てて並んでいる。
「ハヤトさん、あれが一番人気の『トロッコ・コースター』です!
途中でゴーストの群れが襲ってきますけど、魔法の光で
自動的に撃退してくれるので、迫力満点なんですよ!」
「ただのホラーアトラクションじゃないか! 魔法の光で撃退?
冒険者が必死に呪文を唱えて切り抜けるあの緊張感は!?
っていうか、その安全バーは何!? 死ぬ気でしがみつく
ロマンを、ガッチリ固定された鉄パイプで奪わないでよ!」
「そんなこと言わずに、次はあっちの『ワイバーン・クルーズ』です。
巨大な吹き抜けを利用した、屋内型のアトラクションなんですよ。
ほら、天井に魔導具で『偽物の空』まで映し出して凝ってるでしょ?」
見上げると、岩の天井に映し出された不自然に青い空を背景に、
巨大なワイバーンが背中にカゴを括り付け、能天気なBGMに
合わせて、決まったコースを周回していた。
「……あのワイバーン、完全に『業務』として飛んでるよね?
空の覇者が、地下の閉鎖空間で定時運行に励んじゃダメでしょ!
っていうかミナさん、『空中浮遊』って書いてあるけど、
あれどう見ても『観光遊覧』にしか見えないんだけど!」
「ふふ、そんなにツッコんでたら喉が枯れちゃいますよ。
ほら、あっちの宝箱を模したメリーゴーランドも乗りましょう!
中の宝物が回るたびにキラキラして、とっても綺麗なんです!」
「宝箱は! 回るもんじゃなくて! 命懸けで開けるもんなの!
回ってどうするのさ! 目が回るだけで中身は手に入らないし、
なにより、あの回っているミミックの表情が仕事に徹しすぎだよ!」
ミナさんに腕を引かれ、僕は一日パスポートの元を取るという名目で、
ロマンの欠片もないダンジョンの深部へと強制連行された。
ツッコミが追いつかない。……いや、僕の情緒が追いつかない。




