第50話:新たな空へ?
瑞鳥の翼が、白み始めた夜空のカーテンを切り裂く。
地上はまだ深い藍色に沈んでいたが、高度を上げるにつれて、
世界の端から鮮やかな黄金色の光が溢れ出してきた。
「――レオン様ぁぁぁあああああッ!! 最高ですわぁぁぁ!!」
遥か下方、豆粒のように小さくなった王都から、
鼓膜を震わせるほどの絶叫が響いてきた。
カレンの粘着拘束が解けるのは、予想より早かったらしい。
「……。チッ。もう追いつかれそうな気がしてきたぞ」
「あはは、カレンさんなら本当に空を飛んで追いかけてきそうだね」
ハヤトが瑞鳥の背で、清々しい顔をして笑った。
奴がそっと念じると、手の中に湯気の立つメロンパンが現れる。
ハヤトはそれを半分に割ると、俺の方へと差し出してきた。
「はい、レオンさん。景気づけに、出来たてをどうぞ!」
「……。ふん。気が利くな。
ちょうど、腹が減っていたところだ」
俺はその半分を受け取り、躊躇なく口に運んだ。
相変わらず、理不尽なまでに甘くて、美味い。
この甘さが、この国を救い、俺の命を繋いだのだ。
「レオンさん。次は、どこへ行きますか?」
ハヤトが朝日を反射する雲の海を見つめながら、問いかけてくる。
俺はギルド長から貰った金貨の袋を軽く振って、不敵に笑った。
「……。そうだな。
……。どこへ行くにしても、お前のパンがあれば食い物には困らん。
……。腹いっぱい食いながら、行けるところまで行ってみるか」
「ふふ、それなら任せてよ。いくらでも焼きたてを出すからさ!」
ハヤトの明るい声に応えるように、瑞鳥が一声高く鳴いた。
朝日が二人の背中を真っ白に照らし出し、長い影を雲の上に落とす。
最凶の召喚士と、理外のパン生成者。
二人の行く先には、まだ見ぬ未知と、
そして、さらなる驚きが待ち受けている。
それでも俺たちは、この止まらない翼と共に進むだけだ。
(……。全く。お前のパンは、どこまでも俺を驚かせてくれる)
俺は心の中で満足げに呟きながら、高く、どこまでも高い空へと、
新たな旅路の第一歩を、力強く踏み出した。




