番外編:夢のダンジョン(2)
ガタゴトと揺れる馬車の中で、僕は期待に胸を膨らませていた。
隣に座るミナさんは、いつもの制服ではなく、白を基調とした
軽やかな私服姿。膝の上には小さなハンドバッグを乗せている。
いや、騙されちゃいけない。レオンさんが「ベテラン」と呼ぶ人だ。
きっとあのバッグの中には、迷宮を一瞬で灰にするような恐ろしい
魔法の道具が詰め込まれているに違いない。
「ねえミナさん。やっぱりダンジョンって、奥に行くほど強力な
トラップがあるの? 毒消しを置いてきちゃって大丈夫かな」
「ふふ、大丈夫ですよハヤトさん。最近はバリアフリー化が進んで
いますから。足元も舗装されていて、とっても歩きやすいんですよ」
バリアフリー? トラップを無効化する高度な術式のことか。
さすがは歴史あるダンジョンだ。攻略環境の維持に国家予算でも
かけているんだろう。僕は勝手に期待を膨らませ、拳を握りしめた。
「あ、見えてきましたよ、ハヤトさん!」
ミナさんが窓の外を指差した。そこには切り立った岩山と、
その麓に広がる広大な敷地が見えた。
「おおおッ! あれが『古の迷宮』! いかにも出そうだね!」
僕は身を乗り出して伝説の迷宮を拝もうとした。
だが、目に飛び込んできたのは想像を絶する光景だった。
色鮮やかな旗が立ち並び、巨大な木のアーチには『祝・開園十周年!』
という能天気な文字が躍っている。入り口の横では、スライムの
被り物をしたスタッフが愛想よく子供たちに風船を配っていた。
「……ねえ、ミナさん。何これ。ここ、遊園地じゃないの?」
「えっ? 何をおっしゃるんですか。ダンジョンですよ?」
ミナさんは不思議そうに首をかしげると、馬車を降りて
清潔感あふれるチケット売り場へと向かった。
「こんにちは! 大人二枚、一日パスポートでお願いします」
ミナさんはハンドバッグから金貨を取り出し、手際よく支払った。
「レオン様から『ハヤトへの勉強代だ』とお金を預かっています。
チケット代もここから出しますから、安心してくださいね」
「レオンさんが……。でもミナさん! なんでそんな、
遊び倒す気満々なチケット買っちゃうの!?
僕は魔物がうじゃうじゃいる死の迷宮に行きたいんだけど!」
「ですから、ここがその『迷宮』ですって。さあ、行きましょう。
まずは入り口で、専属の絵師さんに『魔物討伐記念画』を
描いてもらうのが定番コースなんですよ!」
「記念画!? いや戦ってないし! まだ一歩も入ってないし!」
陽気なファンファーレが鳴り響く中、僕は無理やりゲートへと
引っ張られた




