番外編:夢のダンジョン(3)
ゲートをくぐると、そこには松明の火に照らされた不気味な回廊――
ではなく、魔導ランプで煌々と照らされた、ピカピカの舗装路があった。
「ハヤトさん、見てください! あっちにスライムのふれあい
コーナーがありますよ。触るとぷるぷるしてて可愛いんです!」
「ふれあい!? スライムって、酸で溶かしてくる魔物だよね?
なんで子供たちが笑顔でベタベタ触ってるの!? しかも
あの子、スライムを座布団にして座ってない!? 尊厳は!?」
「ふふ、ここの魔物はみんな牙を抜いて訓練されてますから。
あ、次は『勇者体験・スケルトン射的』に行きましょう!」
案内された先では、やる気のない骸骨が的を持って立っていた。
客が弓を射るたびに、スケルトンは「あぁー、やられたー」と
棒読みの看板を掲げて倒れ、またすぐに立ち上がっている。
「シュールすぎるよ! あのスケルトン、時給いくらで雇われてるの?
冒険の厳しさとか、生と死の駆け引きとか、どこに行ったのさ!」
「あら、そんなに興奮しなくても。ほら、宝箱ですよ!」
通路の脇に、金銀財宝が溢れんばかりの宝箱が置いてあった。
僕が恐る恐る近寄ると、ミナさんは慣れた手つきで蓋を開ける。
中から出てきたのは、伝説の武器ではなく、小さな木札だった。
「あ、当たりです! 期間限定の『迷宮王キーホルダー』ですよ!」
「いらないよ! 宝箱から裏面に『魔石検印済み』とか書かれた
量産グッズが出てくるなんて。っていうか、その値札みたいな
タグは何! 一個銀貨三枚って、……ボッタクリじゃないの!?」
ツッコミすぎて喉が痛くなってきた頃、ようやく『ボスの間』に到着した。
だが、そこにあったのは重厚な扉ではなく、一本の立て札だった。
『ドラゴンバトル:ただいまの待ち時間 六十分』
「……ボスが、予約制? 行列ができてるんだけど。
あのお父さん、整理券握りしめて『パパ頑張っちゃうぞー』とか
言ってるけど! 死闘じゃないの!? 命懸けの戦いじゃないの!?」
「ハヤトさん、レオン様が言っていた通り、ここがこの国の
『現実のダンジョン』なんです。さあ、次はランチにしましょう。
名物の『魔王の角カツカレー』は絶品なんですよ!」
ミナさんに腕を引かれ、僕は虚無の表情でフードコートへ向かった。
レオンさん、これが見せたかったのか。
僕のピュアなロマンを、跡形もなく粉砕したかったのか……っ!




